『推しの子』は最高である。原作も買ってるし色んな人にすすめてきた。アニメも神作画の連続で、主題歌は今をトキメくYOASOBIだし、第1話は1時間22分ある。映画かよ。これは金かかってるぞ。製作の絶対ヒットさせるという気合が伝わってくる。

ゆえに、2023年春アニメの大本命は『推しの子』であった。今期は『推しの子』しか勝たん。と、そう思っていたのだが、春アニメ終了1カ月前の現在、そんな『推しの子』よりも新話の配信を楽しみにしている作品がある。それが『神無き世界のカミサマ活動』だ。

・ストーリー

先に言っておくと、作画は『推しの子』の方が圧倒的に良い。なので、そういう一部の隙もない演出を見たい人には『神無き世界のカミサマ活動』はオススメできない作品となる。では、なぜ私が本作を良いと思ったのかと言うと、これは物語の力という他ない。

とあるカルト教団の息子に生まれた主人公・卜部征人(うらべ ゆきと)は、教団の儀式で死亡し、異世界転生する。そこは神という概念がなく、皇帝が支配する世界。征人が転生したのは、皇都から追放された人が住む村で「カクリ」と呼ばれている。

皇都の住人に差別されているカクリの人々。事実、皇都の人々とカクリの人々では精神構造に決定的な違いがある。カクリの人々だけが欲望を持っているのだ。そんなカクリを守るために征人は宗教を興すことを思いつくのだが、教団が大きくなるにつれ、この世界の秘密が明らかになっていく……。

・時事ネタ感

『推しの子』も大概リアルに切り込んでいて、なんならそれで炎上していたりもするが、このタイミングでこのアニメもなかなかだ。だって、『神無き世界のカミサマ活動』は春アニメなのでスタートが4月なんだけど、大川隆法死去の報が出たのは3月2日だからね

「アニメの製作には2年くらいかかる」ってプロデューサーに聞いたことがあるし、そもそも人はいつ死ぬか分からないのでタイミングはたまたまだと思う。とは言え、統一教会問題もあり、宗教への注目度が上がっている中での放送開始だったので「またいつもの異世界転生かよ」とは思わなかった。

・宗教賛美ではない

というわけで、興味本位で見始めたのだが、これがかなり下世話な内容。間違っても「宗教素晴らしい」とか「神サイコー」って感じではない。私は千眼美子さんにインタビューした際に、幸福の科学がガチで作ったアニメ映画を観ているが、ああいうものとは一線を画す内容である。まあ、当たり前っちゃ当たり前だけど。

また、キツすぎるブラックジョークみたいな内容がちょっと面白い。そんな感じで、最初は目の端に引っかかる程度で流し見していたのだけど、やはり異世界転生。話の展開の壮大さが現世の比ではない。

・今期唯一泣いた

その緩急が心地よく、暇つぶしだったはずが、配信を待ち焦がれるようになった。スマホを見ながら聞いてる感じだったのが、PCモニターにかじりつくようになった。そして、ついに先日配信されたエピソード8では涙がこぼれた

まさか『推しの子』ではなく、こっちが今期最初の泣き作になろうとは。自分でも意外すぎる。作画は相変わらず人手が足りてない感じなのに……!

・完璧じゃないがゆえの鋭利さ

神作画は確かに圧倒されるし話題にもしやすい。さらに、私は大学が芸術学科で絵で入ったようなものなので、テクニカルさやセンスに「スゲエ!」ってなる気持ちも分かる。ゆえに、それらを越えてきた『神無き世界のカミサマ活動』にはアニメの面白さを感じずにはいられなかった

見る人を選ぶ本作だが、完璧じゃないがゆえの尖った良さがある。尖りと言えば『推しの子』の専売特許だと思っていたが、鋭利さで上をいく作品が同クールで出てこようとは。まだ話数的には追いつけるので、今期見るものがない人は見てみてくれ。

参考リンク:神無き世界のカミサマ活動
執筆:中澤星児
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▼TVアニメ『神無き世界のカミサマ活動』PV第2弾