人命や身体、一生分の労働を賭けたギャンブルという現実離れした設定の一方、緻密な心理戦で読者をクギづけにする『カイジ』シリーズ。

主人公の伊藤開司といえば、ギャンブル中の活躍はともかくとして、普段は仕事も続かず不規則な生活を送る無気力で自堕落な青年だ。

片やオフィスに欠かせない「ゴム印」のパロディでヒットしたカプセルトイ「事務的なはんこ」。

一見すると接点がなさそうで、本当に接点のない両者がコラボ。カイジの名セリフを事務用品にしてしまった!


・「カイジ×事務的なはんこ」(300円)

見た目はまんま硬派なゴム印である。名前だったり住所だったり繰り返し使うフレーズだったりをハンコ化したもの。

事務職でないと馴染みがないかもしれないが、ハンコ屋さんに頼むと好きな文面で作ってもらえる。何度も同じ文章を手書きする無駄が減り、地味ながら便利な時短アイテムだ。

ところがその文面は……「オレは押さないっ……!」


高層ビルに架けられた鉄骨「ブレイブ・メン・ロード」で放たれた名セリフ! 先をいく人を突き落とさないと自分が進めないばかりか、後続者から押されるかもしれないという緊迫の場面だ。

普段は意志が弱く怠惰で、さえない人生を送っているカイジが、ギリギリの極限状況で人間らしい知性と思いやりを発揮する場面。作品屈指の名シーンといっていい! よくぞこの場面を選んでくれた!!

回覧板が回ってきたら、このハンコを押して次の人に回してあげよう。思春期の子どものような理由なき反骨心を周囲に示せるはずだ。


続いて出たのは「 は より重い……!」


空欄に好きな言葉を入れられるようになっているが、正解は「金は命より重い」である。帝愛グループ幹部・利根川のセリフ。同グループの拝金主義を象徴する言葉といっていいだろう。

選択肢のない債務者を前に、このセリフで無茶ぶりしてくる利根川だが、真理を突いているところがまた憎たらしい。

残念ながら世の中には、利根川の主張も「一理ある」と思ってしまうシチュエーションが存在する。

しかし、だれより困窮しているカイジが最後の最後に見せる優しさや人情や正義感が、作品全体を通して反語になっているといえるだろう。

「納期は睡眠より重い……!」「40代の健康は金より重い……!」など状況に合わせてアレンジしていただきたい。


続いては「GOだっ……!」


当サイト編集長・GO羽鳥を見つけたという意味ではない。だれもが「そこは引くとこだろう」という場面で前進を宣言するセリフ。

引き際を知っている、というのが上手なギャンブルであるならば、カイジのギャンブルはまさに無謀で無鉄砲、どこか狂気的だ。

すでに多すぎる犠牲を払ってきて、かつ今後も勝算があるわけでもないのにGOしてしまう破滅的思考がカイジの本質でもある。

部下や同僚が無謀な企画を通そうとしてきたら、このハンコを押して返してあげよう。クレイジーな度量を示せるはずだ。


・まだまだセリフがある

ラインナップは全10種と多い。「ざわ・・ざわ・・」「圧倒的○○っ……!」など、名セリフがてんこもり。筆者は僥倖(ぎょうこう=思いがけない幸運のこと)という難読語をカイジで初めて知った。

脱ハンコとはいいつつも、昔ながらのオフィスにはゴム印をまとめた「ハンコケース」なんてものもあるんじゃないかと思う。こっそり混ぜておくのもオススメだ。


参考リンク:株式会社ブシロードクリエイティブ
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.