居酒屋が『ちょい飲みセット』を販売することは珍しくも何ともないが、実際に頼んで “ちょい” でフィニッシュ出来ることは極めてレア。人によっては、「奇跡」と言っていいくらいの確率であろう。
では、一体なぜ人はちょい飲みセットを “ちょい” で終わらせることが出来ないのか?
原因は一概に言えないとはいえ、失敗のポイントさえ把握しておけば『ちょい飲みセット』に飲まれることは無いはず。
おっと!
──あまりにも混乱していたので、ついつい以前の記事「安楽亭のちょい飲みセット」の書き出しを丸っとコピペしてしまった。申し訳ない……。
と、ひとまず謝ってはみたものの、正直なところ私の心はモヤついている。なぜこんなことになったんだという気持ちでいっぱいだ。というのも……
和食ファミレス「藍屋」の『ちょい呑みセット(約1000円)』を楽しむために会社を早退したら、会計が5倍になってしまったからである。
想定外の支出に呆然としているのだが、どれだけ考えても「こんなん罠だろ」としか思えない。以下を読めばあなたも納得してくれるのではないか。
・藍屋の『ちょい呑みセット』
今回私が訪れた「藍屋」は “すかいらーくグループ” の1つであり、ざっくり言うならばちょい高めの和食ファミレスといったところだろうか。
メニューは豊富で、寿司・天ぷら・うなぎ・そば・しゃぶしゃぶ……などなど。そして、その中には『ちょい呑みセット』だってある。基本的に『ちょい呑みセット』を販売しているのはリーズナブルな店が多く、お高めの店では結構レア。
ってことは、もしかしたら藍屋の『ちょい呑みセット』はあらゆる “ちょい飲み” の中で最高峰なのかもしれない……と考えているうちに、私は気づいたらタイムカードを切っていた。
最高の “ちょい飲み” を想像してしまったら最後、その時点で仕事を切り上げて店に向かってしまうのも無理はないとご理解いただけるかと思う。
・最高の瞬間
実際に店舗に入ってメニューを確認すると……あった、あった、『ちょい呑みセット』。
見れば、アルコール1杯に小鉢3種と天ぷらがついてお値段1089円。天ぷら無しなら759円だ。アルコールは生ビール以外にレモンサワー、ウーロンハイ、熱燗なども選択可能とのこと。
それにしても、藍屋はメニューが幅広いなぁ。思わず目移りしてしまうが、今回は『ちょい呑みセット』一択。なにせ、そのために会社を早退したのだから。私は「天ぷらアリのちょい呑みセット、生ビールで」と店員さんに告げる。
その数分後、運ばれてきた『ちょい呑みセット』は……
神々しすぎるだろ!
と思ったが、そう感じたのは藍屋の高級な雰囲気に飲まれたからであって、あとで写真を見たらごく普通の『ちょい呑みセット』であった。
さて、天ぷらがテーブルに到着するやいなや速攻で箸を伸ばし、それをビールで流し込む。美味い。最高だ。この瞬間のために生きている……と歓喜する一方で、私の心には以下のような感情も芽生えていた。
ぶっちゃけ……
これだけ食って帰ったら……
藍屋に来た意味なくね?
なぜそう感じたのか説明しよう。そもそも、藍屋は「天下一品」のこってりラーメンや「餃子の王将」の餃子のように、お店の顔となるメニューがあるわけではない(と思う)。
そのかわり、和食系の料理は色々と展開している。つまるところ、藍屋はメニューの豊富さがウリなのだ(あくまで私の中で)。
にもかかわらず、「ちょい呑みセット」だけでフィニッシュしてしまったら……お店の一番のウリを堪能することなく帰ることになってしまう。果たして、そのような楽しみ方は正しいのだろうか?
心がグラついた私は、「アジフライ(418円)」を追加した。
これも美味い……が! アジフライは藍屋の看板メニューではないだろう。私が求めているのは藍屋らしさであり、藍屋に来た意味であり、それらが感じられるメニュー。
一体どこにあるというのか。
どこだ。
どこだ。
どこだぁあああああああああ!
…………
…………
…………
…………
…………
…………
…………
…………
みっけ♡
──こうして、私はあろうことか『黒毛和牛すき鍋前の肉160g(3289円)』を追加。1度壊れたブレーキが元に戻ることはなく、シメにデザートまで追加して、最終的なお会計は5148円になってしまったのである。
・疑問がすべてを壊す
まとめると、藍屋の「ちょい呑みセット」は同店の中でコスパ優秀なセットではあるが、同店の良さをどれほど反映しているのかと言われたら疑問でしかない。そしてその疑問が、当初の予定を盛大にぶち壊すダイナマイトになってしまうのだ。
ここで大事なのは、自分の内なる感情に注意を払うこと。「ちょい呑みセットだけで帰ったら、藍屋に来た意味あんの?」とか「てんやで天ぷらテイクアウトしてコンビニで小鉢的なものとビール買えば良くね?」などと思い始めたら、心のガードを上げろというサインである。
読者のみなさまも、藍屋で『ちょい呑みセット』を楽しむ際はくれぐれも注意していただきたい。
参考リンク:藍屋「ちょい呑みセット」
執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.
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