アパホテルが実施している『テレワーク応援プラン』を利用し、5日間の隔離体験を行ってみた件については以前の記事でお伝えした。チャレンジに際して多量のレトルト食品を部屋に持ち込んではいたが、できれば手料理だって食べたい。

そこで私は「1日1回だけ出前を注文してよい」という特別ルールを設けることにした。何かと話題のウーバーイーツは “どんな配達員が商品を運んでくるか” が事前にアプリで確認できる仕組みのようだ。

初めての注文を終えアプリをのぞけば、なるほど配達員の顔写真が表示された……ってコレ中東系の外国人男性! 外国人がダメということは決してないが、いかんせん私は受け取り方も分からぬド素人。言葉の問題とかは大丈夫なんだろうか?

・ちなみに

お世話になったアパホテルの村田さんの話によると、ホテル側の心情として通常であれば「出前大歓迎!」というワケではないのだという。なぜなら……


村田さん「当ホテルはドミノピザと提携していまして、ドミノピザに関しては客室まで直接お届けすることが可能なんです。なので通常時であればまず「ぜひホテルのレストランを」とオススメしまして、『お部屋で食べたい』というお客様にはドミノピザ、という流れなのですが……

今はあいにく新型コロナの対策で当ホテルのレストランは閉めてしまっております。お客様としても毎日ピザというわけにいかないでしょうから……これは致し方ありません。出前でもウーバーイーツでも、どうぞご注文いただいて結構です(笑)」


──かたじけない……! 「届いた」という連絡はいただけるんでしょうか?


村田さん「宅配の方に部屋番号とお名前をあらかじめ伝えておいていただければ、フロントからお伝えすることは可能です。ただし配達員の方をお部屋までお通しすることはできないので、お客様ご自身でロビーまで受け取りに来ていただきますようお願いします」


確かに1日何度も出前をとり、そのたびにフロントの業務を妨害しては迷惑である。そのあたりの節度を持っていれば、ホテルに出前を頼むことは基本的に問題ないようだ。ウーバーイーツは到着時刻をアプリで確認できるため、その時間に合わせてロビーで待機しておくなどするといいだろう。

ただし食器を返却するタイプの出前は遠慮しておこうな!


・ウーバーイーツ入門

ウーバーイーツのアプリをダウンロードすると自動で現在地が検索でき、配達可能な店舗一覧が表示される仕組みである。あまりにもあっさり注文できてしまったうえ、配送料が安いことにも面食らった。


画面はすぐ『ご注文品を準備しています』という状態に切り替わる。「ずいぶん早いんだな」とか思っていたら……


そこから10分もたたず『お届け先に向かっています』という表示に変わったぞ! 早すぎるだろ! 私は慌ててジャージに着替え、エレベーターでロビーへ向かう。中東系とおぼしき顔立ちをした配達員J氏とはどんな人物なのだろう? 緊張するなァ。

ロビーにたたずむJ氏はマスク越しにも本人だとすぐ分かる顔立ち。アプリを見せながら声をかけてみると……彼は満面の笑顔で「オー、マイフレンド!」と叫んだ。そして私に握手を求めかけるもサッと手をひっこめ、「これ以上は “密” だネ!」というジェスチャーをして場を和ませたのだ。

それからJ氏はカタコトの日本語で「遅くなってゴメンネ……」と私に告げたうえ、フロントスタッフに向かって「サンキューマイフレンド!」と微笑みかける。去り際には胸の位置で両手を合わせて深々とおじぎ。さらにはロビーで他の配達員(他人)を見つけたJ氏、「ハーイ! マイフレンド!」と手を振ったではないか。


な……なんというフレンドリーさだ!!!!!


・あの人に逢いたい

楽しみにしていた『大阪王将 五目炒飯』を前に、私の頭はJ氏のことでいっぱいだった。ウーバーイーツの配達員というのは皆あれほどにフレンドリーかつ礼儀正しいものなのだろうか? いや、1発目で大当たりを引いてしまった気がしてならない。

J氏は外見こそ中東系なのだがフルネームは欧米に多い名前であるため、どの国の人なのか皆目見当もつかぬ。しかし「マイフレンド」を連発するあの感じは非常にインドっぽい……う〜む。

ちなみに注文から10分で届けられたチャーハンは今にも「ジュー」と言い出しそうなほどホカホカでアツアツ。お味はさすが大阪王将といった具合のスキのなさである。これはJ氏が私だけのために運んでくれたチャーハン……そう考えると心もアツアツだ。


もう一度、もう一度だけでいい。彼に逢いたい……!


・正攻法でいくしかない

アプリのどこを見ても、完了した注文の配達員に連絡を取る手段は見当たらなかった。そもそも仮にそういう機能があったとして、一体何と連絡するつもりなのか? それじゃナンパになってしまうだろう。


こうなったら再びJ氏が配達してくる可能性に賭けるほかないが、勝算はある。配達の速度からしてJ氏はもとから歌舞伎町で待機していたはずだ。同じ時刻に再度注文すれば再び引くこともあるとみた。アパホテルには5日間滞在の予定なのでチャンスは4回。

さらに念のため注文する商品も毎回同じとしておくことにする。ウーバーイーツの仕組みはよく知らないが、もしかするとJ氏が「大阪王将担当」ということもありえるからな。さっそく翌日もピッタリ19時に五目炒飯を注文してみると……


クーーーッ! 残念! 別人だ。


まぁ、まだ2日目だから仕方ない。それはそうと2日連続の五目炒飯だが、不思議と昨日よりもおいしく感じられる。硬めに炊かれたコメの一粒一粒に存在感があり、いつまでも噛んでいられそうな気分! 出前でコレが食べられるなんて、いい時代になったものだよね。


・高まる想い

3日目の配達員も残念ながら別人。しかしイケメンで礼儀正しかったので得した気分だ。ちなみに前日の彼もイケメンだったぞ。

ウーバーイーツの配達員に関してはマナーが悪い等と報道されるのを見たことがあり、正直少しビビっていた。だが実際は大違い。何事も体験してみなくてはいけないね。

それにしても3日連続『大阪王将 五目炒飯』だというのに全く飽きない。なんなら大盛りを検討し始めた自分がいる。おそらくこのチャーハンは冷めてもウマいだろう。冷めたチャーハンも食べてみたい……けど食べたさが勝り、冷める前に食べてしまうのだ。


・痛恨の4日目

翌日の私はとんでもないミスを犯すことになる。欲を出して『肉と野菜炒め』もセットで注文したところ、なんと配達までに45分を要するハメに。これまで20分を超えたことはなかったのに……当然の報いというべきか、配達員はJ氏と別人だ。

しかしこの事実は裏を返すと「いかにチャーハンの調理時間が短いか」ということに他ならないワケで。安くて簡単でこんなにウマい……チャーハンの持つポテンシャルに驚きを禁じ得ない。

『大阪王将の五目炒飯』のスゴさは、どの部分を見てもコメが全く潰れていないことである。かといって硬すぎたり油っぽいというワケでは決してなく、どちらのバランスも絶妙なのだ。それでいて味は控えめ。食感を楽しむという意味ではもはやチャーハンの枠に収まりきらないのかもしれない。


・ありがとう大阪王将

最終日の配達員も、残念ながらJ氏ではなかった。

ちなみに、驚くべきことに5日間・計5人の配達員は全員若い男性、おまけに例外なくイケメンであった。歌舞伎町という土地柄、「休業中のホストたちがバイトしている」という説も考えられなくないかもしれない。

かくして今回、検証の目的は叶わなかったことになる。しかしながら、おかげで私は『大阪王将 五目炒飯』と出会うことができた。

つまり「無駄な経験など何ひとつない」のである。それを私に教えるために、J氏は歌舞伎町に舞い降りたのかもしれないな。そんなことを考えながら食べた五目炒飯はなぜだか少しショッパい……はずもなく、永遠に食べ続けられそうなほど最後の一粒にまで味が染み込んでいた。


・シャバでビックリ

5日間の隔離体験を終え、ホテルを出た私は2つの光景に驚愕することになる。

まず1つ目は「大阪王将との距離」だ。

実は私が5日連続注文していた大阪王将、なんとアパホテルから目と鼻の距離だったのである。

100メートルにも満たないこの距離で「チャーハンひとつ」と注文された日には、私が配達員だったら「自分で行けよ」と陰口のひとつも言いたくなるだろう。現在は緊急事態という背景もあるが、今後はお店との距離も調べたうえで利用することにしたい。

それから2つ目は「配達員の多さ」である。歌舞伎町にいる一般人より配達員のほうが多いのではと思わせるほど、町中がウーバーイーツのリュックにあふれていたのだ。たかだか5回の配達でJ氏と再会しようというのは、いささか無謀な試みだったのかもしれない。

ちなみにネットの情報によれば「2日連続同じ配達員が来た」というケースもあるようなので、利用し続けていればいつかJ氏に会えることもあるだろう。お店で五目炒飯が食べられるその日を、ウーバーイーツをフル活用しながら待つ所存だ。

Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
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