また増税だよ! ここ数年で何度目なの? 「あの頃、エコーは1箱150円だった……」って何回振り返ったと思ってんんだよっ!! ちょっとずつ上げないで一気に1000円とかにしてくれよ! そうしたら踏ん切りがつくのに、少しずつ少しずつ上げていくから、禁煙を決断できないじゃないか、チキショー!
……2020年10月のたばこ増税を前に、もはやイラつくことさえ虚しく感じる今日この頃。喫煙者の皆さん、いかがお過ごしでしょうか? 私(佐藤)もひとりの喫煙者として、「またか……」と思う気持ちを抱えている。
そんな状況で、とあるたばこ屋のオヤジさんに出会った。彼の考え方を聞いたら、「そうか! そう思えばいいのか!! なるほど!」となったので喫煙者のみんなにも紹介したい。
・愛嬌のあるオヤジさん
増税前に、私はたばこをカートン買い(箱買い)しない。なぜなら、事前にたばこを溜め込んでも、値上げの現実からは逃れられないからだ。手持ちが切れたら、結局一緒。それならジタバタせずに値上がりしたたばこを買ってやろうじゃないか! いつもそんな心持ちで増税前の数日を過ごしている。
10月の増税を目前に控えたある日、あまり行くことのない界隈のたばこ屋の前で足を止めた。そこに灰皿が設置してあったからだ。1本吸い終わって、灰皿を借りたお礼の気持ちで愛飲している「マールボロ アイコスヒートスティック スムースレギュラー」を2箱買うことにした。現在520円、これが10月1日から550円になってしまう。
薬屋を兼ねたたばこ屋さんで、店の半分は薬、もう半分はたばこが棚を占めている。どこの街にもある小さなお店だ。すみません! と呼ぶと、小柄な白髪の店主が「はいはい!」と元気な声で出てきた。親しみを込めて「オヤジさん」と呼ばせて頂くとする。
「アイコスのスムースレギュラーを2つください」
そう言うと、オヤジさんは「はいはい、どれだけっけなあ? アイコスはみんな一緒だからわかんねえや(笑)」と言いながら、棚をゴソゴソと探り始めた。顔に刻まれたシワの深さから、愛嬌のある人であることがわかる。二ッと微笑むと頬がモリ! と浮かび上がる。一瞬で好感を持った。
「これね? はいはい、いくらだっけ? 540円? 520円?」
品数が多くて値段もバラバラ。おまけにまた値上げで、せっかく覚えた銘柄と価格の組み合わせを、また覚え直さないといけない。たばこ屋さんもコンビニもスーパーも、みんな大変だ。
「2箱で1040円ですね。ちょうどありますよ。はい、1000円と40円」
レジの受け皿にお金を置くと、オヤジさんはスッと1枚のチラシらしきものを差し出した。そこにはこうある。
「~9/28・月 終日受注可 代金替で 引取は10月でも 9/30水入荷 早めに」
事前の予約販売を受け付けているようだ。こんな熱心に商売するたばこ屋さんに初めて会った。街のたばこ屋さんの多くは、そこまでやる気があるように思えない。お店によってはチャイムかなんかで呼び出すと、とても迷惑そうに振る舞うお店もある。残念だが、そういう店は多い。ところがここのオヤジさんは、商売に前向きだ。そしてこう言った。
「たばこをまとめて買っといてさ、増税のあとに吸うんだよ。それもね、良いことがあった時にだけ、安く買っておいたたばこを吸ったらいい。そしたら、30円得した気分になるだろ?」
なるほどね! 買いだめしたヤツをちまちま吸うとケチ臭い。だからといって、値上がりしたたばこをそのまま吸うのも腹が立つ。どうせなら、値上がりを楽しんで、勝手に得した気分を味わえばいいのか!
「30円値上がりしたと思うと腹が立つでしょ。それを逆手にとってさ、安く買ったたばこを自分のご褒美に使うんだよ。3箱吸ったら、30円×3箱で90円得した気分になるだろ。それで缶コーヒーを買うんだよ。そしたらたばこと缶コーヒーで豪華なご褒美だ。90円で缶コーヒー買えないけどさ、ハハハハハ!」
なんだか平和な気持ちになる。私は思わずその場で1カートン(10箱分)を買ってしまった。増税前にまとめ買いしたことないけど、その遊びは粋だ。真似しよう。という訳で、値上がりにイラつく喫煙者の皆さん、このオヤジさんの考え方を真似してみてはいかがだろうか?
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24