当サイトでも何度も取り上げているが、ジェンダーレストイレが物議を醸している東急歌舞伎町タワー。2023年4月14日に開業してから約1ヶ月が経つ。

地上48階、地下5階建ての総フロア数53階建ての超大型複合ビルなのだが、結局、2階のジェンダーレストイレ以外に何があるのかよく分からない……。体感として、話題の95%くらいがジェンダーレストイレのことって感じがする。残りの52フロアには一体何があるのか。

新宿で働く者として、一度くらいは行っておかねばならんだろうってことで、足を運んでみた。

・ビル周辺はカオス

東急歌舞伎町タワーの場所は歌舞伎町のど真ん中。ゴジラのオブジェとで有名な新宿TOHOビルのすぐ隣である。いわゆる「トー横」エリア。

私が訪れたのは平日の18時頃。まず感じたのは「周辺のカオスさ」であった。メイド服やコスプレ姿のコンカフェ嬢が客引きをし、トー横キッズと思しき女の子をホスト風の男がなんとも言えない不思議な撮影をしている。

東急歌舞伎町タワー前には広場があるのだが、しゃがみこんで酒盛りしたり野宿したりしている人もいる。そしてそれを撮影する外国人観光客……。カオス。


・パリピタワーっぽい


歌舞伎町タワーのイメージとして、先にできた他の東急系列のビル(渋谷スクランブルスクエア、東急ブラザ銀座、東急プラザ表参道原宿など)と似たようなファッションや食の総合ビルなのかなあと思っていたがどうも違うようだ。

そもそも、ファッション系のテナントは入っておらず、全体的に観光客とエンタメやお酒を楽しむ人向けって感じのビルで、日常的に買い物に行ったりするようなビルではないようだ。


まず、歌舞伎町タワーの顔となっているのが2階の「新宿カブキHall」こと歌舞伎横丁。ここは恵比寿横丁とか、MIYASHITA PARKの渋谷横丁みたいな感じで、日本全国+韓国のご当地料理が自由に食べられるイマドキの屋台風エリアになっている。

輝くサイバーチックなネオンに溢れる人・人・人。グループ客と、外国人の観光客が半々って感じだ。

かなり盛況で、入場制限がかかっていた。

フロアの中央にはDJブースがあって、18時を過ぎたらドゥンドゥンした感じのEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)がかかっている。好みは人それぞれだろうが、私はこういう場所が苦手……というか怖い。

ちなみに、話題になっているジェンダーレストイレはこのフロアの奥にある。

当サイトでも既報のとおり、今は「女性トイレ」or「それ以外」でパーテーションで仕切られている。

トイレの中央には警備員が立っているので、ある意味、歌舞伎町で一番安全なトイレかもしれない……。


・他のフロアは?

その他のフロアで充実しているのが音楽や映画、ゲームセンターなどエンタメ系の施設。ショッピング系のエリアはほとんどない。

まず、B1F〜B4Fにあるのはライブハウス「Zepp Shinjuku」と、「ZERO TOKYO」というクラブ。今まで、お台場方面にあったZeppが新宿にできたのは便利だな〜。


3Fにあるのがゲームセンターの「namco TOKYO」。ネオン空間の中で、およそ250種類のガシャポンと、クレーンゲームが楽しめて、ゲームしながら飲める空間もある。映えるゲーセンって感じ。そして4Fは脱出ゲームができる「THE TOKYO MATRIX」。


5Fは、「美と健康」をテーマにした会員制のウェルネス施設「EXSTION(エクジション)」

ジムやスパだけじゃなく予約の取れない高級レストランが入っていたり、会員に草間彌生とかバンクシーのアートの所有権がプレゼントされたりするらしい。価値観は人それぞれだが、公式サイトに書いてることがあまりに意識高そうすぎて何言ってるかよく分からなかった……。


そして6F〜8Fが「THEATER MILANO-Za」という劇場。今はこけら落とし公演でエヴァンゲリオンの舞台をやっているらしく、歌舞伎町タワー全体でエヴァコラボをしていた。


9F・10Fが、映画館の「109シネマズプレミアム新宿」。当サイトの佐藤記者がレポートしてたけど、料金がA席が4500円、S席が6500円とめちゃくちゃ高級な映画館。先日亡くなった坂本龍一が音響を監修していて音がよく、座席が広くて快適なのだそうだ。ひょえ〜。


11F〜16Fは情報が書いてないのでいまのところ不明だけど、17Fは夜景を楽しみながらお酒を楽しめるバーやダイニングが入っているJAM17というフロアになっている。


じゃあ、それより上のフロアは何かというと……。18F〜47Fは「HOTEL GROOVE SHINJUKU」と「ベルスター東京」という2種類の高級ホテルであった。

公式サイトを見たところ、最初に出てきたのは英語のサイトだったので、主なターゲットは訪日外国人客なのかもしれない。一番高い部屋は300万円台だという報道もあった。ひええ。

実際、歌舞伎町タワーのまわりはリッチそうな外国人が歩いていた。


・スタバすら派手

ぶっちゃけていうと、私のような酒を飲まない地味な庶民にとっては居心地がいいとは言えなかった。ビル全体が派手なのだ。

あまりに居場所がないのでスタバに行ったのだが……歌舞伎町タワーのスタバは他の店舗と雰囲気が違って、地味な私にとってはスタバすら怖かった。なんなんだこのスタバらしからぬギラギラ感は……!

ちなみに、スタバの入り口にもスーツ姿の警備員がいて、店内に入ると「注文はあちらです」など声をかけられる。歌舞伎町周辺の治安をバリバリに感じさせるなあ。

スタバの2階からは歌舞伎町タワー前の広場と、TOHOビルのゴジラが見える。

座席がシームレスにつながっていて、パーソナルスペースの確保がちょっとむずかしい。ちなみに、店内にはカブキHallのDJがかけるEDMも聴こえてくる。歌舞伎町タワーはハレとケでいえば完全にハレの場所であり、ハメをはずす場所なのかもしれない。


・2020年の日本的スポット

窓から見えるゴジラと、日本食とネオンと、アニメと……。思えば歌舞伎町タワーには外国人が考える「日本的なもの」がすべて集まっている。

全体を見て感じたのは、歌舞伎町タワーは海外の富裕層や訪日客を狙った施設なのではないか、ということ。

ちなみに、海外では、ジェンダーレストイレの設置がスタンダードになっている場所もあるという。ちなみに、ビルを建てた東急不動産はLGBTの東京レインボープライドにも協賛しており、歌舞伎町タワーも多様性を重視しているので、ジェンダーレストイレの設置はその流れによるものだろう。

国も性別も文化もごちゃまぜになり、それが観光地化して消費されている。歌舞伎町タワーはガラパゴスな2020年代の日本の縮図みたいな場所なのかもしれない。


参考リンク:東急歌舞伎町タワー
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.