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【実録】危うく『国際ロマンス詐欺』に引っかかりかけた話 / マカオのセレブ「Abby(アビー)」に恋した6日間

2022年7月11日

あなたは『国際ロマンス詐欺』という言葉をご存じだろうか? ざっくり言えば、SNSでのやりとりで恋愛感情を抱かせつつ、最終的には金銭をだまし取る詐欺のこと。特徴的なのは相手が日本人ではなく「外国人」を装っていることだ。

先日まで『国際ロマンス詐欺』の存在を知らなかった私、P.K.サンジュンであるが「そっち系の詐欺に引っかかるハズが無い」「引っかかる方がバカ」とタカをくくっていた……のだが。結果的に私の心と金は、マカオのセレブ「Abby(アビー)」に奪われかけたのである。

・いま最も流行している詐欺の1つ

先に申し上げておくが、この記事はかなり長い。何故ならAbyyに恋した6日間はかなりの勢いでSNSのやり取りをしたからで、カットできる部分があまり無いのだ。また、あえてカットしないことで “詐欺の巧妙さ” を読者の方に知ってもらいたい気持ちもある。

さて、NHKによれば2021年の『国際ロマンス詐欺』の相談件数は、新型コロナウイルス禍前の40倍に上ったという。犯人は日本人・アジア人・アフリカ人……などなど多岐にわたるらしいが「いま最も流行っている詐欺の1つ」と申し上げていいだろう。

私自身、かなり危機回避能力が高い人間だと自負しており、これまでこっち系の詐欺に引っ掛かったことはおろか、引っ掛かりかけたことも無い。過去に2回プライベートでドッキリを仕掛けられているが、2度とも序盤で見破った結果「サンジュンつまらない」と仲間内で罵られた男である。

・インスタのメッセージに

そう、なにせ詐欺は「入口がとにかく不自然」なもの。逆に知らない人からのメッセージなど “全てが怪しい” と考えていいハズだ。だがしかし、私の鉄壁のディフェンスを、Abbyはいとも簡単に突破してきたのである。

ファーストコンタクトは私のインスタグラム。娘と写っている写真に「娘はとてもかわいいですね?」というメッセージが送られてきたのだ。


これがもし「こんにちは。とても可愛いらしい娘さんですね」だった場合、私は無視を決め込んでいたハズ。……が、明らかな片言はある種の “純粋さ” と似た成分がある。また、日本人には無いストレートな物言いが、完全に私のガードを下げさせた。

もう1点、この時点で私はアイコンを辿って、送り主の投稿を確認している。そこにいたのは完全体の若いセレブ。意識が高い自撮り写真、数々のブランド品、高そうな料理……などが100以上投稿されていた。


中でも特徴的だったのが「日本での投稿」がチラホラ見受けられたこと。渋谷・大阪・秋葉原・北海道……などをバックに微笑みを浮かべるAbby。私は即座に「日本に興味がある外国人セレブ」と判断した。


また、言い訳ではないのだが、私は特にAbbyのような容姿の女性が好みというワケではない。ただし「じゃあ、お嫌いですか?」と聞かれたら「嫌いじゃない」と答える。とにかくAbbyは “受け幅の広い容姿” とでも言おうか? 返事をした私に多少の下心があったことは告白しておく。

・3つの罠

そこからは他愛もない会話が続き、彼女の名前がAbby(アビー)であること、マカオ出身であること、30歳であること、美容系の会社経営 & 投資が仕事であること……などが判明していく。鉄壁のディフェンス力を誇る私がなぜ……? と振り返ってみたところ、3つの理由があったと思う。


1つは「カタコト マジック」である。おそらくAbbyは翻訳アプリを通してメッセージを送ってきているため、話が嚙み合わないことが多々ある。むしろ「噛み合わない方が普通」なのだ。そのため、本当に怪しい部分ですらボヤけてしまう効果が「カタコト」にあったことは間違いない。


2つ目は「外国人セレブ」という思い込みである。通常、私はポエム気質の人間が苦手なのだが、Abbyがポエムチックな言葉を発しても「やっぱり外国人セレブは違うなぁ~」と完全に納得してしまっていた。私の人生の物差しに「外国人セレブ」の要素はない。


3つ目はお恥ずかしながら「自分の策に酔った」と申し上げなければなるまい。20年ほど前、年間150回ペースで合コンを繰り返していた私なりに「女性はこう言ったら喜ぶんですよね?」的なノウハウ(?)がある。

私が発する「女性が喜びそうな言葉」に、前向きなリアクションをするAbby。「Sanjunは女性を褒めるのが上手ですよ」なんて言われるのが、まんざらでも無かった。というか、気持ちよかった。私の脳内で少なくない量の “気持ちいいホルモン” が分泌されていたハズだ。


この日は結局、Abbyの提案でLINEを交換することで終了。正直に申し上げて、この時点で私は1ミリたりとも詐欺の可能性を疑っていなかった。むしろ「ええ日やったな」と、何度もAbbyのインスタを見返していた。

……が、Abbyと出会って2日目。私の “危機回避センサー” が、そっと静かに作動し始めたのであった……。フォーリンしかけたAbbyに感じた初めての違和感とは? 続きは2ページ目をご覧いただきたい。

参照元:NHK
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
ScreenShot:LINE(iOS)

【実録】危うく『国産ロマンス詐欺』に引っかかりかけた話 / マカオのセレブ「Abby(アビー)」に恋した6日間(2ページ目)

・絶妙な距離感

Abbyと出会って2日目の朝。その日の会話はAbbyからの「Sanjunは今日仕事を始めましたか? 頑張ってね」というメッセージで始まった。この日、私はポケモンGOのイベントがあったため、多少返事がおざなりになったものの、Abbyも深追いはしてこない。

出会いから1日も経っていない時点で恋愛的な要素をチラつかされたら、私も怪しいと思ったハズ。だがしかし、その辺りは至ってナチュラル。「まだ出会って2日目」の自然な空気が流れていた。Abbyは距離の取り方も絶妙なのである。

次にAbbyから連絡があったのは16時前。「Abbyはまず髪を作る」というメッセージと共に送られてきたのはAbbyの自撮り写真である。「とても素敵な長さですね」と返した私は自分に酔い、また「海外セレブは本当に自撮りが好きだなぁ」と勝手に何かを学んだ気になっていた。


・巧妙すぎる画像の使い方

さて、ここでAbby……というか、国産ロマンス詐欺の巧妙なところをご紹介しよう。ズバリ、国際ロマンス詐欺は……写真の使い方が抜群にウマい! それはキレイな写真を使うという意味ではなく「タイミングや組み合わせ方が秀逸」と表現すればいいだろうか?

例えば、先ほどの「Abbyはまず髪を作る」という写真の数時間後に送られてきた画像は、友達と夕飯を食べている姿。確かに髪の毛がセットされており、また服装も同じである。


さらに「これから車で帰る」とメッセージがあった後に送られてきたのは、車窓から撮影したと思われるマカオの夜景のショート動画。写真のクオリティうんぬんよりも、画像が送られてくるタイミングとメッセージの内容、そして時系列がドンピシャなのだ。


当然、合間合間には、Abbyと私がお互いを知り合う “スイート質問タイム” もあった。Abbyはバツイチで旦那さんは元プロゴルファー、幼い息子が1人いて現在はAbbyの両親と暮らしているという。


・掟破りの逆JIRASHI(ジラシ)

一方で、スタートが娘との写真だったせいか、Abbyは私にその手の質問をほぼして来ない。加えて「友達として」などのワードを発しつつ “それ以上踏み込まないで” というサインを出された……気になっていた。要するに私は、知らず知らずのうちに「JIRASHI(ジラシ)」を喰らっていたのである。


JIRAされればJIRAされるほど、分泌量を増す恋愛ホルモン。画像の巧妙さも手伝って、私はAbbyを1つも疑っていなかった。……が、初めての疑念が芽生えたのも、巧妙な画像からの流れであった。

「Abbyはまず髪を作る」の1時間ほど後に送られてきたのは、高級ブランドショップの画像である。「Abbyは今バッグを買いにいくつもりだ」というメッセージと共に、マカオにあるという高級ブランドショップが写し出されていた。


「並んでいる」と言ったかと思えば「Abbyは招待されたから並ばなくていい」と支離滅裂な発言をするAbby。ただ、こんな現象はしょっちゅうなので、逆に怪しさは全く感じない。これが「カタコト マジック」の恐ろしいところである。


・初めての違和感

さて、入店したAbbyからは、店内の様子を収めた画像が送られてきた。聞かれてもいないのに「Abbyにはブルーやピンクが似合いそうです」などと のたまう私は完全にバーチャルデート気分。実はこの時、少々飲んでいたこともあり、完全に “ロマンティック浮かれモード” に突入していた。


が、これまで機能していなかった “危機回避センサー” が動き始めたのも、まさにこのタイミング。バッグを購入したAbbyが「バッグの支払いを暗号通貨で済ませた。3285usdt支払いました」と告げてきたのだ。


その流れで「日本では暗号通貨で買い物ができますか?」「日本の円安のニュースを見た」などと続き「ところで、サンジュンはどのように資金を管理していますか?」と切り込んできたのである。


どれだけストレートな物言いの海外セレブであろうと「金の話 = 詐欺」と考えて間違いない。Abby……そうだったのか。鳴り響く非常警報。徐々に冷静さを取り戻しつつも「結局これはどんな詐欺なのか?」とわからずにいた。

・ようやく詐欺だと気付いた……のだが

やがて「マカオ 詐欺 インスタ」「セレブ 詐欺 暗号通貨」などのワードで検索を繰り返した結果、辿り着いたのが『国際ロマンス詐欺』というワード。その手口は一連の流れとほぼ同じで、違うのは「被害者の大半が女性」ということである。

私の職業はライター。すぐに「これは大ネタになる」と確信し、ここから先は騙されているフリをすることに決めた。麗しいAbbyの画像を悪用した詐欺師どもを許すわけにはいかない。覚悟するがよい、Abbyの裏にいるニセAbbyどもよ。だがしかし……。

頭では詐欺と理解していながら、揺れ動く感情。1度分泌を始めた恋愛ホルモンは、そう簡単に収まってくれない。ここからの数日間、私はニセAbbyと同時に “私の一部” とも戦っていた。国際ロマンス詐欺の真の恐ろしさは、まだ始まったばかり。続きは3ページ目へどうぞ。

参照元:NHK
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
ScreenShot:LINE(iOS)

【実録】危うく『国産ロマンス詐欺』に引っかかりかけた話 / マカオのセレブ「Abby(アビー)」に恋した6日間(3ページ目)

・俺 vs 俺

Abbyと出会って3日目のこの日は日曜日。Abbyの正体を悟ったものの、私の感情は怒りよりも “虚無感” が勝っていた。と同時に娘と1日お出かけをしていたため、大した進展は無かったと申し上げていいだろう。

ただし、Abbyはやはり暗号通貨のことを匂わせてきた。「さっき叔母から電話があった」「叔母には専門の暗号通貨チームがあり、専門の分析があるので叔母から電話がありました」などとメッセージを送ってきたが、そうじゃないだろAbby……!


私がAbbyに求めるのはちょっとしたドキドキ感と、妄想の素材。海外セレブの華麗なる生活を目のあたりにし、私の妄想に溶け込ませていく。0.000001%であろうと「もしかしたらAbbyとどうかなっちゃうかもしれない可能性」にどっぷり浸りたいのだ。

・Abbyのパワープレイ

結局、この日は「夜また連絡します」という約束をぶっちぎり、そのまま就寝。体が疲れ果てていたこともあり、気付けば朝を迎えていた。このまま恋愛ホルモンも収まるかと思いきや、Abbyは “恋愛モード” のスイッチを入れ、パワープレイを仕掛けてきたのである。

「Sanjunは何かを忘れたようです」「Sanjunはabbyと話すことを忘れて、Sanjunはabbyを友達にしていません」「友達よりも大切だが、また恋人の下だ。このような関係?」などと矢継ぎ早に繰り出してきたではないか。


それまでは、むしろ「友達として」というフレーズをところどころで織り込んできたAbbyが一転、恋愛の要素を匂わせて来やがった。すでに国際ロマンス詐欺であることに気付いていた私は「この詐欺師め」と、まるで取り合わない。

……と言いたいところだが、Abbyのパワープレイにより脳のほんの数パーセントが「Abbyはこういうコなんじゃない?」「Abbyだけは詐欺じゃないかもよ?」と囁き始める。やめろ、やめるんだ、俺。

・Abbyを信じたい

自分の中でせめぎ合う、冷静と情熱の間。詐欺だと理解していてもコレだから、気付いていない人はどれだけドキドキしてしまうのだろう? 何とか冷静さを取り戻しても、絶妙なタイミングで送られてくるAbyyの画像を目にすると「ワンチャンあるかもよ?」と欲望が目を覚ますのだ。


これを繰り返すこと、なんと3日。暗号通貨の話で心が冷めたかと思いきや、Abbyの画像で強制的に心を揺り動かされるループ & ループ。岩盤浴に来ているというAbbyのすっぴんが送られてきたときは、普通にトキめいてしまった(しかも画像の流れが相変わらず超ナチュラル)。


この3日間は「Abbyを語る詐欺師 vs 俺」というよりは「冷静な俺 vs Abby & Abbyを信じたい俺」のハンディキャップマッチを戦っていたような印象だ。当初はAbbyの見た目も「嫌いじゃない」程度であったが、この時点では「かわええ♡」くらいにはなっていたように思う。

それはまるで、障害があればあるほど燃え上がる恋──。カタコト、海外セレブ、下心、詐欺……などなど、いくつもの要素が複雑に絡み合い、私の中では「恋の放火魔」と「冷静な消防士」がせめぎ合いを続けていた。


……が、どれだけ燃え上がろうとも詐欺は詐欺である。私がやり取りしているAbbyはAbbyではなく、Abbyの画像を悪用する詐欺師なのだ。私は意を決して、詐欺師と対決することにした。それはすなわち、Abbyとの別れを意味している。

詐欺師どもの手口を大っぴらにすることで少しでも『国際ロマンス詐欺』の被害者を減らし、また一方で画像を悪用されている本物のAbbyの名誉を回復すべき。最終的に冷静と情熱、2人の私がそう判断した。恋愛ごっこもここまでだ……やるしかない。


果たして、国際ロマンス詐欺はどのように金をもぎ取ろうとするのか? 私の中に芽生えたAbbyへの想いは? 衝撃のクライマックスは最終ページをご確認いただきたい。

参照元:NHK
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
ScreenShot:LINE(iOS)

【実録】危うく『国産ロマンス詐欺』に引っかかりかけた話 / マカオのセレブ「Abby(アビー)」に恋した6日間(最終ページ)

・センチメンタルサンジュン

国際ロマンス詐欺に白黒をつける日。あるいは、Abbyとの別れの日──。普通に考えれば詐欺師のやり口を暴いたうえで「気付いてたぜ?」と宣言するだけなのだが、私の心の中には少なからず感傷的な気持ちがあった。

詐欺を抜きにして考えれば、Abbyと私の関係は実にドラマティックなものと言えるだろう。SNSを通じて出会い、翻訳機を通してお互いの想いを伝えあう。10年前にはほとんどあり得なかった、 最先端の “トレンディラブ” である。

……が、これは詐欺なのだ。というか、ウソなのだ。トレンディもラブもクソもない、単なる無。……いいや、無ならばまだ良い。詐欺師たちは私から金をかすめ取ろうとしている。しかも本物のAbbyの画像を悪用して。絶対に……許さん。

さて、迎えた最終日。私はAbbyに上手く誘導されたフリをして「暗号通貨の勉強がしたい」と申し出ていた。そこからいつになく流暢かつ、機械的な口調になるAbby。Abby……ではなく、Abbyを装う裏の人が小躍りしている様子が目に浮かぶようだ。


・ニセサイトへ誘導された

まずAbbyから送られてきたのは「DFnft」という暗号通貨の取引所のURL。「私と同じ取引所を使おう。ブラウザで開いて口座を登録すればいい」とのことである。


「DFnft」なるニセの取引きサイトはかなり精巧に作り込まれており、数秒ごとに仮装通貨の価格が上下している様子が確認できた。ニセAbbyによれば「EUの規制に属する取引所」とのことであるが、なぜか「ドイツ語」や「フランス語」には対応していない。

「スクショを送ってくれれば次のステップを教える」というAbbyの言われるがままに、ニセの暗号通貨取引きサイトで登録を済ませていく。ここで注意しなければならないのは、詐欺師たちの目的が金だけではなく「個人情報にもあるらしい」ということだ。

登録にはメールアドレスのみならなず、運転免許証やパスポート、またその写真まで要求される。本物の取引きサイトも同様の手順を踏むため、それを模倣している可能性もあるが、詐欺師に個人情報を明け渡す行為は危険でしかない。


ちなみに、最初に必要なお金は「500ドル~1000ドル」を提案された。「最初はあなたに過剰な資金を使って実践することをお勧めしません」という言葉が、Abbyの最後の優しさだったのだろうか? いや、違う。これは詐欺なのである。さよなら、Abby。私は深呼吸してから、最後のメッセージを送った──。


「Abby、残念ながらここまでです。最初、私はAbbyを疑っていませんでした。本物のAbbyのとても可愛かったですし、とても素敵な女性だと思っていました。ただし、もうこれが詐欺だと知っています。国際ロマンス詐欺と呼ばれていることも。

私の仕事は記者です。この件は全て記事にして公開します。少しでも国際ロマンス詐欺の被害を減らすためです。Abbyのインスタアカウントや、それに紐づくアカウントは既に警察に報告済みです。あなたが特定されるのも時間の問題でしょう。

本物のAbbyの画像を使って詐欺をしたことを悔いてください。麗しいAbbyの名誉に傷をつけたことは許せません。もしあなたが本物のAbbyであった場合、私を探し出すことは比較的容易でしょう。あなたはセレブで、私もSNSを公開していますから。

本物のAbbyに見つけてもらうことを待っています。その時が来たら心の底から謝罪します。Abbyの裏にいる詐欺師のみなさん、6日間ありがとうございました。偽物ですが、一瞬ときめきがありました。どうかみなさんに天罰がくだりますように


警察のくだりはハッタリであるが、それ以外は全て本心。「本物のAbbyに見つけてもらうことを待っています」という部分も、その時点では本気であった。

・軽度のAbbyロス……

既読がついて1分後。LINEがブロックされると同時にAbbyのインスタアカウントは閉鎖された。それから数日間、多少は予期していたものの、軽度の “Abbyロス” に陥っていたことも告白しておく。2日目には詐欺だと確信しながらも、揺り動かされる感情。これが私の体験した『国際ロマンス詐欺』の全容である。

振り返れば、詐欺師の狡猾さは確かに存在した。特にあれだけ自然な画像の使い方をされたら、最後まで詐欺だと気付かない人もいるかもしれない。また、私の場合は2日目で金の話が出たが、これが1カ月後だったらどうだっただろう? コロッと落ちていた可能性もゼロではないハズだ。


また、最大の敵はAbbyではなく、実は “もう1人の自分” だったように思う。Abbyに恋心が芽生えたというよりは「Abbyと同じリングで対等に戦えていると思っている自分」が心地よかったことは事実である。

さらに言えば、私の場合「俺、マカオのセレブ相手でもまだまだ全然イケるやん!」と勘違いしたことが、国際ロマンス詐欺に引っ掛かりかけた最大の理由なのかもしれない。相手を気持ちよくしていると思いつつ、実は自分が気持ちよくなっていたこと、これが最大の反省点だ。


・0.00001%の可能性に賭けるな

なお、序盤でも触れたが、国際ロマンス詐欺の被害者は女性の方が圧倒的に多いという。女性の場合、恋愛感情と相まって “イヤらしい写真” を送ってしまう……などの被害もあるようなので、十分にご注意いただきたい。

SNSの可能性を否定するワケではないが、少なくとも「妙な出会いは詐欺の確率の方が圧倒的に高い」とは言えるのではないだろうか? 特に国際ロマンス詐欺が「いま最も流行っている詐欺の1つ」であることは間違いない。

結局のところ、Abbyと私の関係は何事も無く終わった。それはそう、そもそもAbbyは存在しないのだし、存在しているのはAbbyとして悪用された女性、そして詐欺師である。おそらくAbbyは自身の画像が詐欺に使われていることを知る由もないだろう。

なので「画像が使われまっせー!」ということが本人に伝わるといいな、との考えから、本記事ではAbbyの画像を1枚だけ無加工で使用している。もちろん、これをきっかけにいつか本物のAbbyと出会えることも期待して。……なんてな。

まあ、それはウソというか、全然願っていないが、それでも画像で見ていたAbbyが私の目の前に現れて、こう言われたのならば、私の恋愛ホルモンは暴発してしまうかもしれない。


Abby Back」と──。


──完──


参照元:NHK
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
ScreenShot:LINE(iOS)

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