昔から気になっていることがある。「プリンパン」とは、一体何なのだろうか? 名前は知っているし、見たことも食べたことがある。だが、その定義がわからない。
そこで私(佐藤)はプリンパンの実体を掴むこと決心した! 「プリンパン研究家」を自称し、今後調べ上げていきたいと思う。その第1歩として、東京・千歳烏山の「手づくりパンの木村屋」を紹介しよう。ここのプリンパンは歴史ある代物だった。
・プリンパンが見つからない!
プリンパンを取材するに当たって、私は自分なりのルールを設けた。
1.できるだけプリンが入っていること(味だけプリンは△)
2.形がプリンなら、プリンが入ってなくてもOK!
3.できるだけ個人店のモノを見つけるべし
4.大手製パンメーカーの商品は個性がないのでナシ
ということで、大前提としてパンにプリンを入れる。もしくはプリンを乗せたモノを見つけなければならない。味だけプリンはクリームパンではないのか? それでも形がプリンなら、まあ良いとするけど……。
探す決意をしたものの、コレがなかなか見つからない。どこにでもありそうな気がするけど、「ブリュレクリームパン」だとか「まるでプリンパン」だとか、プリンを装(よそお)ったクリームパンが巷に溢れている。直球ド真ん中のプリンパンを作って欲しいのにない! どこにもない!
さらに運の悪いことに、この企画を思いつくのが遅すぎた。実は北関東を中心に店舗を展開するスーパーベルクが2021年3月、期間限定でプリンパンのフェアをやっていたのである。
今回、お店ごとに趣向を凝らした“プリン”のパンをご用意してみました🍞🍞
お店によって #ぷりぷりプリンパン は違うのでいろんなパンに出会えますよ。3月末までの限定発売、なくなり次第終了ではありますが、色んなパン楽しんでくださいね。https://t.co/97YUQIimvc#余計な事まで pic.twitter.com/DfXvtgxcUk
— ベルク(Belc)🅱️ (@belc_jp) March 19, 2021
全8種ものプリンパンを、店舗ごとに販売していた。チャンス! と思い、足立新田店に行ってみたものの、「プリンパン? 3月で終わっちゃったんですよね~」と言われてしまった。なんてこった! 遅かったか……。
・飛び込み型プリンパン
捜索に苦戦しながら、ようやく最初に紹介するのにふさわしいお店を発見した。それが木村屋である。
このお店の創業は1964年というから、すでに半世紀の長きにわたってパンを作り続けている。店構えも店内の雰囲気も、そして品揃えも昭和を感じさせる温かいお店だ。私はここへ来て見つけた! パン屋を訪ね歩きついに最初の1個を見つけたぞ!! 木村屋のプリンパン(税込200円)だ。
ここの商品はパンの器にプリンがダイレクトにインサート(挿入)されている。いわゆる「飛び込み型」のプリンパンだ。これは見た目の通りに、ストレートにプリン感を楽しむことができる正直な商品といえるだろう。正直モノの飛び込み型ということなるかな、うん。食べるのが楽しみだ、ふふふ……。
プリンパンと自家製コールスローのサラダパン(税込200円)、それとカステラ生地の菓子パン(税込80円)を購入して帰った。お店の女将さんがオマケでうまい棒をくれたよ♪
・プリンとパンは相思相愛関係
さて、早速じっくりと見てみよう。
まず私はコレを前にして、自宅でスタンディングオベーションしてしまった。拍手だ! 拍手喝采を与えよう。こんがりと焼き目のついたパンの器の真ん中に、プリンを放り込んでいる。形だけのプリンパンではない、味だけのプリンパンではない。コレはプリンそのものだ。
巷にあふれる名前だけの「プリンパン」と違って、真正面から “プリン” している。どうやら使用しているのは「ぷっちんプリン」のようだ。世の中には数多くのプリン商品が存在しているが、この器に合うのは間違いなくぷっちんプリンだ。なぜなら、ぷっちんしたら、器にスッポリ収まるからね。つまるところ、ぷっちんプリンとこのパンは、相思相愛の関係にある。
この見事な商品はいつ頃から販売されているのか? 女将さんに尋ねると、かれこれ30年前から販売していたそうだ。1990年代、日本はバブル真っ盛り。そんな時代からプリンをパンに入れて売っていたとは。頭の下がる思いだ。
見よ、このプリンプリンとした様を。パンと一体になりながらも、このプリンプリンさを損なわずにいる。飛び込み型だからこそ、成せるワザだ。
半割にすると、プリンの下には生クリームがたっぷり。このクリームが緩衝材の役目をはたして、プリンを安定させているんだな。プリンプリンといくら揺さぶりをかけても、飛び出したりしない訳だ。
食べると、もっちりとしたパン生地の向こう側から、プリンの食感が伝わってくる。実にムダのない味の設計だ。パンもプリンもお互いを邪魔することなく、味を引き立て合っている。シンプルにしてベストなプリンパンと言えるだろう。
木村屋のプリンパン、味の総合評価は以下の通り!
■木村屋プリンパン(飛び込み型プリンパン)星5つで評価
プリン度 ☆☆☆☆☆
独創性 ☆☆☆☆
おいしさ ☆☆☆☆
この企画、初回にしてほぼ満点のプリンパンに出会ってしまった。今後はどんなプリンパンに出会うことができるだろうか? とても楽しみだ!
なお、プリンパンの情報をお待ちしております。「近所で見たよ!」「このお店にもあるよ」など、ご存じの方はお教えください。現在県境を越える移動の自粛が求められているので、他県には行けませんが、可能な範囲で訪問したいと思います。
・今回訪問した店舗の情報
店名 手づくりパンの木村屋
住所 東京都世田谷区粕谷3-30-14
時間 7:40~19:00 日祝8:00~19:00
定休日 火曜日、 第1・3水曜日
執筆:プリンパン研究家(駆け出し)佐藤英典
Photo:Rocketnews24.com