私が現在滞在中のスペインでは、市場やスーパーに必ずウサギ肉が売られている。それは見事なまでにゴロリ! と皮だけ剥がれた丸ごとのウサちゃん。童謡『大黒様』の歌詞にある「白兎 皮をむかれて 赤裸」というのは、ズバリこういうことだったのだな……。
コレを自分で料理すると思うと少し震えるが、「かわいそう」と言いつつハンバーガー食うってのも個人的にはな〜んか違う気がする。お肉屋さんの苦労を知るためにも、ここはひとつ自分でウサギをさばいてみよう。そしてカラッと唐揚げにしちゃうのだ!
・ウサギは国民食
ちなみにスペインでウサギはパエリアに入れて食べるのが一般的らしい。
また丸焼きにする場合もあるらしく、スーパーには切れ目を入れたものも売られているぞ。
価格はだいたい1羽7〜8ユーロ(1000円前後)ほど。日本の鶏肉と同じくらいか。
さて。ここからは少しだけ生々しい画像が登場するので、苦手な方のために完成した唐揚げの画像を先にお見せしておく。
ジャーン! ウサギの唐揚げです! これで記事として最低限の体裁は保たれただろう。ってことで生々しいのが苦手な方は、ここでそっとタブを閉じてほしい。
さ、それではこちらが…………
スーパーに売られているウサギです!
・ウサギが見てる
耳と手足の先は切り落とされているものの、それ以外はほぼ丸ごとのウサギ。筋肉の造形が生々しく、今にも走り出しそうだ。これを今から料理して食べるの? 私が? マジで?
ちなみに私は丸ごとの鶏なら躊躇なく料理できる人物だ。そんな私がこれほど怖気づく理由はふたつ。「小学生のころウサギを飼っていた思い出が蘇る」こと、それから「ウサギの頭部が完全に残っている」こと。
グレーのまん丸いウサギの目玉はこちらを見つめているようで、ハッキリ言うとオッカない。不要な感情と分かっちゃいるけど「ごめんね……」という気持ちになってしまう。だんだん手が震えてきた。汗も止まらない。
だがしかし! ここで止めてはウサギの命に顔向けできぬぞ。覚悟を決めて大きめの包丁でゴリゴリやると……意外にすんなり骨を切ることができた。
現金なものでウサギが肉片へと変化するに従い、少しずつ恐怖は薄れてくる。
いつもこの苦しい工程をやってくれているお肉屋さん、本当にありがとう……。
ちなみにウサギを買うと必ず「キモ」も付いてくる。どう調理するんだろ……。
・どこでも作れる「唐揚げ」
さて唐揚げが素晴らしいのは世界中どこへ行っても材料が揃いやすいところだ。
今回は日本から持ってきた醤油をベースに、現地で購入した材料で唐揚げを作ってみる。日本酒の代用品は白ワインだ。
またスペインでは「うずら」の肉もよく売られているため、せっかくなので一緒にカラッと揚げちゃうこととする。
ウサギをさばいた私にとっては、ウズラの調理など造作もないこと……フフ。
タップリのニンニク・ショウガとともに材料を漬け込み、冷蔵庫で一晩寝かせる。
欧米でメジャーな「フライ用の粉」は何でもケンタッキーみたいにしてくれる優れもの。
高温の油に入れてしまえば、もはやウサギの面影はない。
丁寧に2度揚げしたなら……
改めましてウサギの唐揚げの完成〜!
・命をいただく
お味は鶏肉に近いが確かな歯ごたえと弾力アリ。そして臭みと野生味をニンニクパワーがいい感じに中和しているようだ。やはり唐揚げは偉大なり。
パリパリに仕上がって非常に美味。
ウズラはさらに強いジビエ感があってお酒のつまみによさそう!
動物を解体することは多くの日本人にとってあまり馴染みのない行為である。私は今回の体験によって「かわいそう」「つらい」「こわい」「ありがとう」等々といった、自分の内側から湧き出る様々な気持ちを感じることができた。
ありふれた言葉だけど「命をいただくということ」の意味を考え、人間として少しだけ成長したような気が…………とにかく皆さんも機会があれば、ぜひ1羽まるごとのウサギを調理してみてほしい。もちろん無理なら「他人が調理したウサギを食べる」でもOKです!
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.