日本で一番強い野生動物は、熊ではないだろうか。大きな体に鋭い爪と牙、ぶ厚い毛皮、そして強靭な体と筋肉……。どこをとっても人間なんかが敵う相手ではない。
ぶっちゃけ、筆者は熊のパワーが欲しい。バイクやアウトドアを趣味とし、日ごろから「強くなりてぇ!!!!」と切に願っている。
しかし人間、それも非力な女に生まれた身。到底無理な話だろう……。そう諦めていたのだが、もしかしたら熊パワーを授けてくれるかもしれない飲み物を見つけてしまったのだ。これは試すしかねぇぇえええ!!!!!!
・ツキノワグマと触れ合える施設
やってきたのは岐阜県高山市にある奥飛騨クマ牧場。100頭ほどのツキノワグマを飼育している、日本最大の熊専門の動物園だ。
入場料(大人1100円)を支払って入場すれば、そこにはもちろん……
熊がいる!!!! コワイよぉぉぉぉ~~!!!!!!
エントランスからは柵のすぐ前にクマがいるように見え、チキンハートな筆者はなかなか近づくことができなかった。
……が、近づいてみれば「な~んだ!」と笑みがこぼれた。手前に深い溝があるため、熊とは8mほど離れているのだ。
絶対に襲われることはないので安心して見学できるぞ。
園内では熊のオヤツが販売されており、投げ入れてコミュニケーションをとることができる。
立ち上がっておねだりのポーズをしてくる熊がだんだん可愛く見えてくるのだが……
熊同士でじゃれ合っているところを見るとヤッパリ怖い。見てよ、あの牙……!
気温は1度ほど。奥飛騨は雪国なので飼育エリアにもドカドカと雪が積もっているのだが、熊たちは元気そのもの。まったく寒さを感じている様子はない。それどころか個体によっては水遊びまでしている。
マジで信じられねぇ……。寒さのあまり、筆者はコートのポケットから手を出すことができないっていうのに。
・奥飛騨クマ牧場オリジナル『熊力ドリンク』
さて、本題に移ろう。今回購入するのは『熊力(くまりき)ドリンク』。熊の胃浸出液が配合されているそうだ……と言われても、“胃浸出液”が何のことだかわからない。
職員の方に聞いてみたところ、
職員「胆嚢(たんのう)の成分が入っています。熊の胆嚢は“熊胆(ゆうたん)”と呼ばれ、古来より中国で用いられている生薬なんです」
筆者「聞いたことがあるような気がします。たしかめちゃくちゃ苦いんでしたっけ?」
職員「このドリンクは飲みやすい味に仕上げてあるので大丈夫ですよ。富山の製造メーカーに依頼して作ってもらっている、ここだけの完全オリジナルドリンクです」
イチオシ商品のようで、園内の売店には専用コーナーが常設されていた。
1本300円、10本セットを購入で熊の油1つプレゼントということ。後ほど触れるが、熊の油ってのもなかなかヤバい商品だよな。
なお熊力ドリンクは、園内に設置された自動販売機でも購入することができる。
せっかくなので筆者は自動販売機でゲットした。キンキンによく冷えてやがるぜ……!
・かすかに感じる獣臭
クマ牧場を訪れた2日後。奥飛騨旅行を楽しんだ筆者は、自宅への帰り道にさっそく熊力ドリンクを試してみることにした。
奥飛騨に滞在している間に散々はしゃいで雪遊びをしたため、ぶっちゃけ結構疲れている。見せてもらおうじゃないか、熊のパワーってやつを……!
まずは原材料をチェックしてみると、なんとエナジードリンクにありがちなカフェインやアルギニン、ナイアシン等が一切配合されていない。
代わりに入っているのが……
出た! 動物胃浸出液だ~!!!!
ドキドキしながらフタを開けて嗅いでみると、
ウッ!
かすかに香る、獣臭!!
幼少期飼っていたウサギの耳の裏側、3日風呂に入らなかった日の靴下、ブーツに塗ったミンクオイル、賞味期限が過ぎた生の豚肉、子供の頃嗅いだお爺ちゃんの頭皮……。
頭の中で思いつく限りのそれっぽい匂いをリストアップしてみたが、どれも近いようでなんか違う。なんていったって熊だ。熊の匂いがわかるほどに近づいたことなんて、30年間生きてきて一度もない。
コップに注いでみると、無炭酸。そして意外にもキツい蛍光イエローだった。
熊胆の色は黒や琥珀色ということらしい。つまりこのイエローは熊胆以外のなにか。きっとビタミンあたりの成分によるものなのだろう。
味も相当に獣臭いのだろうと覚悟をしながら飲んだのだが……
あれっ!? オロナミンCのような軽い飲み口で普通に旨い!
マジで一切の苦みや癖がない。「飲みやすい味に仕上げてある」というクマ牧場職員の言葉に、嘘偽りはなかったのであった。
・効果はあった! と、言いたいが……
熊パワーを身体に取り込んで運転は快調! と言いたいところなのだが、
いつもと特段変わりなく……いや、遊び疲れた体に鞭を打ってヒィヒィ言いながら運転する結果となった。
それもそのはず。後ほど調べてみたところ熊胆自体にはエナジー効果はなく、通常は胃腸薬として使われることが多いのだという。えぇぇーっ!! なんじゃそりゃ!?!?
・熊の油もお土産にオススメ!?
さて。最後にご報告したいのが、熊の油のことだ。
熊の油は昔からマタギ(猟師)の間で切り傷や火傷の特効薬として使われてきた、保湿力の高いクリーム。奥飛騨クマ牧場では約20g入りが1200円で販売されていた。
はじめは筆者もあまり興味を持たず「温泉施設の中の売店に売ってそうね」なんて思ってのんきに構えていた。
しかし……その心の声を読むようなポップが目に飛び込んできたのだ。
「熊の油はここでしか買えません」「敷地内の製造場で」「手作りで作っています!」
……え?
ええぇぇぇ!?!? 敷地内で手作りしているの!? ってことは、まさか……!!
まさかあの子たちの……
あの子たちの行く末は…………!!!!
ココなの!?!?!?!?
とんでもない事実に気が付いてしまったと思い、再び職員さんに声をかけた。
筆者「熊の油って、まさか、まさか……。園内のツキノワグマたちなんですか!?」
職員「違いますよ!笑 猟師さんが仕留めた熊を譲っていただいて作っています。このあたりには5、6人、熊専門でされている猟師さんがいるんです」
筆者「よ、よかった~……。といっても、同じ命ではあるからちょっと複雑ですね。ちなみに油ってどこの部位から採取するんですか?」
職員「皮下脂肪や、内臓のまわりです。敷地内で作っていることにビックリされることも多いのですが、特にコレと言って特別な作業は必要ないんですよね……」
後ほど調べてみたところ、熊肉を煮込んだものから油を濾(こ)しとり、冷やして固めるらしい。不純物や臭いを取り除くためにかなり手間がかかる作業ということだそうだ。
そうして完成した熊の油が、こちら!
半透明なクリーム色の固体で、常温ではワセリンぐらいの硬さだ。注意深く嗅いでみたのだが、筆者の鼻ではほぼ無臭である。
熊力ドリンクから熊パワーを得ることができなかった今、筆者が頼れるのはコイツだけ。毎日使って強い肌を手に入れようと思っている次第である。
なお残念ながら、熊力ドリンクは奥飛騨クマ牧場へ行かなければ購入することはできない。
熊の油であれば公式ネットショップにて販売されているため、熊に憧れる方はゲットしても良いかもしれないな。