チェコ発のリアリティーショー『SNS-少女たちの10日間-』のデジタル配信が各種動画サービスで始まった。テーマは児童の性的搾取。SNS上で、相手が12歳だと知りながら性的目的で近づいてくる男性たちを告発した内容だ。

本国チェコではドキュメンタリーとしては異例の大ヒットを記録。チェコ警察から刑事手続きのための映像提供が要求された問題作だという。

ちょっと乱暴な言葉だが、これほど「胸クソ」な映画もない。「見て欲しい」という単純なセリフでは表現できない作品の一端をご紹介したい。


・物議をかもしそうな手法

映画の内容以前に、その手法からして物議をかもすだろう作品でもある。

出演するのはオーディションで選ばれた童顔の女優3名で、「12歳の少女」のふりをしてSNSの偽アカウントを作る。巨大な撮影スタジオには、綿密に作りこまれた子ども部屋のセット。コンタクトしてきた男性とそこでビデオチャットをする。

10日間の撮影期間中、3つの偽アカウントには2458名もの成人男性が殺到し、そのうちかなりの数の男性が違法行為を行う。

どんな違法行為か……は、ここではおぞましくて描写するのも はばかられるので、実際にご覧いただくしかない。

いずれにしても男性たちは撮影されていることも知らず、自分の娘や孫のような年齢の児童に、性的な要求をエスカレートさせていく。

諸外国ではジャーナリストによる潜入調査や、実名あり告発が一般的な国もあるようだが、不正を暴くための不正は許される、というのは危険な考えでもある。

コンタクトしてきた人の一挙手一投足を大勢のスタッフが無断で監視・録画し、商業作品として公開しているわけだから、決して趣味のいい手法とはいえない。

また、女優たちへの心理的、物理的な影響も気になる。

精神科医や弁護士がチームに加わってはいるが、実際にどんなやりとりになるかは相手次第だ。もちろん女優たちは「顔出し」で相手と対面するので、性的な対象として自分をさらし、不意打ちのような攻撃を受ける場面も多々ある。

映画公開後には男性側から逆恨みされる危険もあっただろう。演出とはいえ、チャット中の画像が半永久的にインターネット上にも残る。

それらの「ひっかかり」を加味しても、「見る価値のない駄作」とはいえない威力があるのがこの映画である。


・思春期の少女を取り巻く危険

女優側には「自分から挑発・誘惑しない」というルールがあるが、それでも思わせぶりで曖昧な態度や、無防備な態度はとる。見ている側からすれば、はっきり拒絶すれば相手もエスカレートしないのに、と映る。


これは現実の10代の少女の行動ともよく似ている。

思春期の少年少女は、好奇心旺盛で冒険的で「自分がどこまで通用するか試したい」という挑戦心もある。中には本気で「家出したい」「親が困ろうが心配しようが構わない」という心境の子もいるだろう。優しくしてくれる大人を、切実に求めている子もいるはずだ。


これらは「少女から誘ってきた」「少女も望んでいた」「こんなところでチャットしている子なんだから、どんな目に遭っても自業自得」という言い分を加害者側に与えてしまう。

いかなるシチュエーションであっても、子どもを性の対象とすることは許されないにもかかわらず、である。

作品の後半ではさらにシナリオを追加して、危険とも思える検証を行っていく。

楽しいやりとりが、ある一定の時点から「脅迫」になっていくのはSNS犯罪の定番パターンだが、何人もの男性がチャット中の女優の姿を撮影(スクリーンショット)することも印象的である。


・「ぜひ見て欲しい」とはいえないが…

動画配信はAmazon Prime Video、dTV、FOD、GYAO!ストアなど複数のサービスで展開中。価格はサービスによって異なる。2021年10月6日にはDVD発売&レンタルを開始する。

モザイク処理はあるものの、露骨な性的表現もあるため視聴時にはご注意を。

今回は一貫して少女がテーマではあるが、「少年も性的搾取の対象となる」ことにも触れている。鑑賞後には腹が立ち、気持ちが悪く、モヤモヤし、「見なきゃよかった」と思い、けれども忘れられない、そんな映画である。


参考リンク:PR TIMES
執筆:冨樫さや
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