子どものおもちゃ、という本来の目的を越えて、いまやコレクターズアイテムになっている食玩やカプセルトイ。

小銭で買える、開けるまで中身がわからない、アイディア次第でなんでも入れられる……人気が出るのも納得の仕掛けだが、よく似た商品として筆者が大注目しているものがある。バスボールだ!

いまは子ども向けのキャラクターフィギュアが多いけれど、大人がこぞってバスボールを収集する時代がいつかくるぞ! それを象徴するかのように、本物そっくりの食品ミニチュアが入った「写実食品」というシリーズを発見。


・「写実食品 おにぎりバスボール」(全5種 / 税込418円)

「写実食品」とは「身近な食品をバスボールにしてしまう」シリーズだそうで、今回の「おにぎり」が第1弾。

よくあるキャラクターのバスボムとは雰囲気の違う、マットな質感のちょっと上品なパッケージ。ここからも大人向けであることがわかる。

開封すると「おにぎり」が出てくる! 米1粒1粒を丁寧に作り込んである。手に持ったときのサイズ感も、おにぎりそのまんま。

中に入っているのは5種類の人気具材。溶けるまで中身がわからないブラインド商品だ。お米は日本の食卓を支えてきた食材であることや、日本人のソウルフードであることから、おにぎりをテーマにしたそう。

ビニールをペリペリとはがして溶かしてみる! 海苔の部分は包装なので、実際には塩むすびのような外観になる。

シュワシュワッと勢いよく泡を噴き出して溶けていくバスボール。「せっけんの香り」だそうで、奇をてらわない爽やかで落ち着いた香り。浴室がフレッシュな空気で満たされる。

出てきた! 丸くて赤かったから「梅干しだ!」と思ったけれど、実際にはミニチュアがそのまま入っているのではなく、小さな球状のカプセルが出てくる。

ミニミニカプセルを開封すると……


これはなんだろう? 赤くて凸凹して……


あ、めんたいこか!


続いて開封したものも、めんたいこ。


最後に開けたものは、いくらだった。


この手に残った戦利品は2つの めんたいこ と、いくら……。


うん…………


決して造形は悪くない。よくできている。いくらなんて、半透明で胚の部分が透けて見えるところもリアル。それなのに、なんだこの物足りなさ、「ほら見ておにぎりだよ!」といえない感じは……。


致命的な事実に気づいてしまった。


おにぎり本体はバスボール。つまり跡形もなく消えてなくなる。本体なきいま、このめんたいこは「リアルなおにぎりの具材」というアイデンティティを失っている。

お前は自分が「おにぎりの具」であることをどうやって証明するんだ? ポツンとひとつだけあったら、正直なんだかわからない。たぶん10年後に見たら「自分なんでこれ買ったんだっけ?」ってなるぞ。

本体があってこそ完成するミニチュアなのに、本体を消失させない限り日の目を見ることはない。完全な状態で飾ることは永遠にできないのだ。なんだこのパラドックスは!!


・バスボールの未来

最近ではカプセルを活用したディスプレイ、つまり本来なら捨てられる容器までも味方につけたカプセルトイも珍しくない。

しかしバスボールは「大部分が溶けて消える」運命なのである。不利すぎる! なんて刹那(せつな)的な存在……!


たぶんこのおにぎりは、当たり前の事実をつぶやくだろう。「だって入浴剤だもの」と。


これはシュールを極めて「じいちゃんが間違って食べてしまうほどリアルなめんたいこ」というくらい徹底的に凝るか、あるいは本体がなくても生きていけるアイデンティティを獲得するしかなかろう。桃のバスボールを溶かしたら、桃太郎の壮絶な一生を描いたジオラマが出てくるとか。

ポテンシャルはある。カプセルトイのように「その場で開封して次を回すか決める」ができずコンプリートが難しいところや、めちゃくちゃ風呂に入らないといけないところも、簡単には振り向かない高嶺(たかね)の花のようで そそられる。

コレクターズアイテムとしてバスボールが大流行する時代がきっと来る……はずだ! 筆者はそう信じている!!


参考リンク:PR TIMES
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.