先日、JR東海の「禅と湯 ととのう京都」のPRの一環で、人生初の京都観光をした筆者。その時の様子はPart 1とPart 2の記事をご覧いただきたい。
実はその一環で、これまた人生で初のガチな精進料理を食べたのだが、その体験があまりにも衝撃的だったのだ。完全に精進料理をナメてたぜ……!
・イメージ
筆者同様に食べたことのない方にお聞きしたいのだが、精進料理に対してどんなイメージを持っているだろうか? 筆者としては、端的に言えば「消化器の病気で入院した時の病院食をビーガン仕様にしたもの」的な感じだ。
つまり、ひたすらにあらゆる方面で味が薄く、色彩も乏しく、とにかく地味の極致で、きっと健康には良いのだろうが腹持ちは悪く、要はマズい……みたいな。そういう印象を持っていた。あらためて書くと酷いな。
ゆえに夕食が精進料理だと聞かされていたが、全く期待していなかった。「ほーん、とりあえず食って、ホテル着いたらその辺のマックでバーガーでも買うか」くらいのスタンスである。
・普茶料理
そんなテンションのままやってきたのが「閑臥庵(かんがあん)」。レストランの名前ではなく、黄檗宗(おうばくしゅう)の禅寺だ。Part 2の記事で紹介した、宇治の萬福寺と同じ宗派の寺院。
ここで精進料理を食べることができるのだそう。なお、精進料理と書いたが、閑臥庵で食べられるのは萬福寺同様に中国式。
正確には普茶(ふちゃ)料理というそうだ。ゆえに日本式の精進料理ではないが……精進料理であることに間違いはない。ちなみにJR東海「ととのう京都」のツアーでは、本山である萬福寺にて普茶弁当を頂くことができる。
・カラフル
ハッ、中国式だろうが日本式だろうが精進料理やろ? どうせ地味に決まって……
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> めっちゃカラフル <
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通常は少しずつ順番に出てくるスタイルだが、先に撮影用のサンプルということで、全て一括で見せて頂いたのがこれだ。
すっげぇな、なんだこれ! アメリカのスーパーのお菓子売り場並みにカラフルじゃねぇか!! この緑のヤツなんて、ライム味のジェローでも使ってんのかよってレベルで緑だ。どうなってんだ普茶料理!!
・美味い
完全に想定外である。いい意味で予想を裏切られた。食べるのが楽しみになってきたぜ!!! ちなみにメニューはこんな感じ。だいたい右から左に、順番に出てくるスタイルのようだった。なお、メニューは時季の食材の仕入れ次第で内容が変わるとのこと。
まずはどれが何なのかというところからだが、この すのこ 的な木の容器に乗っているものは、全て「筝羹(しゅんかん)」だそうだ。先の緑のやつも筝羹。正体は、たしか生麩入りの信田巻だったかな。
他は割と見た目や味から正体がわかるものが多かった。赤いのは赤こんにゃくで、白いのは恐らく長芋だと思う。
そして、「揚油(やんうー)」。揚げ物のことだそうだが、これは字的になんとなくわかる。わかるが、しかし何を揚げているのかはわからない。この花みたいなのは何だろう。蘭っぽい気がするが、確証はない。
通常の当サイトの食レポであれば揚げ物の衣を剥いで正体を明らかにしたものだが、さすがにこの場でそのムーヴはヤバいと判断し自重した。
間違いなく言えるのは、全て凄まじくウマいということだ。醤油や天つゆ的なものは見当たらず、そのまま食べる仕様だと思うのだが、どれもしっかりと違う味がついているのがスゴい。
衣に最初から何か仕込んで味をつけているのだろうか。また、揚げ物なのに中に油ではない、程よく味の付いた出汁的な汁がたっぷり染みていて、噛むとそれが染み出してくるものも。正体が不明すぎるが、とにかく完成度が高い。
1つの「揚油」という揚げ物枠の中で、しっとりからカリカリサクサクまで食感も完全網羅。変幻自在すぎる。どうやって作っているのか、調理の過程を見たいにも程がある。
面白いのは「鰻の蒲焼もどき」だ。精進料理なので、動物由来のものは一切使われていない。鰻など当然NGなのだが、やはり食べたくなるからなのだろうか?
下手したら、安物の本物の鰻よりも鰻かもしれない。味も特有の臭いも、そして噛んだ時の独特の歯ざわりまで、かなり鰻を再現している。並々ならぬ鰻への情熱を感じた。
こうして色々と食べ、ご飯、漬物、そしてお吸い物のセットを経て
シンプルなお汁粉でフィニッシュ。付け合わせに昆布というセレクトもイイ。
冒頭の通り、これまで果てしなく精進料理を軽視していた筆者。実際に食べてみたら、あらゆる事前の予想が大外れも甚だしい結果に。精進料理をディスって生きてきてすみませんでした!!!
いや、あくまで今回食べたのは中国式。日本式はまだ違う可能性があるが、それでも精進料理という枠の中に、こうも彩り豊かで味も濃いものが存在するとは知らなかった。どう考えても普段筆者が食べているものより全方面で優秀だ。
野菜だし、健康にも良さそう。動物由来のものは一切使用されていないとのことだが、そうとは思わせないほど味も食感も豊かで、腹持ちも良かった。これなら毎日食べても平気というか、これを毎日食べられるのはむしろ勝ち組な気すらする。
公式HPを見てみたところ、コロナ禍限定でお一人様でも利用可能になっているようだ。いざ行きたいと思っても、2名以上限定の壁に涙をのむことが多いソロ勢にとっては好機かもしれない。気になる方は状況を考慮した上で、検討してみてはいかがだろう。
普茶料理を希望する場合は、2~3日前までに予約必須だそうだ。営業時間も、拝観時間とは異なっているもよう。詳しくは寺院の公式HPを各自チェックしてくれ!
・寺院の情報
黄檗禅宗 瑞芝山 閑臥庵
拝観時間:13:00 ~ 20:00
拝観料:500円(抹茶、菓子付きは1000円)
TEL:075-256-2480
受付時間:午前 11:00~午後 9:00
※お出かけの際は、行政による移動自粛についての最新情報や各施設の営業情報を要チェック
参考リンク:JR東海、閑臥庵
執筆&撮影:江川資具
提供写真:JR東海
▼くりもどき。トゲはパリパリで、中は甘くて美味い。栗ではなくサツマイモ。「栗は使っても良いんじゃないですか?」と聞いたら、「普通に栗を出してもつまらないので」とのこと。
▼奥には凄まじくドラマチックな庭園がある。
▼その庭園を眺めながら食事の前や後に利用できるサロンもある。
▼これが正面。
▼料理ばかり紹介したが、寺院としても見どころは多い。