私が “怪しいGoogle広告” に反応する怪しい人間だからなのか、相も変わらずネットサーフィンをしていると「怪しいブランド時計」なり「怪しいブランドバッグ」なりのGoogle広告が表示される今日この頃。
それはまるで海外の繁華街を歩いていたら、どこからともなく怪しい人物から「オニイサン、コピーアルヨ」と声をかけられるのと似ているが、今回オススメされた商品は看過できないモノだった。
いかにも怪しいApple WatchのGoogle広告を押してみると……
おや? 「正真正銘本物」の……
「正規品 AirPods Pro ¥10,800」ときた……!!
安い。やけに安い。定価は¥30,580なので、およそ三分の一の価格である。私、ほとんど毎日AirPods Proを愛用しているヘビーユーザーなのだが、予備として持っておくのも悪くない。なにせ「正規品」だし……。
購入ページには言い逃れできないほどの正確なアップルマークが表示されており、全力で「正真正銘本物のAppleです」とアピっている。ちなみに送料は無料で、48時間で配達されると書いてあったが……
商品は5日後に代引きで届いた。価格は10800円。発送元を見てみると、福島県郡山市喜久田町菖蒲池●●-●●●であり、詳しくネットで調べてみると高齢者を狙った健康食品の送りつけ商法なども行っている着払い詐欺の総本山っぽい。
ちなみに私に届いた商品の送り主名は「トー●ルサポート」であったが、「カ●ン国際貨物代理有限公司」「ア●ジ●実業有限公司」など、同じ住所で複数の名前を持っているようなので、どうか同住所からの着払い詐欺には注意してほしい。
それはさておき、さっそく開封してみると……
むむ?
え?
ピッカピカの新品だし……
愛用のAirPods Proと比較しても……
変わらない……
重さこそ違うけど……
なんとペアリングもできる……
ビミョーに刻印が違うけども……
ケース奥深くに書かれているシリアル番号を調べると……
交換品のシリアル番号!?
ところがイヤホン本体と箱に書かれているシリアルと、システム側で確認するシリアルが違ったり……
どういうこっちゃ!?
──と、調べれば調べるほど謎が深まる商品が届いたのである。そしてここから、私……いや、私とAppleのサポートは、真偽をめぐる迷宮に迷い込むことになる。これは果たして本物なのか? 話の続きは次ページへ!!
執筆:迷惑メール評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
【実録】正真正銘本物の正規品なのに価格が怪しく安い「AirPodsPro(10800円)」の正体を追ってみた(その2)
怪しいGoogle広告から怪しいAirPods Proを買ったらなんと本物が届いてしまった……みたいな展開は、最も避けたいオチである。実は心のどこかで「どう見てもニセモノでした〜(ズコー!)」なんて単純な展開を期待していた。
ところが実際は前ページに書いた通り。素人目で分析するなら、なんらかのトラブルにより修理された「純正の交換品」が届いた……という感じだろうか? 流出? 横流し?
ちなみにペアリングはできるが、実際に使おうとしたところ、片方からしか音が出なかった。よって不良品ではあるが、そんなことより気になるのは真偽である。
そこで私は、白黒ハッキリさせるべく、アップルのチャットサポートに連絡してみることにした。知りたいことは ただひとつ。この “正真正銘本物の正規品” と謳(うた)うAirPods Proが本物なのかどうか、それだけだ。
・サポート開始
担当者さんに、詳しい状況やシリアルなどを伝えると以下のような答えが返ってきた。
「改造品の可能性が高い製品」。さらに会話を進めると……
「偽物である可能性が高い」ときた。そしてここからは、チャットではなく、アップルサポートの「スペシャリスト」さんによる電話サポートを受けることに。だんだん調査が本格的になってきた。Appleも本気である。
で、電話でかくかくしかじか。購入したサイトや、そこに買いてあった住所、シリアルなどを改めて報告し調査してもらった結果、スペシャリストさんからの回答は……
・そのシリアルは、過去に修理を断った記録が残っている。
・それが「改造」によるものなのかは分からないが、内部を触った形跡があったもよう。
・しかし製品としては存在しているシリアル番号、つまり正規品ではある。
・それゆえ、本物か偽物かという問いの答えとしては、改造などの手が加えられているが「本物」という回答にはなる。
──と! まさかの「本物」回答!! そんなバカな……!!
しかし、このスペシャリストさんから勧められたのは、より踏み込んだ調査。「一度店頭のほうに持ち込み検査してはどうか?」という提案だった。グッドアイデア。望むところだ。果たしてこのAirPods Proはシリアルの通り本物なのか!? 白か黒か、ついに決着。衝撃の結末は最終ページへ!
執筆:迷惑メール評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
【実録】正真正銘本物の正規品なのに価格が怪しく安い「AirPodsPro(10800円)」の正体を追ってみた(その3)
それは雨降る肌寒い日だった。予約していた時間の5分前にアップル新宿へ到着。受付を済ませると、すぐに担当者さんがやってきた。
「羽鳥さんですね? さっそく拝見していいですか?」
ゴム手袋をしたジーニアスさんに、真偽不明のAirPods Proを箱ごと渡した。彼は無言で開封し、AirPods Proをじっくり確認。そしてAirPods ProをケーブルでPCと接続し何かを調べていたが、すぐさま答えを明言した。
「フェイクです」。
はっきり彼はフェイク品と断定した。フェイクと言うとニセモノですか? と問うと、「ニセモノだと思いますね」と即答。システムチェックをしても認識しない、完全なるフェイク品であると断言した。さらに、
「イチからフェイクだと思います」
電話サポートでは「改造品の可能性が高い製品」との判断だったが、実際に触って確認したジーニアスは、本物パーツは使われていない、完全なるコピー品(模造品)であるとの判断を下した。いわく、
・ヒンジ部分の刻印が本物とは違う
・ヒンジ部分のパーツの作りが甘い
・Lightningコネクタの差し込み具合も甘い
とのことでニセモノ確定、「非常に上手にできているフェイク品です」との評価だった。
ちなみに本体は模造品だが、箱に関しては「たぶんオリジナルかも?」とのこと。なんでも中国では「本物の箱」が売られているのだとか。しかしながら、箱に貼られているシールのフォントは若干違うらしい。
そして最後に、ジーニアスはこう言った。
「最近は “スーパーコピー品” が けっこうあるんですよ。どんどん精巧になっています」。
単なるニセモノではなく「スーパーコピー」。コロナが明けて海外に行ったら、「オニイサン、コピーアルヨ」ではなく、「オニイサン、スーパーコピーアルヨ」と声をかけられる日が来るのかも……。
いいや、もう来ている。少なくとも時計に関しては、海外に行かずとも、もう毎日のように「オニイサン、スーパーコピーアルヨ」とオススメされている今日この頃。
声の主は、まいどおなじみ……
Google広告……。
<完>
執筆:迷惑メール評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
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