それはあまりにも赤ベロベロだった。想定以上のベロベロ具合。ゆえに、「赤ベロベロ」というネーミングは何も間違っていないような気がするのだが、実物を食べれば食べるほど、こう思わずにはいられなかった。
初見の人間には注文のハードルが高すぎる、と。
もちろん、赤ベロベロが何かを知っている人にとっては大した問題ではない。しかし、知らない人間にとって、「赤ベロベロ」の字面から漂う雰囲気は不気味なこと この上ない。どこか爬虫類的というか、イジリー岡田さん的というか、ようは食欲が掻き立てられないと思うのだ。
そのため、実にモッタイナイことが起きる可能性がある。つまり、飲食店のメニューに「赤ベロベロしょっぱ漬け」を見つけても速攻でスルーしてしまう可能性だ。まぁ、無理もない。これほど不気味なネーミング。実態を知らない人は注文しようなんて思わないだろう……が!
実は赤ベロベロしょっぱ漬け、激ウマである。繰り返す、激ウマである! 何なら、これを嫌いという人に、私は今までの人生で会ったことがない。つまり、みんなが好きなヤツ。
じゃあ「赤ベロベロしょっぱ漬け」って何なのさ?
——そう思っている人のために、何かを発表したい。もし「もうちょっと考えたいから待って!」って人は、ここで一旦ストップ。下に答えが記載してあるから、見ても大丈夫な人だけ進んでくれ。
大丈夫だろうか? 大丈夫だということにして進めよう。赤ベロベロしょっぱ漬けとは……!
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マグロの漬け!
つまり、赤ベロベロとはマグロ!!
・デパートで見つけた「赤ベロベロ」
ちなみに、私が「赤ベロベロしょっぱ漬け」を知ったのはつい最近で、東京・日本橋の高島屋を訪れたときだった。たまたま行われていた催事(現在は終了)で『赤べろべろしょっぱ漬け 春のばらちらし』が売られており、赤ベロベロという名前だけで購入した次第。
先に述べたように激ウマだったのだが、それと同時に記憶に残ったのが赤ベロベロしょっぱ漬けにまつわるエピソードである。どういうことかというと、店員さんに聞いたのだ。「なぜマグロの漬けのことを『赤ベロベロしょっぱ漬け』と言うんですか?」と。
すると返ってきた答えが……
「西郷隆盛がマグロの漬けを『赤ベロベロしょっぱ漬け』と呼んで好んでいたからのようですよ」
いや、エピソードが壮大だな。まさかあの西郷さんが絡んでいるとは想定外であったが、そう言われてみれば西郷さんなら “赤ベロベロ” って呼びそう……と思うのは私だけだろうか。
なお、家に帰ってから「赤ベロベロしょっぱ漬け」でググると、西郷さんの故郷・鹿児島では「赤ベロベロしょっぱ漬け」としてマグロの漬けを販売しているお店があるもよう。
赤ベロベロという呼び方が鹿児島でどこまでメジャーかは分からないが、とにかく今も残っているのは事実のようだ。それだけ鹿児島で西郷さんの影響力が強い……ということなのだろうか。
あるいは、「赤ベロベロ」という気取りゼロの呼び方が、鹿児島の人の好みに合ったのか。あるいは、ベロベロ舐めたくなるほどに激ウマだから、「赤ベロベロ」の方が分かりやすくていいとなったのだろうか。
はっきりしたことは分からないが、最後の説が正しいと仮定するならば、こう言っても差し支えないだろう。「赤ベロベロしょっぱ漬け」のベロベロ舐めたくなる感は異常である、と。
執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24./ Wikimedia Commons
▼どうよ、このベロベロ具合。