ヤマビル。それは吸血虫。気が付かないうちに肌の柔らかいところに吸い付き、身体が大きく膨らむまで血を吸う気持ち悪い虫。山に遊びに行くと時々体の上を這っているのを見つけ、ゾッとすることがある。

そんなヤマビル対策として、以前アウトドアショップで見つけて購入したのが『ヒル下がりのジョニー(Amazonだと140mlで1540円)』

靴にスプレーすることでヒルを避けられるとのことだったので愛用していたのだが、ふと疑問に思った。これ、本当に効果があるの?

よし、決めた! ヒルと直接対決して白黒つけようじゃないか。

・ヒル探しに苦戦

というわけで7月上旬、林道へやってきた。ここは以前ヒルを見かけたことがある場所。


使用方法にのっとり、ヒル下がりのジョニーを靴に吹きかける。


説明書きによると、ヒルは地面から足を伝って登ってくるらしい。これまでなんとなくのイメージなのだが、木の上から降ってくるのだと思っていた。思い返せば以前見かけたヒルも地面の上を這っていたような気がする……。

それではさっそく捜索を開始しよう。


ヒルは温度と二酸化炭素に反応するとの情報を聞いたため、ストローであらゆる場所に息を吹きかけながら林道を隅から隅までゆっくり練り歩いてみる。


川の周りの地面も入念に確認してみる。


──が、まったくいない。

どれだけ探してみてもいないのだ。


2時間ほど探して諦めることにした。1週間ほど晴れが続いていた時期だったため、湿った場所を好むヤマビルにとっては動きにくい環境であったのかもしれない。


1か月後。再び山へ来た。

今度は家から近い山にしたのだが、山深さで言えば同等。いやむしろ更に山深い。

昨日まで雨が降っていた影響で地面は湿っぽく、ヒル好みしそうな環境だ。ようやく掴めたチャンス、やる気は十分である。


ヒル、出てこいやぁぁぁ―――――!!!!


どこだー!?


あ、シカの足跡だ。


おーい……


どこにもいない。


なんと、1時間探し回っても一切見つけられなかった。通りすがりの地元の方に聞いてみると、「ここには出んわ」とのことだった。ガクッ……。

まさかこんなにもヒル探しで苦戦するとは思っていなかった。有難い話ではあるが、ヤマビルが生息する山というのは案外少ないのかもしれない。


・ヒルに悩まされるお爺ちゃん

ダメ元でもう1か所回ってみることにし、バイクで数時間ほどの場所にある登山口へやってきた。するとどうだろう、入り口に『ヒル注意』の看板があるではないか!

これはキタ!


登山口の前で地面を眺めていたところ、農家のお爺ちゃんが声をかけてくれた。

お爺ちゃん「なにを探しとるんや?」

筆者「実はヒルを探していまして。」


筆者がそう答えると、お爺ちゃんは急にズボンのすそをめくった。

お爺ちゃん「これ、今日噛まれた。30分ぐらい前やな。」

なんということだ。お爺ちゃんの証言をまとめると、


・1日に10匹は見る
・木陰をゆっくり歩くとすぐに寄ってくる
・対策として塩水を染み込ませたタオルを巻いているけど、もう噛まれるものだと諦めている
・噛まれたらとにかく血が止まらない

出血量をジェスチャーで教えてくれるお爺ちゃん。そんなに!? 衝撃が走る。


つまり、ここは絶対にヒルに出会える場所。盛り上がってきたぞ……!


・【閲覧注意】ついにヤマビルとバトル!


それではいよいよ山へ突入しよう。

ここから先はヒルの写真を掲載するので、苦手な方は読まないことをオススメする。


先ほどお爺ちゃんが言っていた通り、ゆっくり ゆっくりと歩いていると、開始5分ほどで足元にうねうねと動くなめくじのようなものが見えた。

実を言うと筆者、結構緊張していた。散々ヒルを探してきたものの、本物を見たことはほどんどない。

ビニール手袋ですくい上げるように捕まえ、捕獲用に持ってきたタッパーに叩き落そうとするが……落ちない。お尻側にある吸盤のようなもので貼り付いたまま、まったく手袋から離れようとしないのだ。

体に向けて登ってこようとするヒル。登ってこられてはたまらないと、指で弾くように応戦する筆者。

熱いバトルが始まった。


ヒルも譲る気はないらしく、一向に手袋から離れる様子はない。……それなれば仕方がない、手袋にヒル下がりのジョニーを塗らせてもらおう。

ということで、点線部分にぐるっと一回り塗ってみた。これより上に登ってきたらヒルの勝ち、登れなかったら人類の勝ちということだ。

ファイッ!!


途中までは順調に登ってきたヒルだったのだが、ヒル下がりのジョニーに頭が触れた瞬間、そこに壁があるかのようにのけぞった。

頭を左右に振りながら道を探しているようだが見つからないのだろうか。これは人類の勝利……?


と、その時──!


ボテッ


ヒルが突然タッパーの底に落ちた。そればかりかキューっと縮こまって動かなくなってしまった。

まだまだ実験に付き合ってほしかったためヒルの再起を待ったが、何分経ってもうんともすんとも言わない。一体どうした?


……あっ!


死んでる……っぽい!!!!!!


そう、なんとヒルは死んだかのように動かなくなったのだ。ヒル下がりのジョニーはヒル除けの薬だと思っていたが、ヒルを殺す効果もあるのか? とにかく、人類が勝った。それだけは確かだ。


・再戦の舞台は靴の上

1度はヤマビルに勝利したものの、手袋にスプレーしたヒル下がりのジョニーがまだ乾いていない、しっとり濡れた状態でのバトル。つまりこちらにかなり有利な状態で戦わせてもらっていた。

より実践を意識したバトルをするには乾いた状態で、もっと言えば靴の上で戦う必要があるだろう。


ということで靴に入念にスプレーして乾かし、先ほどと同じ場所をゆっくり何度も歩き回る。


すると──!

来た! 先ほどよりも小さいサイズだが、元気の良さそうなヒルだ!!


再びバトルを開始だ!

まずは血を求めて体に這い上がってこようとするヒル。しゃくとり虫のように体を動かし、食いつく場所を探しているようだが……

ヒル下がりのジョニーをスプレーした場所に触れた直後から頭を激しく振りながら苦しんでいるように見える。


そして2分後。ヒルは体を小さくして動かなくなってしまった。

またしても死んだっぽいのだ。


・恐るべき効果だ!

この結果に気を良くした筆者は、林の中で直立する実験に挑戦することにした。先ほどゆっくり歩いただけでもヒルが寄って来たのに立ったままとなると……想像するだけでも恐ろしい。


緊張の中、立つこと10分。

ヒルが登ってこない!


靴までは近づいてくるが、身体まで登って来たヒルは1匹もいなかったのだ。

本来であればもっと長時間の実験をするべきだったのかもしれないが、筆者の心の恐怖ゲージが限界まで振り切ってしまったため打ち切りとさせてもらった。


というわけで、ヒル下がりのジョニーはヤマビルに対して十分すぎるぐらいの効果を発揮することが証明できた。

この喜びを先ほどのお爺ちゃんに伝えたかったのだが、残念ながら既に帰ってしまっていた。


ヒルに噛まれない1番の方法はもちろん、ヒルが生息する山にむやみに入らないことではある。だが、どうしても入る事情がある場合、ヤマビル除けの第1選択肢としてヒル下がりのジョニーを活用するのがオススメだ。

ちなみに今回の実験では靴のみにスプレーしたが、ヒルが特に多い日は帽子にかけたり、タオルに染み込ませた上で首に巻くのも効果的だそうだ。

肌荒れの可能性もあるので直接地肌にはかけないように注意だぞ!

参考リンク:ヒル下がりのジョニー
イラスト・執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.