新生活シーズンが到来し、改めて自炊生活や弁当生活になる人も多いだろう。おかずがない、あるいはお金がないときの強い味方「ふりかけ」!

白米さえあれば無限の世界が広がる魔法の食材だが「おかずなんて、もうこの世に必要ねぇ!」とでも言いたげな主役級の存在感を放つ商品を発見してしまった。

かけるだけで「ガーリックステーキ」や「うな重」を楽しめるプレミアムふりかけ「GOCHISOU」シリーズだ。来た、すべての料理をペーストやパウダーにして持ち歩ける近未来。もう何千円も出してレストランに行かなくてもいいじゃないか。


・シーフードカレーふりかけ(税込97円)

ラインナップは全4種。絵本のようなポップなイラストが可愛らしく、ランチタイムに弁当と一緒に広げても映えそう。

まずは「シーフードカレー」から行ってみよう! 抜群の安心感があり、トップバッターにふさわしい。

カレー味といえば、ふりかけに限らずスナック菓子やシーズニングなど多く市販されているし、パウダーになってもアイデンティティを保ち続ける強さがある。

むしろ他のすべての味を消し去り、自分色に染めてしまうパワーファイターだ。こんな風に自分がしっかりあると、どこに行っても生きやすいだろうなぁ……。

事前に味が想像しやすいし、食べて失敗する可能性も限りなく低い。だってカレーだもの。

開封すると、スパイシーな香りが広がる。ほんのり黄色いが、ほとんどベージュに近い薄茶色だ。


そして味は、想像以上にピリ辛い! 子どもには辛すぎるくらいだ。

エスニックなテイストなのに海苔が入っているのがユニーク。シーフードを名乗っているだけあって、魚介の風味が凝縮されている気もする。イカパウダー、エビパウダー、ホタテエキスパウダーなど配合。

なにより辛いから食が進む。普通に美味しい!

市販の「カレーっぽい風味」の惣菜や菓子よりもスパイスが前面に出ている本格派だった。これは残りのアイテムにも期待が高まる。


・しょうが焼きふりかけ(税込97円)

続いては家庭料理の代表格「しょうが焼き」だ。甘じょっぱいタレが、白米のおかずとしては定番の一品。作るのが面倒くさくても、ふりかけで再現できるならありがたい。


見た目は前述のカレーとほとんど同じ。薄茶色の粉末に、海苔が入っている。


ひとくち食べてみると、なんとも表現しにくい複雑な味がした。

粉末醤油やジンジャーパウダーなどさまざまな素材が配合されているのだが、まとめて「何味」とは表現できない。

ポークパウダーが入っているから豚肉の風味はあるのだろうが、筆者の鈍感舌にはなかなか感じ取れない。

いろいろな調味料がミックスされた粉末としては美味しいのだろう。しかし、しょうが焼きとしての存在感は薄い。

というか、考えてみれば「しょうが焼き味」って、どんな味か説明しにくいな。

「もっとしょうが焼きらしく!」と言っても目指す姿がわからない。ちょっと無茶な要求をしてしまった。


・ガーリックステーキふりかけ(税込97円)

気を取り直して「ガーリックステーキ」! 誕生日やクリスマスの「ごちそう」といえばステーキかチキンレッグかという子ども時代を過ごした筆者。いまだにステーキは心躍るハレの日メニューの代表格である。

と同時に現実には「硬い」「脂っぽい」「スジっぽい」などハズレに当たる確率も高く、なかなか美味しいブツに出会えないギャンブル的な料理でもある。

ふりかけだけでステーキを楽しめるなら、こんなにコスパのよいことはない。

開封すると、ツンと鼻を刺すような黒胡椒の香りが部屋一面に広がる。それを追いかけるガーリックの香り。これだけで美味しそう!


見た目にはこれまでの2アイテムとほとんど変わらず、海苔が入っているのも同じ。


ひとくち食べると、やはり黒胡椒&ガーリックがピリッと刺激的。パウダーとしては非常に美味しい。

風味豊かなブラックペッパーと、食欲をそそるニンニクの組み合わせは、もう鉄板である。牛肉エキスも入っているようなので、味覚の鋭い人ならきっとステーキの風味も感じられるだろう。

黒胡椒が強いので「白米のおかず」としては最適解ではないが、ビールのおつまみのスナックとか、これごと肉にかけるとか、さらに美味しくなる方法がありそう。

考えてみればバーベキューやソーセージなど、肉料理を再現したスナック菓子はかなり美味しい。ポテンシャルあり!


・うな重ふりかけ(税込97円)

最後に大本命「うな重」だ! 実に日本的なメニューでありながら、高級品でもあり、おいそれと庶民の口に入るものではない。

筆者なんて、最後にうな重を食べたのは何カ月……いや何年前だろうか。

タレだけでもご飯が進むのだから、白米のお供としては最強である。それがたった97円で! 他社製品ではあるが、数年前にも「うなぎふりかけ」がテレビ番組で絶賛されたとか。

それに筆者はうなぎのチクチクとした小骨がちょっと苦手なので、味だけでも楽しめるなら最高だ。魚介が苦手な人にも勧められるんじゃないだろうか。

繰り返しになるが、見た目はこれまでの3種とほとんど同じ。慣れていなければ見分けがつかないと思う。


しかし大事なのは味だ。炊きたての白米にのせ、ひとくち運ぶと……



甘いっ……!


軟弱者とか手抜きとかいう意味ではなく、味として甘い。蒲焼きの甘じょっぱいタレを再現しているのだと思うが、砂糖の甘味を強く感じ、それ以外の風味や奥行きはなかなか筆者の舌に届かない。


ふりかけとしては美味しいが、うな重かと問われれば……残念ながら、これは厳しいっ!


そもそも筆者のうなぎ経験値が低すぎるためにジャッジできないという可能性もあるが、少なくとも口に入れて「うなぎ!」とはならなかった。


つまりはこういうことだ。カレーやブラックペッパーなど、単体で調味料として成立するものは、ふりかけになってもシンプルに美味しい。ご飯に合うかどうかはともかくとして、味を表現しやすいのだと思う。

ところが、多彩な食材が調理という舞台で出会って生まれる味、とりわけ日本の料理のように「出汁」や「旨味」から生み出される風味は、非っ常~~~に再現が難しい!

おそらく「おでん」や「ラーメン」や「味噌汁」といった料理をふりかけ化することは不可能!

過去に宇宙食(と同じ製法で作られた)として市販されているたこ焼きを食べたことがあるのだが、完成品をそのままフリーズドライにしたその商品は、本当にたこ焼きの味がした。

しかしそれは「再現」ではなく「本物」をフリーズドライにしたものだから。

特定の味を別のもので再現する、という試みの難しさを示すような奥深い味覚の世界。どれだけVRやARの技術が進んでも、料理という複合体だけはデジタル化できないのかもしれない。


ただひとつ言えるのは、カレー味に間違いはない、ということだ。


執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.