街路樹の桜も咲く今日この頃。人形町を歩いていると「春」と名のつく洋食店があった。その名も『小春軒』。店の看板によるとなんと創業は明治45年らしい。明治45年と言えば西暦で言うと1912年。第一次世界大戦より前であり、実にその歴史は111年となる。
ポロッとあるもんなんだなあ。歴史ある店って。発掘にも似た想いで店頭に掲げられたメニュー看板を覗いてみたところ、ホゲェェェエエエ! なんじゃこりゃあああああ!!
・カツ丼?
「きどらず美味しく」と書かれたそのメニューは、基本的には古き佳き洋食店という感じ。「特製盛り合わせ」「小春軒特製カツ丼(しじみ汁付)」「オムレツ」など、メニュー名だけ見るとまあ普通だ。
私が驚いたのはメニュー名の横に掲載されているメニュー写真。そこには「特製盛り合わせ」と「小春軒特製カツ丼」の2枚の写真が掲載されているのだが、カツ丼の方をよく見てみると……
何ぞコレ?
卵は目玉焼きだし、そもそもとんかつの姿がない。おまけに、なんか色とりどりの野菜が散りばめられていて、私の知っているカツ丼の面影が1ミリもないのである。お前は誰だ。
・異次元
そこで入店して注文してみた。価格は税込み1300円である。店内はそこそこ盛況。この辺で働いている先輩後輩らしき人や常連らしき人の姿も見受けられる。そんな中、運ばれてきたカツ丼がこちらです。
とじるとかとじないとかそんな次元じゃねェェェエエエ!!
オリジナリティーが凄すぎてもはやどこから言及していいのかすら分からない。とりあえず、実物を見ると目玉焼きの下にちゃんととんかつが確認できたことにはホッとした。
・庶民的なウマさ
しかし、何カツ丼なのかと言うと難しいところ。ひと口サイズのとんかつは甘辛いソースに浸されているためソースかつ丼のような味なのだが、目玉焼きからトロける黄身と色味豊かな野菜により、丼全体からはソースかつ丼にあるまじき彩りを感じる。ちなみに、野菜はピーマン、人参、たまねぎ、じゃがいもだ。
いや、じゃがいもて。カツ丼にじゃがいも入ることあるんだな。そういった食感の異質さからは、ソースかつ丼どころか、カツ丼らしくなさすらある。だが、それは決して悪いわけではなく、むしろ、そのごった煮感には庶民的なウマさを感じた。何より、目玉焼きの下は……
とんかつがギッシリ。
・人形町にぴったりな味
というわけで、まさにきどらず美味しかったこのカツ丼。歴史とハイカラさが交差する人形町にぴったりな味と言えるのではないだろうか。なお、店員さんに聞いたところ人気メニューは「小春軒特製カツ丼(しじみ汁付)」と「特製盛り合わせ」とのことであった。
追えば追うほど新たな出会いがあるカツ丼。近年のとじないカツ丼ブームから、一子相伝のカツ丼まで、様々なものがあるが、1つだけ言えるのはその多様性の影には、理想を追い求めるカツ丼師がいたということ。今回もそんなカツ丼師の想いを感じることができたのであった。
・今回紹介した店舗の情報
店名 小春軒
住所 東京都中央区日本橋人形町1-7-9
営業時間 月~金11:00~13:45、17:00~19:45 / 土11:00~13:45
定休日 日、祝日
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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