2020年9月28日、東京ディズニーランドに待望の新アトラクション「美女と野獣 魔法のものがたり」がオープンした。これはかつてゴーカートがあった場所に新設された「美女と野獣」がテーマの新エリアに属するもので、映画公開からおよそ30年の時を経てお披露目となったものだ。
この一報に喜びを爆発させていたのが、ディズニーを愛しディズニーに愛された男、“ディズニーマニア” こと当サイトの「田代大一朗」である。ところが実際に新アトラクションに乗車し終えた田代は3度こう言った「ガッカリしました」と──。
・暴走寸前
ウォルト・ディズニーのことを親しげに「ウォルト」と呼び、何か困ったことがあると「ミッキーならどうするか?」と考える田代は、疑いようのないディズニーマニアである。当初、田代のウキウキは異常なほどで、同行した私(P.K.サンジュン)が軽く引くレベルであった。
というのも、田代でさえも新型コロナウィルスの影響でしばらくは東京ディズニーランドに足を運んでいないようで、いよいよ禁断症状が出かかっていたらしい。そこに「新アトラクション」が重なり、田代はかつてないほどムラムラした状態でこの日を迎えていたのだ。
「いやー、ついにこの日が来ましたね、サンジュンさん! 僕はワクワクして一睡もできませんでしたよ!!」
──僕は普通に寝ましたけど……。
「本来なら4月にオープンするハズだったのに、およそ半年間延期されてしまいましたからね。ようやくこの日を迎えられたウォルトやディズニーの関係者さんたち、そしてファンの気持ちを考えると、僕は……僕は……!」
──え、もう泣くんですか?
「しかもですよ? 美女と野獣はディズニー史に残る名作ですが、映画公開は約30年前です。これだけの時間が経っている中で、ファンの予想を超えるアトラクションになっているのでしょうか? 期待と不安が僕の中で混ざり合って……でも僕はディズニーを信じています! サンジュンさんもそうですよね!?」
──田代さん、とりあえず1回落ち着きましょう。
会話は噛み合わないものの、田代の並々ならぬ情熱だけはビシバシと伝わってきた。普段が100だとすると、この日の田代のパワーは300以上あったハズ。「やべえことになりそうだ」──。ウッキウキの田代の様子を目にした私はそう思わずにいられなかった。
・ベイマックスへGO!
さて、まず到着したのは「美女と野獣」……ではなく、こちらも新アトラクション「ベイマックスのハッピーライド」である。お分かりの通り、映画「ベイマックス」をテーマにしたアトラクションで、実は同作のアトラクションは東京ディズニーランドが世界で初だという。
──ベイマックス、1回だけ観たことあります。たしか、日本っぽい都市が舞台なんですよね?
「よくご存じで! そうなんです、ベイマックスは架空都市 “サンフランソウキョウ” が舞台なんですが、日本文化が随所に取り入れられています。そういう意味では東京ディズニーランドにピッタリのアトラクションと言えるでしょう」
「ベイマックスのハッピーライド」は2人乗りのアトラクションである。乗車を待っている間も田代はノリノリで、キャストさんと同じように全身でリズムを取っているではないか。やだ、ちょっと恥ずかしいんですけど……! 当然、田代に私の気持ちは1ミリも伝わっていない。
で、実際に乗ってみたところコレがなかなかスゴイ!! イメージ的には「コーヒーカップ」が近いが、その動きは全くもって予測不可能。一言で表現するならば「コーヒーカップの究極進化系」である。キャーキャー言いながら乗車し終え、田代に感想を求めようとしたところ……
スタンディングオベーションしてた。
──ちょちょ、田代さん! みんな見てますから……!!
「ブラボー! ブラボー!! ベイマックスのハッピーライド、本当にブラボーーーッッ!!」
──わ、わかりましたから……。
「アトラクションの動きも素晴らしければ、僕らを心から歓迎してくれているキャストさんたちも素晴らしい! ベイマックスのハッピーライドにどれだけの人の思いやりが詰め込まれているかわかりますか? 設計した人、工事に携わった人、そして映画ベイマックスを制作した人たち……その全員がブラボーですッ!! ブラボー!」
──というか、1人スタンディングオベーション初めて見ました。
田代の行動には引いたが、ベイマックスのハッピーライド自体は本当に素晴らしかった。田代は「世界中のみんなに乗ってもらいたいですね!」と話していたが、確かに老若男女が楽しめるアトラクションであろう。ズバリ、人気アトラクションになる予感大である。
本命の「美女と野獣」に辿り着く前に、早くもスパークしまくるディズニーマニア。だがしかし、この後ディズニーマニアは3度に渡り「ガッカリしました」と口にした──。ディズニーマニアがガッカリした衝撃の理由とは? 続きは2ページ目へ急げ!
参考リンク:東京ディズニーリゾート
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
ディズニーマニア、新アトラクション「美女と野獣」で3回ガッカリしてしまう(2ページ目)
・とんでもない再現度
ベイマックスハッピーライドを堪能し、早くもテンションMAXのディズニーマニア。「このまま美女と野獣エリアに突入したら血管でも切れるんじゃないか……?」私がそう思ったのも無理はあるまい。田代が倒れるのが先か、それとも私がぶっ壊れるのが先か? ディズニーマニアの熱量は本気でエゲツない。
さて、美女と野獣のエリアは、当然のように映画「美女と野獣」の世界観が高いレベルで再現されている。アトラクション自体は現在のところ「魔法のものがたり」の1つだけだが、レストランやおみやげショップ、さらには広場・噴水・トイレに至るまで、その全てが「美女と野獣」の世界である。
──最近、娘と一緒に「美女と野獣」観ましたよ。ガストン、本当に悪いヤツですよね。アラジンの敵役の “ジャファー” とかと違って、人間として1番悪いというか、小悪党の超大物というか……。
「サンジュンさん、僕は感動しました。そうなんです、ガストンは人間の醜悪さを表現した悪役だと思います。一口に悪と言っても、ディズニーには様々な種類の悪がいるんですよ。まさかそれを理解しているなんて……!」
──いやいや、映画を観れば普通にわかるでしょ。
「だったら話は早い。作中、ガストンは街のヒーローとして幅を利かせていました。レストランはガストンたちが たむろしていた酒場がイメージされていて、広場にはガストンの噴水まであります。城のエリアに入るまでは、あえて野獣の気配を感じさせない造りが心憎いですね」
──確かに。
「ガストンは嫌なヤツですが、映画の世界観を忠実に再現するためにはガストンを中心に据える必要があったのでしょう。僕もガストンの人間性はどうかと思いますが、ガストンの噴水の前に立つとつい同じポーズを決めたくなるから不思議ですよね」
──田代さん、メッチャ弱そうですね。
そしていよいよ本日のメインイベント「美女と野獣 魔法のものがたり」の登場である。アトラクションのある野獣の住む城へと足を進める田代。はやる気持ちを抑え、1歩1歩お城へと歩を進めた先にあったのは……
ヒャッハーーーー!
それはまさに城。規模的にはシンデレラ城ほどではないにせよ、その存在感と忠実な再現度はディズニーランドの新ランドマークとなるに違いない。アトラクションうんぬんの前に、その外観だけでも一見の価値があるハズだ。
そして中身のアトラクション自体はさらにスゴイ! 外観と同じくらい精巧な城内を進んで行くと、まずは団体で鑑賞するプロローグ的なショーが始まる。イメージとしては「ホーンテッドマンション」の導入部分を想像してもらうと近い。
そのショーが終わってからさらに城内を進むと、ようやくアトラクションのティーカップが出現する。残念ながらネタバレになってしまうのでこの先の詳細については申し上げられないが、私は素直に感動した。スゴイと思った。予測を遥かに超えていた。
・ディズニーマニア、ガッカリする
私がここまで感動したのだ、田代は “感動死” していても不思議ではない。これはとんでもないマシンガントークが始まるぞ……と思いきや、田代が一言たりとも発しないではないか。あまりに長い沈黙に耐え切れず、私から田代に声をかけてみることにした。
──いやー、良かったですね。素晴らしかった。
「……」
──何て言えばいいのかな~? 美女と野獣のアトラクションに乗ったというよりは、美女と野獣の世界に入ったって感じがしましたね。いやー、なかなかこういう経験はできないですよ。
「…………」
──あれ、田代さん?
「……サンジュンさん。僕はガッカリしているんです」
──え? ガッカリ?
「サンジュンさんは魔法ってあると思いますか?」
──魔法……ですか。
「これまで僕は魔法はあると思っていました。そしてこのアトラクションに乗って、魔法はあると確信しました」
──はい……。
「本当に魔法はあったんです。〇〇のシーン(ネタバレになるから内緒)で、素直にそして心の底から “あ、魔法ってあるんだ” と思ったんです。あの瞬間の感動を僕は一生忘れません」
──確かによかったですね。
「でも、僕はあのシーンを見るまで “魔法はあるんだ” と、どこか無理に信じようとしていたのかもしれません。口では魔法はあると周りの人に言っておきながら、あのシーンを見るまで魔法の存在を信じ切れていなかった自分に心の底からガッカリしています」
──えええ……。
「魔法の根底にあるのは “思いやり” です。このアトラクションに携わった全ての人たちの思いやりが僕に魔法をかけてくれたんです。僕はこれほどまでに誰かのことを思いやりながら生きてきたのでしょうか? なんて僕はダメな人間なんだ……!」
──ちょちょちょ、田代さん?
「さらに言えば、今日だって僕だけがこんなに感動していいのでしょうか? コロナのせいでディズニーランドに行きたくても行けない人が大勢いるのに、仕事とはいえ僕だけがこんなに楽しんでしまうなんて……! 自分の浅ましさにはガッカリです!! 僕はガストンより最低な人間だ……!」
──そ、それはいいんじゃないでしょうか……?
「もう1つガッカリしていることがあります。この感動を言葉でどう表現していいのかわからない……! もしサンジュンさんが声をかけてくれなかったら、僕はこのまま家に帰っていたハズです……」
──それ本当に引くヤツなのでやめてください。
「情報をお届けするメディアの人間でありながら、最上級の感動……魔法は本当に存在するんだと上手くお伝えできないなんて……!! 自分の無能さにはガッカリです! そしてサンジュンさんの “美女と野獣の世界の中に入った感じ” という言葉にハッとしました!! だからサンジュンさんッッ!!!!」
──は、はい!
「サンジュンさんこそ真のディズニーマニアですッッ!!!!」
──全然違います。
「そして最後に1つだけ言わせてください!」
──ど、どうぞ。
「ディズニー、ありがとう」
──なんだそれ。
というわけで「美女と野獣 魔法のものがたり」に乗ったディズニーマニア田代は「魔法を信じ切れていなかった自分にガッカリ」「誰よりもディズニーを楽しんでいた自分の浅ましさにガッカリ」「感動を言葉にできない自分にガッカリ」と、地団太を踏みながら3回ガッカリしていた。率直に、私には意味がわかりません。
・魔法がかかるかもしれないアトラクション
とはいえ、田代の言うように「美女と野獣 魔法のものがたり」には、魔法の存在を信じたくなるほどの感動があることはお伝えしておきたい。魔法の有無やその正体は置いておいて、魔法がかかるかもしれないアトラクション、それが「美女と野獣 魔法のものがたり」だ。
おそらく「美女と野獣 魔法のものがたり」は噂が噂を呼び、とんでもない超人気アトラクションになるハズ。それでも1度は「美女と野獣 魔法のものがたり」を体験して欲しい。魔法がきっとあなたを待っている──。
参考リンク:東京ディズニーリゾート
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
▼深々と一礼する田代。
▼割と本気でバグったのかと思いました。