この世に地獄というものがあるとしたら、それはこれから、この記事の中で繰り広げられることになるだろう。お願いだから暇すぎて地獄にでも堕ちたいという人以外は、どうか読まないでいただきたい。忠告はしたぞ。
さて、本日11月17日は「将棋の日」だそうだ。将棋と言えば、つい先日も藤井聡太竜王の快挙が世間を騒がせたばかり。記事にするタイミングとしてはこの上ないと思われるが……まさかこんな産業廃棄物のような代物が生まれ落ちようとは。すべての将棋関係者に心から謝罪したい。
・将棋の王
2021年11月12、13日に行われた竜王戦七番勝負において4連勝し、史上最年少の19歳3カ月で4冠を達成した藤井聡太竜王。その圧倒的な無双ぶりは、もはやフィクションの世界をも超越していると言っていい。まさに現代の最強棋士である。
そんな天才・藤井聡太竜王に、ほぼほぼ素人であるにもかかわらず「たぶん勝てる」と豪語するのが当編集部のサンジュンだ。どういう人生を歩んで来たら今の藤井竜王に勝てると思えるのか謎だが、果たしてその真意は?
──ついに藤井聡太「竜王」になってしまったワケですが。
サンジュン「そうだね、いよいよ来たかって感じはするよ。俺も銀河伝説7段として負けられないと思ってる。でもまあ、最終的に勝つのは俺でしょ。やっぱり戦争だからね、将棋の世界は」
──ちなみにサンジュンさんは前回(2019年)の記事以来、将棋は指しているんですか?
サンジュン「たしか前も言ったと思うけど、指してるか指してないかで言ったら、まあ指してないよね。でも日々勝負はしてるから。俺みたいな銀河伝説7段クラスになると、将棋を指す回数よりも、いかに勝負してるかの方が重要だからな」
・意味不明
ちょっと何を言っているのか分からなかったが、自信だけはあるようだ。そこでサンジュンには今年も編集部内で対局をしてもらうことに。しかし、前回の対戦者であるシステム担当・かわらのがどういうワケか出社自体を拒んだため、新たな対戦相手を探す必要がある……んだけども。
やはりと言うべきか誰も手を挙げようとしないので、仕方なく4年前の記事で対局した我々の上司・Yoshioを無理矢理引っ張り出すことに。心なしか顔色が悪いように見えなくもないが、サンジュンにリベンジを果たす またとない機会だ。存分に力を発揮して欲しい。それでは両者……ファイッ!
・対局スタート
全Yoshioが固唾をのんで見守るサンジュンの第一手は、王。しかも普通に1マス進めただけである。まさかこの男……4年目にしてルールを覚えたのか? と期待したのも束の間。ここから先は、銀河伝説7段の独壇場と化す。
当然、掛け値なしの地獄が展開されるため、地獄が見たいという人だけ続きを閲覧していただきたい。クレームの類は一切受け付けないからな。いいな、自己責任で読めよ!
・地獄その1:ラインを押し上げてくる
まず手始めに王を進めたサンジュン。その後、何やかんやあって一気に最前線まで躍り出てきたまでは良かったが(良くはないが)、王に追従するかのように、サンジュン陣営のすべての駒が進軍してきたのは想定外だった。え、何これ? オフサイドトラップ?
サンジュン「やっぱり王が先頭を走るということが、どういう意味を持つか考えないと。これは兵の士気が高まった結果だから、俺にはコントロールできないね」
……と、相変わらずの謎理論を振りかざすサンジュン。複数の駒が同時に行動するのはもはや当たり前となっており、律儀に歩を1マスずつ進めるYoshioからしたら、この状況はタチの悪いバグでしかないだろう。ただ、早くもここで戦局が動く。対戦開始からわずか2分……
Yoshio、最初の王手……!
しかし次の瞬間……
サンジュン「はい、キングアーサーです」
まさかの消滅……!!
・地獄その2:オーラで殺せる
これは前回、かわらの戦でも見せた技(?)で、なんでも歩の2~3駒くらいなら動かず一掃できるらしい。王強すぎだろ。せめて1マスくらい移動しろと言いたい。ちなみに書くのが面倒なので省略したが、この時点でYoshioは飛車の一つをすでに失っている。同じく開始2分の出来事である。
・地獄その3:脱走兵が現れる
早々に攻撃の要となる大駒を失ってしまったYoshio。しかしこれは崩壊の序章に過ぎなかった。いろいろ起きたので、かいつまんでご説明すると……
①サンジュンの飛車、Yoshio陣内に突如出現。
②これによりなぜかYoshioの香車が消失。
③香車を “兵糧を運ぶ車” だと主張するサンジュン。
④Yoshioの歩、飢えにより大量脱走へ。
あ、これYoshio永遠に勝てねぇわ。というワケで、ここで急きょ編集部の砂子間を強制召喚。Yoshioと組ませて連合軍を結成することにした。つまりYoshio&砂子間 vs サンジュン。2対1の戦いである! 将棋界の常識を揺るがす異次元バトルは次のページへGOだ!!
執筆:あひるねこ
イラスト:マミヤ狂四郎
Photo:RocketNews24.
・前ページのあらすじ
暴虐の限りを尽くすサンジュンの攻撃により、劣勢を極めるYoshioの陣営に加わった助っ人、砂子間。こうしてYoshio&砂子間連合軍 vs サンジュンという異次元の対局が始まった。
通常の将棋ルールと違い、サンジュン → 砂子間 → Yoshio → サンジュン……という順番で駒を動かしていくため、連合軍側の攻撃チャンスは実質2倍となる。これならさすがに勝てるのではないか?
さあ、いよいよ反撃開始だ! サンジュンに一泡吹かせてやれーーー!!
サンジュン「はい、ギガスラッシュです」
ええ……
・地獄その4:一撃の重みエグイ
気付いたら物凄い勢いで金や銀がなくなっていた連合軍陣営。よく見ると、すでに全体の3分の2の駒が失われてしまっている。壊滅やないか。それでもなんとか凌いでいると、ここでサンジュンの飛車が予想外の動きを見せた。そう……
まさかの一時離脱である。
・地獄その5:盤とか関係ない
そのままYoshio陣営側の将棋盤の下に潜り込む飛車。いよいよ何でもありになってきたが、飛車が戦線を離れてくれるのは素直にありがたい。これを機にサンジュンの陣地へと果敢に攻め込む砂子間。が、せっかく桂馬が「成った」のに……
サンジュン「赤ということは、HPがもうありませんね」
瞬殺されてしまう。
・地獄その6:健康状態による弱体化
いや、ドラクエじゃねーから! 赤のゲージは瀕死とかじゃねーから!! こうして敵陣地に入った桂馬は奪われるわ……
角は謎に足止めを食らうわ……
さらにここで、離脱していたサンジュンの飛車が勝手に戦線に復帰。ついでに負傷兵を名乗る大量の歩まで戦場に介入してきたではないか。そのあまりに衝撃的な光景に、私は思わず声を上げてしまう。
こんな詰み方見たことねぇ……!
・地獄その7:鬼詰めしてくる
な、何だこれは……。完全に脱出不能ではないか。本当に将棋か……? だがしかし、2回行動によってなんとか難を逃れたYoshioと砂子間。早く! 早く態勢を整えなければ!! ところが次の瞬間……
サンジュン「王手です」
王……手……!?
急に目の前に出現するサンジュンの王。いや、どっから沸いたんだコイツ。こうして図らずも王と王によるタイマンが実現したワケだが、この時、Yoshioと砂子間、そして私(あひるねこ)の頭にはある一つの疑問が浮かんでいた。つーかこれ……
王取れるんじゃね?
サンジュンが王を動かしたということは、次はもちろん砂子間のターン。ならば1マス進んで、王の首を取って終わりではなかろうか。そう、王手と見せかけての、まさかの逆王手である。何このポンコツエンディング。
しかしその後、サンジュンが王を取られることを執拗に渋ったため、砂子間とYoshioはその周囲をさらに固めて王の包囲網を完成させる。スゴイ! 形勢逆転だ!! これでもうサンジュンには打つ手が……
サンジュン「はい、ゼロ・グラビティです」
え!?
何が起きた……?
・地獄その8:空間を歪めてくる
気が付くと、サンジュン陣営の王の周辺からすべての駒が消えていた。サンジュンによれば「ゼロ・グラビティ」が発動すると王の周りは無重力状態になり、敵味方関係なく拭き飛ばすらしい。つまり……
終局である。
・終わった
いつの間にか王を失ったYoshioと砂子間は、事態が飲み込めずいまだ呆然としている。まさかこんなスッと終わるとは。さすが銀河伝説7段といったところか。ていうか……銀河伝説7段って何なんだよ!!!! 割と序盤から言ってたけど、何なんだ銀河伝説7段って! どこが認定してんだそれ!!
こうして難なく勝利を収めたサンジュンは、「じゃあ後は戦後処理だな」と意味不明なことを呟きながら自陣に歩を並べだした。それが終わったら、今度は余った駒を集めて円型に配置。そして……
王を胴上げしていた。
そう、これは勝利の宴である。中には酒を飲んで赤くなっている駒もおり(HPのゲージじゃなかったんか)、大いに盛り上がっている様子。その様子を見てサンジュンも満足しているようだ。
一方、Yoshioと砂子間はどこまでも憔悴しきっており……って、あれ? Yoshioさん……そんなに小さかったでしたっけ? 砂子間の隣にいるからか、どうも体が縮んだように見える。生気吸われとるやないか。
サンジュン「まあ悪くない戦いだったけど、仮想・藤井竜王としてはちょっと物足りなかったかな。俺もそろそろ本気を出したいというか、ぶっちゃけ敗北を知りたいよね」
と、『バキ最凶死刑囚編』みたいなことをのたまうサンジュン。頼む、誰でもいい……! 誰かこの男に敗北を教えてやってくれ……!! 誰か……ッ!
地獄は続く──。
執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.