愛煙家の皆さま、こんにちは。グレート室町です。ご存知のとおり、健康増進法の改正により来月から屋内施設が原則として禁煙になります。一部の例外は残るものの、今までのように飲食店などの客席でタバコを吸うことは絶望的に難しくなるでしょう。
そして禁煙化の波は、喫煙者にとって最後のオアシスであった喫茶店にも迫っています。コーヒーの香りと紫煙が交錯する、セピア色の空間。そんなレトロな光景も時代と共に消えていってしまうのです。
古き良き「喫茶 × タバコ文化」の素晴らしさを、最後に振り返ってみようではありませんか──。
・嗜好品とは何か
世の中から消えていく行為の魅力を説いて何になるのかという声も聞こえてきそうですが、去り行く人には「ありがとう」「さようなら」と言葉を贈るではありませんか。それと同じです。
これは「喫茶店でタバコを吸う」というカルチャーの送別会というか引退セレモニーのようなコラムなのです。
タバコとコーヒーの相性が抜群であることは、多くの方から同意をいただけるところだと思います。私が思うに、あのコーヒー豆の香ばしい匂いがタバコの風味と合うのですね。他の飲み物にはない特徴です。
タバコを吸わない方は「じゃあ喫煙ルームで缶コーヒーでも飲めばいいじゃん」と仰るかもしれませんが、それはちょっと違います。タバコは嗜好品であり、コーヒーもまた嗜好品です。リラックスした状態で楽しみ「癒し」を得ることに意義があるのです。
ショッピングモールなどに設置されている喫煙ルームを思い浮かべてみてください。あの無機質な空間に「癒し」があるでしょうか。
さらに過激なことをいえば、「カフェ」でも駄目です。「喫茶店」が良いのです。だって大手のカフェだと喫煙席は四方をガラスで覆われた実験室のような造りになっているでしょう。あれは良くありません。開放感がないし、雰囲気も暗いです。
また、そういったカフェではなぜか「やたら小さい灰皿」が置いてあります。これもマイナスです。「あんまり長居しないでね」という店側のメッセージのようなものが感じられるからです。被害妄想かもしれませんが。
私はゆっくりしたいのです。マスターが淹れてくれた美味しいコーヒーとタバコを楽しみながら、のんびりスポーツ新聞を読みたいのです。オープン戦の結果を確認したいのです。お洒落なカフェにスポーツ紙は置いていないでしょう?
・魔法の「シュボッ」が心をつなぐ
また喫茶店は一人で利用するとは限りません。ときには誰かと一緒に入って、仕事の話やマジメな話をすることもあるでしょう。そして真剣な話をしていると、どうしても会話が行き詰まったり、言い合いのようになってしまうことがあります。
そんなときは、「シュボッ」とタバコに火を付けてみてください。そして一口目の煙は時間をかけてゆっくり吐き出し、コーヒーをズズズと啜ってみてください。
この火を付ける動作「シュボッ」は、相手に「とりあえず一服して落ち着こうや」というメッセージを送るアクションなのです。そのメッセージが伝わり、相手もタバコに火を付ければ完璧です。シリアスな雰囲気は間違いなく中和されるでしょう。
魔法のアクション「シュボッ」と喫茶店の柔らかい雰囲気が、人々の心をほぐすのです。
・絵になる情景
一昔前の刑事ドラマなんかでは、喫茶店で煙を吐きながら推理を練ったり思いを巡らせたりするシーンは定番でした。またヤンキー漫画とかだと主人公たちがたむろする場所は大抵の場合、渋いマスターのいる喫茶店でした。
本稿は喫煙の是非について何らかの意見表明をするものではありません。だけど創作の世界でも多く描かれてきたように、喫茶店でタバコを吸う行為が一種の「絵になる文化」であったことは間違いないと思います。
それが4月から消えてしまうというのは寂しいですが、あと少しだけ時間は残されています。最後にもう一度「喫茶 × タバコ文化」を楽しんでおきませんか。きっとそれは貴重な時間になるはずですよ。
執筆:グレート室町
Photo:RocketNews24.