暗号、絵地図、ワナが仕掛けられた隠し扉などなど、「謎解き」や「宝探し」という言葉には無限のロマンがある。

まぁ、実際には盗掘だったり一方的な到達記念だったりで、大英博物館なんて「よその国の宝ばっかりじゃねーか」といいたくなるが、インディ・ジョーンズの冒険を見てワクワクしない人がいるだろうか。

映画やゲームの世界だけでなく、リアルに謎解きを楽しめるのが「宝探しイベント」だが、このコロナ禍では開催が難しくなっているようだ。そのぶん自宅でできる「おうちで宝探し」シリーズの売上が好調だという。


・タカラッシュ「おうちで宝探し」

普段は「リアル宝探し」を企画・実施している株式会社タカラッシュ。筆者は体験したことはないけれど、テーマパークやショッピングモールでよく行われている参加型コンテンツだな。

大規模イベント自粛のいま、自宅で体験できる「おうちで宝探し」キットを70種類以上も取りそろえ、かつ毎月新商品を発売。価格も800円程度からと手軽で、この1年間で売上が前年比716%アップ、1億円を突破したという。マジか。

公式オンラインショップには商品がずらっと並ぶが、『シティーハンター』『金田一少年の事件簿』『おそ松さん』といった人気アニメとのコラボアイテムもある。

筆者はまさにシティーハンターのドンピシャ世代! いまでも「Get Wild」を耳にした瞬間、気分が高揚して暗闇を走り抜けたくなる。なんでも吉祥寺が舞台のリアルイベント関連グッズで、「2次元コードでヒントを見れる謎解きなので初心者の方にもオススメ」だそう。

ステイホームのGWだし、ヒマつぶしにやってみるか!


・冴羽獠&槇村香編 『シティーハンターと謎の依頼人』税込880円

商品によって内容は変わると思うが、カードタイプのキットが届いた。美麗イラストのクリアファイルも付属! 使うものは届いたキットと、答え合わせのためのスマートフォン、筆記用具。

まずはストーリーを読んで背景を理解し、謎解きシートを使ってキーワードを探していくのだが……新宿駅の掲示板など、原作ファンならニヤリとする小ネタがたくさん!

しかし謎解きは、いきなり難しい。出題はほぼノーヒント! ごく短い問題文から、なにを意図しているのか読み取らないといけない。

筆者はクイズやパズルが好きな方で、脳トレやレイトンシリーズを何作もプレイしている。しかし、よくある「並び替え」「なぞなぞ」「点つなぎ」といった馴染みのあるパズルでなく、解き方がまったく想像できない。直感的な “ひらめき” が必要とみた。

さっぱり見当がつかず、さっそくヒントを見たくなる。スマホで2次元コードを読み込む、ただそれだけでいい……。甘い誘惑が襲ってくる。

スマホの普及で、なにが1番変わったかといえば「人々が短気になったこと」だと思うのだが、ちょっとでもモヤモヤすると「今すぐ」解決したくなってしまう。ネットサーフィン中も読み込みが少し遅れただけで別のページに移ってしまうとか、筆者も物事を待てなくなった。


苦しい……。「わからない」という中途半端な状態が苦しい。ヒントを見てすっきりしたい。


耐えろ……耐えるんだ、自分……! 800円が無駄になるぞ……!!


このままでは発狂しそうなので、第1問を飛ばして次に進む。各設問が独立していて、順不同なことに助けられた。

第2問以降はいわゆる論理パズルで、順を追って考えていけば必ず答えがわかるタイプ。時間はかかったが、行き詰まってストレスを感じることはなかった。

筆者はマルチタスク能力はいまいちだが、1つ1つ論理を積み上げていく直列思考は得意だ。そのぶん柔軟性に欠け、自由な発想がしにくいという大きな欠点がある。

だからノーヒントで “ひらめき” を求められるクイズやパズルが1番苦手! あと空間認知能力が壊滅的なので、展開図を想像したり、道順の記憶などがまるでダメ。

意を決して、例の第1問に戻る。とにかく書かれていることしか手がかりがない。すべてはカードの中にあるはずなのだ。

カードをよく見る。よ~~~~~く見る。なにか気づくことはないかと、目をこらして見る。これまでの人生で、こんなに注意深く1枚の紙を見たことはない。


なにが正解につながる情報で、なにが撹乱(かくらん)目的の情報なのか……


ああああああぁぁぁぁぁ、わかったぁぁぁぁぁ!


解けた! スマホに飛びつき、専用サイトで解答を入力する。正解ぃぃぃ!!


………………


………………


………………


……と思いきや、ここから先はご自身で確かめていただきたいのだが、これまでにかかったのと同じくらいの時間を、さらに費やすこととなった。気がついたら日が暮れていた。

これで難易度3とは……もっと難しい作品をチョイスしたら、いったい何時間かかるんだ。

もう1つ別の作品にもチャレンジしたのだが、とにかく「よく見て」「よく読んで」あとは書いたり切ったり折ったり区切ったり重ねたり透かしたり送られてきたものを再チェックしたり……もてる限りの知恵を総動員して取り組むしかない。

目に映るもの「すべてに意味がある」……筆者からいえるのは、それだけだ。


・キミも挑戦しないか

苦労した分、解けたときの快感はものすごい。「よっしゃぁ!」と興奮し、天にも昇るようなカタルシスを感じる。同社のアイテムにはリピーターも多いようで、会員登録するとクリア履歴を蓄積していけるらしい。

はじめこのシステムを知ったときは、みんなヒントを見たり、ネットで攻略情報を調べて簡単にポイントを貯めちゃうんじゃないの? と思ったが、よく考えたらそんなことはない。

この商品を買う人は、謎解きを愛していて、お金を出してでも難問に挑戦したいという人なのだから、自ら楽しみを失うようなことはしないのだ。

シティーハンターだけでも「冴羽獠編」「槇村香編」「海坊主編」など、まだエピソードがある。キミもトレジャーハンティングに挑戦してみないか?


参考リンク:株式会社タカラッシュ公式ストア
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.