コロナ禍で世界中が苦しいステイホームを強いられたここ数年。自宅の窓から写した何気ない風景を投稿するサイト「VIEW FROM MY WINDOW」が話題になったことも記憶に新しい。

「窓」には人を魅了するなにかがある。ずーっと以前から気になっていた窓型スマートウィンドウ「Atmoph Window 2(アトモフウィンドウ)」という製品を、ついに、ついに試す機会を得た。


・「Atmoph Window 2」税込49,280円

窓を模した縦長ディスプレイに景色を映すことができるAtmoph Window 2。15分ループの風景映像と、画面全体から響くサウンドを楽しめる。

素晴らしいコンセプトの製品に思えるが、1台で税込49,280円~、推奨される3台セットでの使用では3倍の価格になり、おいそれと導入できるアイテムではなかった。

しかし、家電レンタルサービスRentio(レンティオ)では短期間のお試し利用ができるのだ。たとえば14泊15日のワンタイムプランなら税込7,980円。これなら払える!


・1台セッティングしてみた

サイズは27インチ(1920×1080・638mm×372mm×57mm)約4.5kgで、すごく重いというほどではないが、落としたら確実に床が凹む重量はある。

筆者のものは本体にホワイトのフレームがはまっているオーソドックスな製品だが、レンタルではなく自分で購入するなら色違いや木目調のほか、ディズニーなどとのコラボデザインも選べる。

背面には壁掛け用のくぼみがある。金具は自分で用意する。


照明などの映り込みのほとんどないノングレア仕上げなのは好印象。


本体の設定は、スマートフォンと連携するまでは物理ボタンで行う。ひととおりの設定が終われば、スマートフォンのアプリをリモコン代わりに用いることができるので便利だ。

さっそく起動すると、本体にダウンロード済み映像の再生が始まった!


小さく映る家々まではっきりと識別でき、画質はかなりいい。


室内の明かりを消すと、さらに雰囲気が出る。

素晴らしい! 自宅にいながら世界中の街角、自然、海中、誰かの部屋、果ては宇宙まで、窓からのぞくように映像美を楽しめる。


注意しなければならないのが、動画のダウンロード方法。本体にはあらかじめ3本の動画が収録されているが、それ以外の動画を見たい場合は単品購入、または月額制のリミットレスプランに加入することになる。

多彩な風景動画を気ままに切り替えるのが本来の用途だから、月会費が半永久的にかかってくる追加費用となる。

本体が1台なら月額980円のシングルプラン、本体が3台なら月額1,480円のパノラマプランに加入することで1,500本以上の動画が見放題になる。


動画は新作も追加されるようなので、一生かかっても見きれないかもしれない。カトマンズの王宮広場やキューバの街角など、なかなか行く機会のない場所の風景を見られるのも楽しい。


……が、しばらく風景を眺めるうちに、筆者はあることに気づいてしまった。


たしかに美しい。美しいが、なにかが物足りない。


27インチの額縁に風景を流しているこの状態、大型ディスプレイを購入して環境映像などを流すのとなんら変わらないのではないか?

美麗な専用動画にアクセスできるというメリットはあるものの、YouTubeにだって無料4K動画がたくさんある。なんなら自分で撮影したっていい。

テレビやモニターやディスプレイは、技術の進歩とともにどんどん大きくなり、そしてどんどん安くなっている。少し前には考えられなかったような大型テレビが一般庶民でも買えるのである。

Atmoph Windowを1台買うなら、大型ディスプレイを買ったほうがいいんじゃ……?

っていうか、Atmoph Windowが真価を発揮するのは3連で並べてからが本番なのでは……!?


・3連並べてこそのAtmoph Window 2

やってしまった。Atmoph Window×3台である!

どーんと15万円を払うのもいいが(いや全然よくないが)、Rentioには月額レンタルプランもあって、初月無料キャンペーンや2台目以降が割引になるキャンペーンもあるので、もしご興味があれば上手く活用して欲しい。

せっかくなので本当の窓のようにきれいに設置したい。壁は石膏ボードなので、電動工具で穴を開けてアンカーを打ち込もうと思う。ここまで来たんだ、やっちまえ。

ケーブルの処理には困った。かなり長い極太ケーブルとACアダプタが3つずつ。電化製品のコードを束ねたまま使うのが危険であることはご存じのとおり。

壁掛けルーターボックスを用意して、なんとか押し込めた。ネットショップで安く購入した中国製品なのだが、壁に刺すピンが使い物にならず、ハンマーのほうに穴が開いたことには半ギレした。

Wi-Fi設定やサインインなど、同じ作業を3台分繰り返す。これもかなり面倒だった。タッチパネルがない時代、カーソルを1文字ずつ動かすゲームの名前入力画面を思い出した。

1文字間違えただけで戻って打ち直しになる文字入力にイライラしながらも、3台すべてセッティング完了。半日がかりでやっとできた。


「ああもう疲れた!」と思いながら部屋の明かりを消し、パノラマ映像を再生すると……


息をのむような絶景が広がった──────


自宅が、世界と、つながった。1mを超えるパノラマ風景は、まさに「目の前に広がる」という感覚だ。過去に行ったことのある場所などは、記憶がぶわっと甦る。

3連にすると、たとえば船や自動車のように動くものが画面から画面へとちゃんと移動していく。

おすすめなのが、近景に植物などの比較的大きなもの(視線に近いもの)があり、その向こうに遠景が広がっている風景だ。奥行きや立体感が生まれ、本当に窓から見ている風景のようになる。

大迫力の巨大マンタが口を開けて迫ってくるなど、海洋恐怖症の人なら悲鳴を上げたくなるようなユニークな動画もある。

展望台からの眺めなど対象から遠過ぎると静止画のようでやや単調なので、川、滝、噴水、花火、乗り物など「動くもの」が映っている動画がおもしろい。

ああ、癒やされる……。仕事が10倍のスピードで進む気がする。実験によると、人は実物ではない「写真の花」を見るだけでストレスが軽減するそうな。


・残念なところもあるが……

残念な点もいくつかある。とくに音質には改善の余地ありだ。

現地で自然な音を収録することにこだわるAtmoph、マイクに入る「ゴーッ」「ザーッ」というような風切り音が不快に感じられることがある。ノイズ軽減のためのイコライザーは一応あるものの、十分ではない。

風景にマッチした虫の音、鳥の声、雑踏の喧噪、車の走行音など、音源がはっきりわかっている音なら臨場感が高まり大歓迎だが、鳴りっぱなしのノイズは不要だ。

また現在、Atmophでは世界各国1,500種類以上の風景を用意するのだが、パノラマ対応はおよそ1/3だ。

それでも400種以上あるので「足りない」という感覚はないが、気に入った動画が自分の視聴環境に対応していないと、がっかりはする。


さらにシステム面で、これから実装を期待したい機能もある。これだけたくさんの動画があるので、気に入った動画、あるいは時間や季節に合った動画で自由にプレイリストを作ったり、ランダムで流したりしたい。

現状でも簡易的なオート再生機能やランダム再生機能はあるのだが、ユーザー設定の自由度があまりない。

本体にダウンロード済み動画の確認・削除・並び替えといった操作もできない。つまり好きな動画だけで複数のプレイリストを作り、スケジューリングできるような機能はいまのところ実装されていない。

しかし、風景の美しさ、迫力、部屋の印象を変える力、気分を変える効果は抜群である。ため息が出るほどエモーショナルな風景もある。

もし1台か3台かで迷っているのなら、レンタルでもよいから2台目、3台目をおすすめしたい。

徐々に海外旅行にも出かけられる状況にはなりつつあるが、筆者はいましばらく映像で妄想旅行を楽しむつもりだ。


参考リンク:Atmoph公式サイトRentio
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.