新宿駅南口改札内の「駅弁屋 頂(いただき)」を週に1度チェックしている。入口付近に鎮座するのは『チキン弁当』のような大定番弁当。ま、人気があるので当然だ。しかし私が狙っているのは、レギュラーではなく「たまたまベンチ入りしてます」的な弁当である。
この日たまたま見かけたのは、奈良県名物「柿の葉寿司」。商品名は『たなかの柿の葉すし(1180円)』で、奈良・五條の風土が生んだ “ふるさとの味” が楽しめるという。まさに郷土の魅力が詰まったザ・駅弁だ。いつか食べてみたかったんだよな〜てことで買ってみた。
・柿の産地
海から遠い奈良の五條・吉野地方は、全国有数の柿の産地。紀州(和歌山)でゲットした鯖を切り身にして、すし飯に乗せ、抗菌作用のある「柿の葉」で包むのは、先人の知恵が凝縮された奈良の伝統郷土食である。
なぜ、そんなことを知っているのかというと……
弁当の中に「柿の葉すしのいわれ」が入っていたからだ。
地域の歴史に思いを馳せるのは駅弁の良いところ。単純に「葉っぱでくるんだ寿司」として食べるよりも「海のない土地ならではの知恵が詰まった名物」としていただく方が美味しいに決まっている。昔は客人をもてなす際のごちそうだったそうだ。フタを開けると……
「鯛鯛、さけさけ、さばさばさば」とネタの順番が書いてあった。
たしかに全て同じに見えるからな。
取り分ける際などありがたい。てか、てっきり鯖(さば)だけなのかと思っていたぞ。
・冬場はオーブントースターで
ちなみに「柿の葉寿司」は、オーブントースターに突っ込むと酢飯がフワッとするうえに、魚の旨みが米に染みてうまいらしい。とくに冷たいご飯がかたく感じられる冬場におすすめとのこと。なるほど、地元民の言葉には説得力がある。
にしても、柿の葉の香りがとても上品だ。まさに長い歴史の中で培われたごちそうの香り。そして柿の葉をめくると……
非常に美しい。しっとりと輝いている。
そのまま食べてみると、さばの旨みと柿の葉の香りがしみ込んで激うま。駅弁らしく常温で食べたが、熟成された味わいがたまらない。つまり正解であった。まったりとした旨みが口いっぱいに広がる。やはり、さばは鉄板だ。
とはいえ甘酢でさっぱりとした鯛も、あっさり目のさけも、まろやかなシャリの味をよく引き立てている。魚も米もどちらもおいしい。さらに言えば、つるんとした質感もかわいい。
さすが長い歴史の中で培われた名物……見た目も、味も、香りも上品であった。ごちそうであった。
・本店では店内でも食べられる
東京にいながらにして、全国各地の名物が楽しめるのが駅弁だ。今回は奈良に行った気分をオフィスで味わうことができたぞ。なお、同店は近鉄奈良駅のすぐそばに本店を構えていて、店内でも食べることができるという。いつか現地で食べてみたい。みなさんもぜひ!
・今回ご紹介した店舗の詳細データ
店名 駅弁屋 頂
住所 東京都新宿区新宿3-38-1 JR新宿駅内南口コンコース
時間 6:30~22:00
休日 無休
執筆:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.