姉って想像してるような良いもんじゃないよ。まあ、普通だよ。姉のいる奴らはいつもそう言う。分かってない。君らは全ッ然分かってない。持たざる者からすると、その発言がすでに羨ましいことを!
だからと言って「姉めっちゃ良いよ」と言われた日には、嫉妬のあまり殴ってしまいそうだ。姉欲しィィィイイイ!! そこで、家族代行サービスで姉をレンタルしてみたぞ。
・持てる者たち
生まれてこの方姉がいた試しがない私(中澤)。いるのは兄だけで、しかも筋肉ムキムキだ。なんでなん? 神様不公平ちゃう? そんな私がいつも嫉妬に狂ってしまうのが、ロケットニュース24の創始者Yoshioと編集長のGO羽鳥が話す姉弟エピソードだ。
GO羽鳥「まずはパシリからだよね。姉ちゃんがゲームしてるの横で見てる時とかにお菓子買ってきて的な」
Yoshio「姉ちゃんのアイス食べちゃって激怒されるのは日常茶飯事だった」
──ご褒美か(血の涙)。私にとって、これ以上話を聞くのは拷問でしかない。「別に普通」とかぬかす貴様らに分かるか? マッチョな兄しかいない者の気持ちが。バッキバキやぞ。
嫉妬に狂いすぎて、創始者と編集長を殴ってしまいそうだ。しかし、ここで殴ったらおそらくクビになるので、握り拳を開き怒りをキーボードに叩きつけた。連絡したのは代行専門会社のファミリーロマンスである。助けてー!
・ファミリーロマンスとは
ファミリーロマンスは、ちょっと変わった人材派遣サービス。「リア充アピール代行」から「レンタル彼女・彼氏」まで、様々なシーンに合わせてキャラを演じるスタッフを派遣してくれる会社だ。
サービスの中には、「家族代行」もあり、以前、私はこれで妹をレンタルしている。もちろん、姉のレンタルもあるので、今回連絡を取ってみたわけだ。
レンタルするまでの手順はサイトの「お取引の流れ」をご参照いただければと思うが、2回使っての個人的な感想を述べさせてもらうと、メールベースでかなりしっかり希望やシチュエーションの打ち合わせを行うため、あまり的外れな感じになることもないのではないかと思う。当日来るスタッフの顔写真も送られてくるし。
もちろん、前提としているのは家族が必要なシーンの代行なので、1対1で部屋などの限られた空間に呼ぶのはケースによってはNGだ。が、身分証明書の提出などにより可能な場合もあるという。
・姉と出会う
今回は、打ち合わせの結果、前回に引き続きご協力いただいて特別に私の部屋へ来てもらえることとなった。遥かなる姉。これまで何度夢見たことか。事前に打ち合わせた日時に待ち合わせ場所に行ってみると……
姉がいた!
彼女の名前はあかりさん。驚いたのは、遠目からでもなんとなく「あの人じゃないかなー」というのが分かったことだ。と言っても人目を引くほど派手という意味ではない。街に溶け込みつつも絶妙に姉オーラが出ているのである。
そこで伺ってみたところ、リアルの家族構成でも姉なのだとか。ガチのお姉ちゃんキターーーーー! しかも、下は弟だというから、これ以上私の希望に沿った人物はいないだろう。
・これが姉……
家に向かって歩きながら、どういう雰囲気の姉がいいかを聞かれる。しかし、姉がいない私は、そもそも姉にどんなパターンがあるのか分からない。結局、シチュエーションや「こういうことやりたい」的なのを改めて話すだけになったのだが、「OK! 分かりました」とあかりさん。なんて頼りがいがあるんだ。これが姉……。
とは言え、この段階ではまだ「私の姉」とは思えない。私は人見知りなので、初対面の人にはどうしても敬語を使ってしまうのだが、家族である姉に敬語は使わないだろう。
そこで家につくと、勇気を出してタメ口に切り替えてみた。すると、自然にタメ口で答えてくれるあかりさん。この包容力。これが姉……。
・あるあるを再現
少しコタツでダラダラしていたら、なんとなく慣れてきた。今ならできるかもしれない……憧れの姉あるあるが! というわけで、まずはあかり姉ちゃんのアイスを用意した。
そして、自分で食べる。
まあ、茶番になるだろうな。なんなら打ち合わせしたし。あと5秒くらいであかり姉ちゃんが帰ってくるはずだ。5、4、3、2、1、ほらドアが開いた。冷蔵庫が開く音が聞こえる。演技ってこんな感じかー。正直、ちょっと恥ずかしいな。とか思っていたら……
めっちゃ怒られた。
そして、パシらされた。
激怒までしか打ち合わせしていなかったが、あかり姉ちゃんの勢いに勝手にパシる体。続いて、ゲームを一緒にプレイするシチュエーションを再現してみたところ……
やっぱりパシらされた。
GO羽鳥の言っていた「まずはパシりから」という言葉の意味が分かったような気がする。姉の機嫌が良くとも悪くとも、とりあえず弟はパシらされるもののようだ。とは言え、特に嫌な感じはなく、パシリを命じられると体が自動的に動く。このリーダーシップ。これが……姉!
ちなみに、あかり姉ちゃんによると、私は弟っぽいのだそうだ。支配しやすかったのかもしれない。
そんなわけで、「あるある」再現については、まあガチに近づけたかどうかよくわからないのだが、結果的に距離は近づいたような気がする。時間が余ったので、私がパシって買ってきた酒とお菓子を食べながらコタツでダラダラしたのだが、他愛のない会話をしている時が最も楽しかった。この日常感。これが姉。
・姉は奇跡
ぶっちゃけ、自分的に演技してる気持ちのようなものは抜けきれないだろうと思っていたが、最後にはかなり自然に接することができるようになった気がする。もちろん、双方の努力次第なところもあるが、少なくとも私は姉を感じることができた。
レンタルを終えた今、私は思う。姉は想像以上に最高だったと。全ての姉がいる弟どもよ目を覚ませ。姉は普通ではない奇跡だ! 奇跡を一番近くで目の当たりにしているのになんだ「普通」って!! 貴様らの姉をマッチョの兄にしてやろうかこんちくしょー! 分かったなら、本日2020年12月6日姉の日、お姉ちゃんを崇め奉れ!!
取材協力:ファミリーロマンス
関連リンク:人間レンタル屋、ファミリーロマンス社長・石井裕一Twitter
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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