
突然だが、筆者は今かなりの緊張の中で筆を執っている。何故なら大いなる存在に楯突こうとしているからである。
幼少の頃より何かに「逆らう」ということは滅多になく、長い物に巻かれ、べったりと大樹に寄り添い、最低限の意思表示をして生きてきた主体性ミニマリストの筆者であっても、今回ばかりは口を開かずにいられない。
何の話かと言えば、ハーゲンダッツの話である。2021年7月27日に同ブランドの新味「濃苺(こいちご)」が夏季限定で発売されたのだが、これを実食してみたところ、少々苦言を呈したくなる味わいだったので、おずおずと牙を剥いていきたい。
公式HPにおいて、既存の人気フレーバーである「ストロベリー味」ともまた違う、「ハーゲンダッツのこだわりである “素材のおいしさ” を突き詰めて開発した」商品として紹介されているのがこの「濃苺味」である。ちなみに希望小売価格は350円となっている。
そもそもハーゲンダッツと言えばアイスの王とも呼べる存在であり、人気の「ストロベリー味」は「王の中の王」だ。「濃苺味」がさらにそこから突き進んだものだとするなら、これはもう「王の中の王の中の王」と称するほかないわけで、期待せずにいられるわけがない。
個人的に「ストロベリー味」が好きなことも相まって、筆者は興奮混じりに同商品を入手した。そして落ち着きのない手つきで実物のフタを開けたところ、待っていたのは予期せぬ光景であった。
間違えたか?
と、一瞬そう思った。間違えて通常の「ストロベリー味」を買ってしまったのではないかと。そんな風に思わせるほどに、「濃苺味」は通常のものと酷似した見た目をしていた。
が、見た目が常に味を決定づけるわけではない。例えばワインだって、高級ワインと普通のワインを見た目で判断せよと言われれば大半の人が難儀するであろう。あんなもの、押しなべて赤紫色の液体である。
目の前のハーゲンダッツを擁護するあまり無関係のワイン業界を敵に回した気がするが、ともあれ重要なのは味だ。そう己に言い聞かせながらアイスを口に含んだところ、筆者の心中に1つの言葉が浮かんだ。
やっぱり間違えたか?
と、そんな風に思ってしまったのである。味の第一印象は、正直に言って通常の「ストロベリー味」と大きく違うものではなかった。事前に何も知ることなくパッケージも見ずにこのアイスを食べていたら、高確率で「ストロベリー味」と認識しただろう。
とはいえ誤解してほしくはないのだが、クオリティが低いとかそういうわけでは断じてない。よくよく味わってみると、微妙に違いもわかってくる。「苺感」とでも言えばよいだろうか。それが若干高まっている気がする。
「ストロベリー味」のクリーミーさはそのままに、果肉の成分がより瑞々しく感じられ、加えてそれとは別に、新鮮な酸味が舌に残る。酸味に関しては、この商品のために開発したというオリジナルのイチゴ酢が功を奏しているのだろう。
なるほど、確かに上で引用した「素材のおいしさ」を見出すことはできるし、ただでさえ高品質な「ストロベリー味」をほのかに上回るリッチさが、順当な進化を伝えてくる。
伝えてはくるのだが、しかしこちらが期待していたのは微妙な違いではなく、劇的な目新しさだ。「濃苺」と謳うからには、もっと驚くような濃厚さがあってもよかったのではと思ってしまう。高望みしていた分、落差を覚えずにいられない。
結果としては「王の中の王の中の王」ではなく、「王の中の王の中のやや王」といった感じである。だんだん「余計な比喩を使ったせいで意味がわからなくなる好例」のようになってきたので整理すると、「濃苺」自体は美味しいが、あえて「ストロベリー味」と比較するなら、さらなるワンパンチが欲しくなる仕上がりだった。
逆に言えば、それだけ既存の「ストロベリー味」が完成されているという証拠でもあろう。そして、その「ストロベリー味」への愛ゆえに、こうして苦言を呈する形にもなってしまった。
しかし決して後悔などしていない。何故ならハーゲンダッツは大いなる存在だからだ。今こうして筆者が剝いている牙も、いずれ産み出す新商品によって打ち砕いてくれる、そんな堅固な大樹のような存在であると信じているからだ。
参考リンク:ハーゲンダッツジャパン 公式HP
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.
西本大紀








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