本日2021年7月2日の金曜ロードショーは『おおかみこどもの雨と雪』。狼男と人間の間に生まれた姉弟を描く本作は現代日本を舞台にしたファンタジー。人間として生きるか、狼として生きるか。姉の雪と弟の雨には常にそんな問いかけが横たわるが、実はそれ以上に人間の母親・花の生き方を描いた物語でもある

愛や感動をおしてくる話は苦手なのに、本作はなぜか何度見ても号泣してしまう私(中澤)。考えるより前に涙腺崩壊してしまう6つのポイントをご紹介したい。

・ど頭

初めて見た時は特に何も感じなかったのだが、2回目からクるようになったのが物語の始まり。花が若い! エンドロールまで見ると、若い頃の花を見るだけで泣いてしまう。なんなら、終わってから頭に戻って、勢いでもう1周してしまうレベル。

・雪が産まれたシーン

雪が生まれた瞬間の未来が開けていく雰囲気でクる。その後の展開を知っていると、順風満帆な頃の花を見るだけでもう涙が止まらない。物語としてはアウトになったとしても、このまま幸せになってくれと見る度に祈ってしまう。

・雪のシーン

田舎の大雪に感動した雪と雨を追って花も雪山を走るこのシーン。2人が遠吠えをあげると花も遠吠えの真似をする。物語前半に都会のマンションで2人が遠吠えをして、大家さんに怒られるシーンがあるだけに、ここの花は生き生きしていて良いシーンだ。花はもう「シー!」と注意しなくていいのである

だが、私が泣いてしまうのは、そんな雪山でも遠吠えでもなく、最初に庭の雪に3人でダイブして大笑いするところ。ここですでに号泣している。花がこんなに曇りなく笑ってるのいつ以来よ……。その笑顔に乾杯。

・花が台風の山を分け入るシーン

台風の中、山に入っていく雨を追って自分も山に分け入る花。ぶっちゃけ、この時の雨には怒りすら覚える。テメエ、花に迷惑をかけるんじゃねえよ! 物語的にアウトになったとしても今は家にいろ。そして台風過ぎてから様子を見に行け。

しかし、スタスタ山に消えていく雨。すでにこの時点で狼として生きることを決めているのかもしれない。そんな雨を心配する花。特に、崖のシーンは考えるより前に涙がにじんでしまう。熊出たとこで出てこいや雨コノヤロー

・だって……私まだあなたに何もしてあげてない

狼の道を選んだ雨との別れのシーン。決めセリフは「しっかり生きて!」なのだが、個人的には、その前の「だって……私まだあなたに何もしてあげてない」の方がクる。いやいや、もう十分ですよお母さん

物語的にアウトになっても良いから、行くな雨! 山と家の2拠点生活でエエやないか!! 思わず画面の前でそう説得してしまうレベル。このセリフでワンパン喰らって、その後の「しっかり生きて!」の抑揚でフィニッシュを決められる。声優さん誰だろう?

と思ったら、花の声優さんは宮崎あおいさんであった。声優専門ではない人が声をあてるアニメには批判も多いが、宮崎あおいさんは普通にウマイと思う。

・エンドロール

上記のように、大変なことは色々あるけれど、割と前向きな雰囲気で終わるのが本作の良いところ。こっちは終わる頃には完全に花が憑依しているため、最終的に花が晴れやかでいてくれることに救われるのだ。鬱とかにならなくて良かったよ。

そんな感じで、「終わったなー」と思っているふいをついてくるのがエンドロール。これはもうホント見てもらいたいのだが、約2時間本作を見た人を殺しに来ている。映画としてはごく普通のエンドロールなのだが、この作品で泣いた者にとってはハードパンチの連続すぎてもはやデンプシーロールだ。

──というわけで、何度見ても最低6回は泣いてしまう私。1度目はそうでもなかったのだが、今では細田守監督作品の中で最も好きな映画になった。年齢や結婚、子供がいるかどうかなど、その時々によっても見え方が変わってくる映画だと思う。見たことがある人も、今夜の金曜ロードショーでまた違った見え方をするかもしれない。

執筆・イラスト:中澤星児