高知と言えばカツオが有名だが、高知で美味しいのはそれだけではない。キンメダイやウツボだって絶品だし、全般的に海産物のバリエーションが豊富。なので、県外の民である私にとっては、現地の居酒屋に入ってメニューを眺めているだけで楽しい。「これは一体何?」と思うようなものが少なくないからだ。

今回取り上げる「イヌゴロシ」なんて、まさにそう。居酒屋のメニューに書かれているのを初めて見た身としては、あまりにも物騒なものに思えた。だって、イヌゴロシ。ドッグキラーですから。

といっても、当然ながら「イヌゴロシ」は犬の肉ではないし、犬を虐待している人間の肉でもない。れっきとした(?)海産物である。そして、その魚自体は多くの人が口にしたことがあるかと思う。では一体何なのか?

考えても分かるものではないから、手っ取り早く以下で答えを公開してしまおう。私が高知の居酒屋で「イヌゴロシ1つ」と言ったら、出てきたのは……



デン!


これだ。


お店の人によると、「マグロの尾びれ」らしく、イヌゴロシは「室戸(高知県の南東部)の方言」とのこと。そして調べてみると、正確にはマグロの尾びれの付け根あたりの部位で、名前の由来には「美味しすぎて犬が死ぬほど食べるから」という説もあるそうだ。ちなみに、マグロ以外にカツオのイヌゴロシもあるようだが、マグロバージョンの方がメジャーなもよう。

で、味は一見コリコリ系かと思いきや、そうでもない。私が食べたイヌゴロシ(マグロ)に限って言うと、歯がスーッと入っていく。食感だけなら、イカの刺し身に近いだろうか。それも肉厚のイカだ。モンゴウイカにもう少し弾力を加えた感じ。 

……というのが率直な印象だったのだが、味自体はイカとまったく違う。イヌゴロシはイカに比べて無味。いかつい名前の割に、味の主張が控え目だ。そもそも味を楽しむというより、ねっとりした食感を楽しむのが正解な気がする。


それにしても、たしかに美味い。1度食べ始めると、あっという間に無くなってしまった。イヌゴロシの名は伊達ではない。高知県を訪れる人は是非! ……と言いたいところだが、高知県の居酒屋に行けばどこでもイヌゴロシが用意されている訳ではない。

せっかくお店に行って無かったらアレなので、どうしても食べたい方は事前にググった方がいい。もしくは、行く予定の店に電話して「イヌゴロシあります?」と聞いておいた方がスムーズだろう。ただし、イヌゴロシがメジャーではない地域から電話をかける場合(ほとんどそうだろうが)、周囲をギョッとさせないようお気をつけて。

Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.