焼肉の食べ放題レストランといえば「牛角」「焼肉きんぐ」「安楽亭」といったところがメジャーかと思うが、小規模ながら個性的なフランチャイズもまだまだある。全国に40店舗ちょっと、東京にはまだ3店舗というちょっとレアな店をレポートしたい。
その名も「肉匠坂井」。国産牛の食べ放題を実施し、“食べ放題の焼肉は質が悪い” という従来のイメージの払拭にチャレンジしているという。それでいてコースは税抜2580円からと、同業他社に比べても高くない! これは気になる!!
・「肉匠坂井」
実は同店は東海地方で創業30年を迎える「焼肉屋さかい」グループで、スケールメリットを活かして「かたまり肉」を仕入れ。職人が手切りをして提供しているという。テーブルに据えられるのは、こだわりの大きな七輪。
コースは税抜2580円・2980円・3980円の3ランク。価格によって選べる品が増減するのは他店と同様。今回はもっともリーズナブルな「75品セレクトコース」にしてみる。品数控えめのサービスコースといった位置づけか。
なお、どのコースも食べ放題時間は120分(ラストオーダー90分)! 長い!!
いくら食べても客単価の変わらない食べ放題。普通は時間を区切って早く回転させることが大事だと思うが、ゆっくり味わって食べて欲しいのだという。
注文はタブレット端末によるテーブルオーダー式。最近では一般的なシステムだが、何度も店員さんを呼ばなくて済んでとてもいい。
ではさっそく国産牛を。今回のコースで選べるのは「焼きしゃぶカルビ」「切り落としカルビ(たれ)」「切り落としカルビ(塩だれ)」の3種。
パワフルな炭火で一気に焼け、ときに炎が上がることもある。「焼きしゃぶカルビ」なんて一瞬で炭になるから気をつけよう。
肉は薄手だが、味がしっかりあって美味しい! 軟らかく、変なスジもない。実は筆者はブランド和牛のとろっとした脂がちょっと苦手なのだが、同店の国産牛は適度な脂で、くどいところもない。
サシが美しい。これが食べ放題とは、なかなかにすごいのではないだろうか。けちくさい話で恐縮だが、「元を取ろう」と思うなら国産牛3種だけを延々リピート注文するべきだろう。
ところが、である。
ラストオーダーまで味わい尽くした結果、「やっぱり国産牛だね~、ボク5皿も食べちゃったよ~」とはならなかった。というのも、輸入肉のサブメニューや、サイドメニューも十分に旨かったのである。
・サイドメニューがすごい
国産牛はたしかに旨い。しかし正直にいうと、豊富なサイドメニューの方にむしろインパクトがあったことをお伝えせねばならない。
ひとつひとつのメニューが、食べ放題とは思えないクオリティなのである。盛りつけも美しく、食器も軽く扱いやすい素材ながら高級感がある。
ガリバタ醤油であえた鶏モモなんて、これだけどんぶり飯いける、というくらい美味しかった。
さらに衝撃的に旨かったのが「やわらかイカ焼き」である。このとき筆者はソフトドリンク飲み放題(税込550円)をつけていた。食べ放題で海鮮があることも珍しいが、キャンプのような炭火 + イカ + コーラ = 最高! である。
さっと炭火であぶったイカが美味しくないわけがない! 「元を取る」ことなど忘れて、思わずおかわりしてしまった。
もちろん豚や鶏やホルモンもあるぞ。イチオシは「北海道産四元豚 夢の大地 肩ロース」とみた。ぜいたくに4品種をかけ合わせた豚だ。
壺漬け焼肉は、名古屋風なのだろうか、ちょっと濃いと思うくらい甘塩っぱい味が染み込んでいる。
「肉寿司」はちょっと珍しいのでは? しゃり玉をもらえるので、焼いた肉をのせて食べる。
「ヘルシーわかめスープ」。失礼ながらどこで食べても同じような味になる1品……と思いきや意外な美味しさ! ダシがいいのだろうか?
ご飯ものコーナーから「ビビンバ」。デフォルトだとあっさり味だったので、キムチを追加オーダーして混ぜてみたらぐっと美味しくなった。
自由にアレンジして新たな味を生み出すのが食べ放題の醍醐味! もうワンランク上のコースにすると「石焼ビビンバ」にグレードアップするぞ。
デザートは1人につき1品選べる。これもよくあるシステム……と思っていたら、具だくさんのパフェだったり、ケーキにはアイスがついていたり、カフェの1品として成立しそう! 決して「おまけ」ではない、ガチなスイーツだった。
ちなみに「スタンダードコース(税抜2980円)」になると、選べる国産牛が大幅に増えるほか、チーズフォンデュや牛タンキーマカレー、石焼ビビンバ、冷麺と「食べきれないんじゃないの!?」という充実ぶりになる。
たぶん1度の来店じゃ、気になるメニューをすべて試せないぞ。
・総括
2時間、食べ尽くした。もう満腹で動けないが、総括を書いてみたい。
「安かろう悪かろう」という言葉があるが、食べ放題の店で出てくる料理というのは、やはり粗悪品のイメージがある。みんなが抱いている「まぁ安いから、この程度か」に挑戦するコンセプトは素晴らしい。
筆者には肉質などを評価できる知識も舌もないが、もっともリーズナブルなコースでも焼肉は普通に美味しかった。驚くほど美味しいというほどではないけれど、食べ放題として考えるとたしかにすごい。
そしてサイドメニューはかなり凝っていて美味しかった。繰り返す。サイドメニューは食べ放題にありがちな手抜きもなく、かなり美味しい!
難点は混雑か。ゆっくり過ごして欲しいという同店のこだわりもあり、余裕をもって作られたテーブルや、ほぼ無煙の空調設備、半個室風や大人数用の席、そして120分制と、客が長居をする要素が揃っている。筆者の周りのテーブルも、ほとんど客が入れ替わらなかった。
ゆえに混雑していると待ち時間はかなりのもので、ピークタイムには予約が必須かと思われた。少なくとも「さっと食べて、さっと出てくる」店ではない。
今のところ店舗は愛知県を中心に展開。徐々に関東、関西地方に拡大している。もし近くに店舗があって、食べ放題の安っぽさに閉口した経験が過去にあるなら、ぜひ行ってみて欲しい。一見の価値ありだ!
参考リンク:肉匠坂井
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
▼焼きしゃぶカルビはすぐに焦げるので注意
▼切り落としカルビ(たれ)
▼焼肉寿司(コースによってはローストビーフや生ハムもあり)
▼エリンギホイル焼き
▼ビビンバ
▼あっさりクッパは優しいお味
▼最後のちゅるっと、ひと口さっぱりそうめん