
暑い。すでに群馬県では35℃を記録するなど夏のような暑さだ。
日本古来の経費ゼロでエコな暑さ対策といえば「怖い話」だが、いまや怪談はSpotifyやPodcastなどの音声コンテンツで聴ける時代。本人もしくは近しい人が経験した「実話」を、自宅にいながら無数に視聴できる。
原稿執筆後の血走った目で怪談番組を聴きながら趣味の刺繍をするのが最近もっぱらの生きがいとなっている筆者から、おすすめ実話怪談系チャンネルをご紹介!
・「怪異伝播放送局」
「怪異伝播放送局」は実話怪談系コンテンツの王道にして、品質・継続性・安定感などの面でナンバーワンと呼ぶにふさわしいチャンネル。声優の原田友貴さんが蒐集(しゅうしゅう)した怪談を文章化し、朗読してくれる。
プロの声優である出演者の語りは、とにかく「聴きやすい」のひとこと。一定のボリューム、抑揚、速度で発せられる音声は耳に心地よい。
実話ベースではあるのだが、シナリオは何度も推敲され、練られているだろうことが伝わってくる。そのわかりやすさは、海外の日本語学習者が勉強のため視聴しているほど。
1話は数分で終わり、怖いというよりは “気軽に聴ける” コンテンツ。笑える話や、決まった登場人物が展開するラジオドラマ風の話もある。
配信話数は2023年6月現在で250話以上の大ボリューム。現在も更新を続けている。怖すぎず、かつストレスフリーで聴けるので万人におすすめ。
配信プラットフォーム|Spotify・Radiotalk・Apple Podcast・YouTubeなど
・「怪談朗読~真羅TV」
「怪談朗読~真羅(しんら)TV」は、アーティストのSINLLAさんが自身や知人の体験を文章化して朗読したチャンネル。1話10分を超える長編も多く、物語として聞き応えがある。
同氏の怪談の特徴は、その低音ボイスとゆったりした語り口、さらに方言も相まって、非常に叙情的であること。とくに九州の「お国言葉」は、地域の伝承や民話を聴いているかのような独特の雰囲気をかもし出している。
日本の田舎の寂しい雰囲気や、昭和時代の古い家屋、都市の片隅にふっと現れる闇といった、その光景が目に浮かぶようなシナリオが秀逸。1本のドラマのようで、アーティストとしての深い世界観や表現力が感じられるチャンネルだ。
テーマは心霊に限定せず、結局は人間が一番怖いという「人怖」や「UMA(未確認動物)」などもあり。ときにはちょっと笑えるユーモラスな話も。
ときどき入る解説回では、後日談や周辺事情も聴けて二度美味しい。最新話はYouTubeにて更新中。
配信プラットフォーム|Spotify・Apple Podcast・Google Podcasts・YouTubeなど
・「100円で買い取った怪談話」
「100円で買い取った怪談話」は、怪談作家の宇津呂鹿太郎(うつろ しかたろう)さんが兵庫県尼崎市の「怪談売買所」で蒐集したエピソードを編集・公開したもの。
「怪談売買所」とは体験者の怪談を1話100円で買い取る、という屋台で、怪談好きの人はもちろん、たまたま通りがかった人までさまざまな属性の老若男女が立ち寄る。100円を支払うと逆に宇津呂さんから怪談を聴くこともできる。
チャンネルの特徴はなんといっても怪談を語った人、つまり一般の語り手の音声をそのままコンテンツにしていること。
一般人なので必ずしも滑舌がよくなかったり、大げさに照れ笑いしたり、雑音が入ったり、お世辞にも「聴き取りやすい」とはいえない。もちろん台本もなく、話がまとまらず、飛んだり前後したりもする。
けれど、その不完全さが、ゾッとするようなリアリティを生んでいる。個人的には上記3チャンネルのうち一番怖い。普通の人が、普通の生活のなかで意味もわからず経験している異常事態がおぞましいというか……。
怪談は出店場所で蒐集するほか、オンラインでも募集しているが、とくに前者は地元の気安さもあってか頻繁に実際の地名や施設名が出てくる(番組内ではピー音が入る)。もっとも現実感をもって「身近にある怪異」を聴ける番組かもしれない。
もうひとつの特徴は、番組後半で宇津呂さんの考察や解説が入ること。恐怖感だけを求める人には蛇足だが、オカルトの世界ではどう解釈するのかという同氏の論説を聴ける。
プロのシナリオのような「盛り上がり」や「結末」があるわけではないのだが、なんだか背筋が薄ら寒くなる……1話1話が強く印象に残る、そんなチャンネルだ。
現在は「公開できる怪談を蒐集中」とのことで更新停止中。個人的にも再開を楽しみにしている。
配信プラットフォーム|Spotify・Apple Podcast・Google Podcastsなど
・実話怪談の魅力
なお、実話怪談のひとつの特徴でもあるのだが、ほとんどの話はオチがない。「過去にここで自殺した霊が……」といったわかりやすい因果律も、起承転結もなく、釈然としないまま終わるものも多い。
これは自身の体験に照らし合わせるとよくわかる。日常で経験するちょっとした怪異や不思議体験というのは、だいたいが他人からすれば「……んで?」と聞きたくなるような些細なもの。けれど当事者にとっては真実だ。
ストレスフリーで安心して聴ける「怪異伝播放送局」、独特の世界観に引き込まれる「怪談朗読~真羅TV」、不完全さがかえって怖い「100円で買い取った怪談話」。三者三様に魅力があるので夏の夜のおともにぜひどうぞ。
なお、没入感を高めるため、ひとり暮らしでもイヤホン推奨だ。昔から「怖い話をしていると寄ってくる」なんていうから、背後にご注意を……。
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
冨樫さや




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