先日Twitterを眺めていたら、ロイヤルホストのパンケーキがバズっていた。ついでにボロネーゼとチキンも。テレビを持っていないので詳細は不明だが、何かの番組で登場したらしい。
勢いは半端なく、「ロイホのパンケーキはウマい」という趣旨の複数の投稿が万バズしている。そんなにか……! そういや1度も食べたことが無い。これは食べるしかねぇ!!
・ロイホ
ということで最寄りのロイホへ。思えば、ロイヤルホストには1度か2度くらいしか来たことが無い。その際に食べたのもスイーツだけだ。
そもそもロイホの普通の料理を食った経験が無い。グランドメニューのページをめくるのすら初めてな気がする。けっこうページ数が多いぞ! 老若男女問わず、幅広い需要に対応できそう。
やや高めの価格設定だが、きっとその辺が「ロイヤル」なのだろう。ハンバーグとか、厚さがありそうでそそられる。
しかし今回の1番の目的は「パンケーキ」だ! お値段は税込み495円。
ついでにパンケーキほどではないが、それなりに話題になっていた「ナスと挽き肉のボロネーゼ(税込み1078円)」と
「チキンのジューシーグリル ~バター醤油ソース~(税込み858円)」も、この機に食べてみることに。
ほどなくして届いたのがこちら。ちなみに、オーダーした時に店員のお姉さんが「お前もか」的な感じで微妙に声がニヤついていた気がする。また、同じセットを頼むテーブルが私の前にも後にも見受けられた。
今日1番出ているメニューがこの3品な可能性すらワンチャンありそう。TVの影響力パネェっすわ。
・パンケーキ
さて、まずは今一番勢いのあるパンケーキから。パッと見た感じは、The 喫茶店のパンケーキというビジュアル。
しかし令和でパンケーキというと、キラキラでフワフワでゆめかわなトッピングの白くてブ厚いパンケーキ……みたいなイメージがある気がする。
ロイホのパンケーキはその手の令和スタンダードではなく、ティラミスがスイーツ界の王だった頃くらいの風を感じさせるトラディショナルなスタイルだ。
キツネ色の薄い生地が3枚重なっている。そして上にはバター。別の容器にはハチミツも。
まずはバター抜きで、純粋に生地を1枚だけ味わってみよう。最初に来るのは、ほのかな塩味。そして生地の自然な甘み。
生地は硬すぎず、さりとて柔らかくもなく、その中間という感じ。これにバターを絡め、3枚重ねで食べるとどうなるのか?
キツネ色をした部分と裏側の黄色い部分、そして中間のスポンジ。それぞれの微妙な硬さの違いが、食感にコントラストを生じさせている。1枚だけだとよくわからなかった点だ。
もしこれが3枚分に相当する厚さの1枚のパンケーキだったら、面白みを欠いていただろう。これは薄いのが3枚であることが重要なのではないか。
そして、このスポンジ内部の気泡のサイズと分散にも注目したい。特に大きめの気泡についてだ。
この気泡がどこか1か所だけだと食感にムラが生じて微妙になる。私がパンケーキを作ると100%そうなるので間違いない。しかしロイホのパンケーキは生地全体に均等に分散している。
それなりに硬さと弾力を有した薄い生地と、その内部で均等に分散した大きめの気泡。これにより、食べた時に口の中で生地が潰れると、ジュワっという食感が発生する。これは面白いぞ!!
また、硬めに焼かれていることもあって生地の表面からはバターが沁みにくいが、この気泡部分には上手く絡まる。ハチミツも同様だ。
一見するとシンプルで、誰でも家で作れそうに思える。しかし、この薄さのパンケーキを硬すぎず柔らかくなりすぎず、そして程よいサイズの気泡を全体に均等に分散させつつも、しかし表面にそれは出さず……というバランスは、そう簡単ではないと思う。
令和の流行である、雲みたいにフワフワゆめかわでケーキのごとく甘い、映えるトッピングを備えたパンケーキとはまったく別種。その手の令和スタイルを正義だと設定した場合、おそらくロイホ版は低評価となる。
しかしそれは、楽器で言えばエレキギターとクラシックギターのどちらが優れているかを競うようなもの。ロイホ版は背後に巧妙な計算と高い技術を感じさせるトラディショナルなパンケーキの完成形の1つに思える。
Twitterで「ウマい」とバズるのも納得だ。今が1990年代だったら似たようなものをその辺の喫茶店でも食べられたと思うが、2022年では逆に少数派になりつつありそう。大切にすべきメニューだろう。
・チキン
続いてはチキン!
半熟の目玉焼きが乗っていてチキンが見えないので、ちょっと横に移動してもらおう。ビジュアル的にはよくあるグリルチキンだ。
税込み858円にしてはサイズと厚さが少し寂しい気がしなくもないが、味次第でひっくり返る可能性が十分ある。
食べてみると、皮は所々パリッと。バター醤油ソースの風味もウマい。これを嫌いな人はいないと思う。半熟の目玉焼きを絡めて食べてみよう。
個人的には、玉子と合わせるにはちょっとソースの味付けが薄い気がしなくもない。完全に私の好みの問題だが、もっと強気でブラックペッパーを利かせていたりしたら嬉しかったかもしれない。
しかしここはロイヤルホスト。老若男女を幅広く受け入れるファミレスなので、私のように濃いものが大好きなメタボおじさんばかりが客の全てではないだろう。
無難なラインに設定した味の濃さなのかなという気がする。クオリティ自体は、その辺の洋食屋にありそうな普通のチキンって感じ。
もしこれが店舗の主力ならちょっとパンチ力が弱く感じられるが、数あるメニューの中の1つであることを考えれば妥当だと思う。
・ボロネーゼ
最後はボロネーゼだ!
食べてみると、モチモチでクニクニっとした麺の茹で具合。ほう、これがロイホのパスタのスタイルか。
表面にちょっとかかっているだけで影響力は弱そうに思えたチーズの風味が、想像以上にどこを食っても感じられる。
また、ナポリタンに通じる甘味とオイリー感があるのも特徴的だ。もしかしたら、ベースとして使用しているトマトソースが、ガチに同じものなのかもしれない。
1つ重箱の隅を突くようなことを言うなら、ナスが微妙な気がする。ソースの油を吸ってしまっているのが原因ではなかろうか。
それ以外は良い感じに仕上がっており、濃いチーズの風味と甘くコッテリでオイリーなソースは特に子供にウケそう。
ちなみにこれは、ガチなイタリア料理のボロネーゼではなく日本の洋食としてのボロネーゼな気がする。
もしイタリア的なボロネーゼを期待してこれをオーダーする人がいたら、“思っていたのと違う” となる可能性はありそうだ。
でも日本で出てくるボロネーゼはほとんどがこんな感じだし、ガチなボロネーゼを出したらむしろ違うってなる人が出そうだし、これでいいと思う。
ちなみに、イタリアのDNAを最も感じさせるボロネーゼっぽいものを手軽に食べられるお店はサイゼだ! 私は「ミートソース ボロニア風(税込み400円)」の完成度が高いと感じている。
かつてミラノからメストレ辺りの安宿を拠点にイタリア国内をうろついていたのだが、当時よくわからない安いローカル店で食っていたヤツに似ている気がするのだ。
控えめなオイリー感に、キレのいい塩味。しっかり感じられる牛肉には、煮込まれた野菜の出汁が沁みこんでいる。そして口に入れずともわかるワイン由来の香り。
素晴らしい塩梅に歯ごたえを残した茹で具合の麵がしっかりソースと絡み合い、口の中で気持ちよくパラっと分離する。パスタの種類がタリアテッレになれば、たぶんイタリア人からも一切の文句は出ない。
ということで、ガチイタリア度と値段の両面で比較すると、同業他社のサイゼが強いのではないか……と個人的には思う。
しかしナポリタンが我々日本人にとってかけがえのない料理であるように、この洋食屋のボロネーゼもまた、本家とは別の、日本で独自に発展してきたものとして扱うのがフェアではなかろうか。
その視点から評価するなら、ロイホの甘いソースがモチモチの麺に絡み合い、濃厚なチーズの味が嬉しいボロネーゼは、しっかりウマいと思う。特に子供ウケは絶対良いはずで、ファミリー層に強そう。
ということで、にわかに話題になっていたロイホのパンケーキ、チキン、そしてボロネーゼ。初めて食べてみたが、どれも日本のファミレスという業態の商品として、よく考えられていると感じた。美味しいじゃんって。
参考リンク:ロイヤルホスト
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.
▼確証は無いが、イタリアのボロネーゼと日本のボロネーゼは料理の手順から違う気がする。私がイタリアで食っていたよくわからない店では、ボロネーゼを作る際に別に単体で売られている謎のシチューを使っていたように記憶している。
フライパンで挽き肉やトマトピューレを炒めるのは同じなのだが、その謎シチューの汁をフライパンにブチ込むのだ。他はネットで出てくる日本のボロネーゼの作り方と似たようなものなので、たぶんそのシチューが鍵。