劇場版「無限列車編」が爆発的大ヒットを飛ばす鬼滅の刃(きめつのやいば)。およそ1年前から鬼滅の刃はとんでもない勢いで流行の兆しを見せていたが、いよいよそれが日本全国……いや、世界中に広がりつつあるのだろう。何かと暗い話題が多い2020年、鬼滅の刃だけは明るい話題を振りまいている。
さて、映画の大ヒットに伴い私(P.K.サンジュン)も鬼滅の刃に夢中! ……と言いたいところだが、実際はそうでもない。映画を見に行く予定もなければ、アニメを見返す気もないのだが、それでもコミック、つまり物語の行方自体は非常に気になっている。というわけで最新刊、22巻を読んでみたので所感を述べていきたい。
・ラスボス戦も佳境
私のような42(しじゅうに)のおっさんすら続きが気になるのだから、やはり「鬼滅の刃」は大した作品だと心から思う。なにせ私が少年ジャンプに夢中だったのは今から25年以上前のこと。あのワンピースですら私の心を震わせることは、ただの1度もできなかった(4巻くらいで離脱しました)。
そんな薄汚れた心のおっさんでも、鬼滅の刃のテンポの良さにはつい引き込まれてしまう。詳細については以前の記事をご覧いただきたいが、私的に鬼滅の刃の魅力は「展開の早さ」と「重要キャラでも容赦なく殺すこと」にあると感じている。そして最新刊22巻は、いよいよ大ボス「無惨」との決戦だ。
で、22巻を読みえ終えてすぐに思ったことは「伊黒に謝りたい」ということ。そう、私はかねてから蛇柱の伊黒小芭内(いぐろ おばない)をナメていた。というか、柱の中で伊黒だけは勝手に雑魚キャラ扱いしていた。ただもしかしたら私のような考えだった人は意外と多いのではないだろうか?
・伊黒に謝りたい
というのも、総勢9人が登場する柱の中で、当初から伊黒だけが格別に弱そうに見えたからである。ビジュアルやキャラの性格ではなく単純に「蛇柱(へびばしら)」が私的にはどうしても強そうに思えなかった。だって……蛇柱て。
柱は達人中の達人であり、他の柱は「水柱」「炎柱」「風柱」「岩柱」「霞柱」……などなど、強さと壮大さを感じさせるものばかり。中には「恋柱」「音柱」「蟲柱」など、やや評価に戸惑うものもあったが、蛇柱の弱キャラ感は私の中でズバ抜けていた。端的に「蛇柱て(笑)」と思っていたことを告白しておく。
……が、22巻の伊黒はカッコ良かった。22巻に関していえば、柱のMVPは間違いなく伊黒であろう。初めて伊黒の過去が明かされたことも大きく、これまでは感情移入しにくかった伊黒のキャラ設定がようやく理解できた。「伊黒だけは大した活躍もせずに死ぬんでしょ。蛇柱て(笑)」と思っていたことを心から謝罪したい。伊黒さん、本当にすみませんでした。
・ジャンプっぽくないラスボス戦
さらに22巻を読んで感心したのは、主人公を強くしすぎない描き方である。戦線に復帰した炭治郎は確かに覚醒しかけているが、それでも無惨には遠く及ばない。その無惨を逆に弱らせることで接戦に持ち込む手法は、かつての少年ジャンプ作品らしからぬ描き方であろう。
例えばドラゴンボールでフリーザが登場した際、悟空はスーパーサイヤ人になることでこれまでとは比にならない強さを手に入れた。ジョジョも北斗の拳もターちゃんも、基本的には主人公が純粋に大ボスの強さを上回ったうえで勝利している。
……が、鬼滅の刃では文字通り “全員がかり” で無惨を倒そうとしている。「友情・努力・勝利」の合言葉は変わらぬ少年ジャンプだが、無惨との戦いはかつての大ボス戦とは違い「令和的というか現代的だなぁ」と感じた次第だ。とても感心しました。
聞くところによると、次巻となる第23巻はいよいよ最終巻になるそうだが、本当にあと1巻で無惨を倒しきれるのだろうか? だって、エンディングもあるんでしょ? 結局のところおっさんは、鬼滅の刃22巻を熟読してしまったことをお伝えしておく。最後にもう1度、伊黒さん本当にすみませんでした──。
参考リンク:鬼滅の刃公式ポータルサイト
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.