カプセルトイにはいくつかの方向性があると思う。まずは売り場の半分を占めるキャラクターグッズ。

続いて、笑いを狙ったネタ系、意外性や郷愁など人の感情を動かすアイディア系、精巧なリアルミニチュア系などがあるだろう。

日本の造形技術はすごいから、単に「本物そっくり」「よくできている」だけでは、もはや誰も驚かない。今回入手した商品も普段なら財布のひもを締めるところだが、あまりにリアルだったのでついつい誘惑に負けてしまった。

ところが、帰宅してホクホクと開封していたところ「ちょっと待て」という珍品が飛び出した。これはいったい……


・「超精密樹脂粘土 アメリカンダイナーonウッドボード」(300円)

その商品とは「超精密樹脂粘土 アメリカンダイナーonウッドボード」である。ミニチュアフードの実力派「株式会社レインボー」の作品だ。

カプセルトイの開封というのは、もっとも楽しい瞬間。ぜひ一緒に体験していただきたい。最初に出てきたのは「ハム&ソーセージ」!

皿ではなくウッドボードというのがまたオシャレ! パーティーのごちそうみたいで、写真映えする盛りつけの代表格である。ボードは本物の木製で、1つ1つ色合いが違う。

「超精密樹脂粘土」とうたっているだけあって、わずか1cmほどのハムやソーセージやレタスが彩りよく盛りつけられている。プチトマトのヘタも1本1本、ピンと立っているぞ! これぞ超絶造形!!

ハムの内部が中心に向かって濃淡のあるピンク色なところや……


表面の水分が抜けてシワシワになっているところなど、ものすごくリアルである。アメリカンダイナーとはまた違うが、ハリー・ポッターの晩餐会シーンやジブリ飯を連想する。すごぉぉぉい!


続いて出てきたのが「ビッグバーガー」。こちらもウッドボードに料理を直接ドン、いかにもアメリカンな豪快な盛りつけである。

具材はレタスにベーコンにトマトにチーズだな。つまりBLT! 指先ほどの小ささなのに、何が挟まっているか、はっきりとわかる。

細切りシューストリングのフライドポテトが、よく揚がって美味しそう! オニオンリングつきだ。


次は「チーズの盛り合わせ」。ボードに何種類ものカット済みチーズがのせられている。


過去に旅したドイツ語圏では、夕食後のデザートに出されたチーズのカッティングボードに老若男女が殺到するのをよくみかけた。

知識がないので判別できないが、それぞれのチーズにモデルがあるはず。青カビのブルーチーズや、薄皮のカマンベールチーズかな? それぞれのチーズの質感の違いなど、細かいところまでよくできている。

もはや職人芸である。これがわずか300円で買えるとは、日本のおもちゃ業界は、いったいどうなっているんだ。

ここまでは大満足である。みているだけでお腹が空きそうなラインナップ。デスクに置いておいたりしたら気が狂う。

今回購入できたカプセルは4つなので、残り1つ。現在までのクオリティを考えると期待満々である。全5種類だから、もとよりコンプにはならないのだが、ダブらず出て欲しい! 

満を持して最後に登場したのが……


…………


…………


…………


…………これナニ?


真っ赤な楕円形のかたまりが4つ並んでいる。カツオのたたき? ビーフジャーキー? 色合いでいうとクジラ肉か馬刺しが近いような気がするが……巨大なサラミソーセージを割ったようにもみえる。

いやいやアメリカンダイナーがテーマのはずだから、細長く作りすぎた加熱前のハンバーグか? 肉汁のようにウッドボードに赤い塗料が染み広がっているのもちょっと生々しい……

パンフレットをみて判明した。これは「ビーフステーキ」だ……! 見本写真では外側はよく焼けた茶色、内部は赤みが残ったミディアムレアに塗り分けられている。

う~ん、惜しい! つけあわせのフライドポテトやプチトマトが精巧なだけに、余計にシュールである! どうしてこうなった。

製造はタイ。たぶん量産の過程で、原型から遠ざかっていってしまったんだな。返す返す惜しい!


・一期一会


矛盾しているようだが、これもカプセルトイのおもしろさ。


そもそもが200円、300円という低価格にどれだけの夢を詰め込めるかというアイディア商品であり、完売したら終了という一期一会の側面もある。どこの売り場で出会えるかも運次第。さらに、取り出すまで中身がわからないというギャンブル要素が加わっている。

同じ300円でもびっくりするくらい緻密な商品もあれば、「これで300円かぁ……」という稚拙な商品もある。まさに宝探しだ。そのぶん秀作に出会えたときの喜びもひとしお。


馬刺しも、ハムやチーズのクオリティがあまりに高いために目立っただけで、全体的な完成度は「すごい」のひと言。他社の類似商品に比べると、群を抜く出来栄えだ。買って損はないぞ。

こんなことがあるからガチャはやめられない。今度はどんな驚きを与えてくれるのか、次なる出会いが楽しみだ。


執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.

▼株式会社レインボー