それは東京都に緊急事態宣言が出る前のこと。私(中澤)が、調味料を買いにアメ横にあるアジア食材の店に行った際、近くに設置された冷凍庫の中に見慣れない物体が置かれていた。真っ黒な……肉?
テラテラした質感はおそらく冷凍された肉なのだが、黒豆くらい黒いのである。その黒さにビックリして思わずマジマジと見たところ、ガラスに貼られたポップにはこう書かれていた。「烏骨鶏(1500円)」と──。
ホアッ! ホアアッ!! 鶏だああああああ! しかも極上だァァァアアア!! 思わず、『真・中華一番!』のトーリターレンのようなリアクションを取ってしまったが、それもそのはず烏骨鶏(うこっけい)と言えば高級鶏。『真・中華一番!』でも主人公マオが「伝説の霊鳥」と言っている。
並のスーパーではもちろん売ってないし、なんなら私は『真・中華一番!』でしか見たことがない。そんな鶏がなぜアメ横に? 一瞬疑問に思ったがアメ横ならありえるかもしれない。この店なら。
それほどにガチアジア。もはや日本とは思えない多国籍な雑多さは、逆に烏骨鶏が紛れていてもおかしくはない。そこで購入してみた。
・烏骨鶏の知識は『真・中華一番!』のみ
とは言え、私の烏骨鶏の知識は『真・中華一番!』のみである。そして、『真・中華一番!』では鶏の中に米を入れて鍋で炊き込みご飯にしていたが、この烏骨鶏は小さく身の中に米が一合も入らなさそうだ。
そこで分解して炊飯器で炊き込んでみることに。しかし、鶏を捌くのも初めてな私。モモ肉がどこにあるのかさえもわからない。包丁を入れるとすぐに骨に当たる。鶏ってこんなに骨で守られてるのか。パックで売ってるモモ肉のような肉の塊がこの鶏の中にあるとは思えない。
・まず捌かねば
そこで捌き方を調べてみたが、結果から言うと参考にはならなかった。私が購入した鶏は足の先を体の中に収納して冷凍されているため、動画などの最初の状態からすでに違うのである。あかん……こりゃ素人には無理だ。
というわけで、パワープレイで行くことにする。骨に当たろうとなんだろうと全てパワーで断ち切るのだ。包丁がダメになることを覚悟でガツガツ裁断していくと……
なんとか部位をバラけさせることができた。
固まって出てこなかった足も引き抜く。それにしても、爪のついたつま先がリアルだ。ただの肉の塊ではなく「生き物」なんだなあ。
・『真・中華一番!』の味付け
さて置き、ここまで来ればあとは余裕。『真・中華一番!』のセリフによると味付けは薬味と酒だけ。烏骨鶏の出汁で激ウマになるっぽい。鶏料理品評会においてマオはこの料理で北京ダックとかに勝ってる。
というわけで、米2合に酒を大サジ2杯入れて炊飯ボタンをポチッとな。
『真・中華一番!』ではマオがネギを刻んでるシーンがあったので、一応ネギも購入したが、炊飯器に入らなかったので諦めた。まあ、薬味は匂いつけだと思うから味的にはさほど問題ないだろう。そして、約45分後……
完・成!
鶏の黒みが少し米にうつっており灰がかっている気もするが……
この輝き……
この香りッ!
ハフハフ! あんむッ!!
ファッ!? ホアッ!? ホアアッ!! と……とッ……
特に味がしない。
いやどういうこと!? うっすらと鶏の風味はするけどもほとんど白米の味である。荘厳にして華麗なる甘み、怒涛のごとく押し寄せたかと思えばはかなく引いていく豊かなコクは!? これが……これが伝説にのみ伝え聞く神秘の鶏、烏骨鶏だと申すのか!?
この味で体中の血液が音を立てて駆け巡っていくってトーリターレンどんだけ薄味好きなんだよ……! おじいちゃんだから北京ダックの油にやられて白米がウマかったとしか思えない。マオもよくこの味で北京ダックと戦おうと思ったな。それほどに味がない。
まあ、私はマオのように、薬味も入れてないし鶏の中に米を入れているわけじゃないので、やり方がマズかったのかもしれないが……。
・マオの魂だからこその味
ちなみに、塩をかけたらめちゃくちゃウマくなったため最後まで美味しく食べることができた。残りの烏骨鶏に関しては煮物にでもしようと思っている。
もし、『真・中華一番!』に影響されて烏骨鶏トリ飯を作ろうという人がいるならば気をつけた方が良いだろう。あれはマオが本気の魂で作っているからこそ出せる味なのだ。というわけで、一般人が作る場合は味覇を入れることをオススメしたい!
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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