「餃子の王将」と「大阪王将」。言うまでもなく、この2つの中華料理チェーンは全く別ものである。過去にいろいろあったことを考えれば、一切交わらない軌道を公転する惑星同士のようなものと言ってもいいかもしれない。

そして今、「餃子の王将」星と「大阪王将」星の距離がメチャクチャに開いていることをご存知だろうか? たまに火星などが地球に接近してニュースになったりするが、その真逆の現象が起きているのだ。

原因は、ここ最近の期間限定メニュー。その路線があまりにも違いすぎているために、両チェーンの違いがモロに出ているのである。現在販売中の期間限定メニューもまさにそう。実際に見ていこう。

・手堅い「餃子の王将」

まずは「餃子の王将」の期間限定メニューから。関西の人は「京都王将」とも呼ぶこのチェーンが、9月限定で販売しているメニューは……


『麻婆茄子(税抜637円)』

『麻婆茄子炸醤麺(ジャージャーメン / 税抜682円)』


「え? 麻婆茄子ってグランドメニューじゃなかったの?」と思う人だっているかと思う。それほどに王道。本場の中国ではどうなのか分からないが、日本では王道中の王道の中華料理と言っていいだろう。

これには誰も文句が無いはず。残暑が残る今の季節にもピッタリだ。また、それに少しアレンジを加えた麻婆茄子炸醤(ジャージャー)麺を加えるあたりに、餃子の王将の “あそび” の幅がうかがえるような気もする。


では次に、大阪王将の期間限定メニューを見ていきたい。2020年11月8日まで販売予定の商品は2種類ある。1つ目は『下町系男前ナポリタン焼そば(税抜795円)』。こちらもネーミング的に大概アレなのだが、特にヤバいのが以下である。


『弾む焼豚いつかの初恋オムライス(税抜695円)』


「すみません〜。『弾む焼豚いつかの初恋オムライス』を1つ」なんて、どの面下げて言えばいいのか。幸いにも、私の近くにある大阪王将はどこもタブレットを導入しているのでその必要はない。しかし、店員さんに直接伝えるスタイルの店舗しか近隣にない人は……ガンバレ。

・紹介文もアツい

ついでだから、その『弾む焼豚いつかの初恋オムライス』に添えられた紹介文も引用しておこう。改行もそのままに抜粋すると、こうだ。


「いつの間にか
記憶からも忘れ去られた
中華屋さんのオムライス
甘口ケチャップとゴロっと焼豚が
美味しかった
期間限定で王将リメイク
この一口で あなたはどれくらい
戻れますか?」


大阪王将はいつからこんなキャラになってしまったのか。ちょっと前までは男性の中でも男臭いキャラだったのに、久しぶりに会ったら女性になっていたくらいの変わりようである。

それにしても、この「弾む焼豚いつかの初恋オムライス」は何かがダダ漏れになっているような気がしてならない。それがエモーションなのか、それとも「こうやってバズらせよう」という目論見なのか、それとも2つが混ざったものなのか分からないが、とにかく何かがダダ漏れなのだ。


──このような印象を抱いたため、正直なところ私の中での期待値は高くなかった。「どうせ飛び道具」くらいに思っていたのだが……。手っ取り早く結論を言おう。実際に食べてみたら、これは私の中の「大阪王将・ご飯モノ部門」で1位の美味さであった。


大阪王将といえば、天津飯が美味いのは有名だし、チャーハンだって美味い。ご飯モノのジャンルにはなかなかの強豪が揃っているのだが、『弾む焼豚いつかの初恋オムライス』はそれらを超えていったのだ。この驚きを何と表現すればいいのか。強いて言うなら、長島☆自演乙☆雄一郎選手が実はメチャクチャ強いと知った時のような衝撃である。


素晴らしいぞ、『弾む焼豚いつかの初恋オムライス』。と思いながらライスの最後の1粒を食べ終えたとき、私はこのメニューに出会えた幸運に感謝した。そしてもちろん、お店にタブレットが導入されていたことにも──。

参考リンク:餃子の王将大阪王将
Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.

▼「餃子の王将」の麻婆茄子も安定の美味さ。ただ、インパクト面では『弾む焼豚いつかの初恋オムライス』の方が上な印象。