油揚げといえば味噌汁の具に、遠足のいなり寿司、巾着にして煮物など、日本の家庭料理の名脇役である。5枚も入って100円程度、リーズナブルで気軽に使え、冷蔵庫にあって困ることはない。が、あくまでそれは食卓の脇役であって主役ではない。

……と思っていたのだが、仙台には油揚げを求めて行列のできる豆腐屋さんがあった! 揚げたて熱々をイートインで食べることができ、店内は大盛況、一口かじってみたら主役級のビッグなヤツだったのでご紹介したい。


・定義如来


住所は仙台市青葉区。そう「区」なのだが、仙台駅から車でおよそ60分ほどかかる。


橋を渡り、ダムを越え、結構な山道を走って、それでもまだ辿りつかない。道路に積雪がないので助かったが、曇天から雪がちらついている。


夏だったり、天気がよければ絶景かもしれないが、冬場にはなかなかにハードルが高い。本当にこの先に人気の豆腐店が……?


と、山あいに突如として現れる立派な山門。定義如来(じょうぎにょらい)西方寺(さいほうじ)だ。


地元の人からは「定義(じょうぎ)さん」と呼ばれ、800年の昔から平貞能(たいらの さだよし)公が眠っているお寺だという。それにしても冬の東北地方は、なんというか寒さと物悲しさが同居している。今年は暖冬だが、例年だったら雪に埋もれていたかもしれない。


門の前からは門前町が伸びているが、さすがに2月。歩く人も少なく、閑散としている。


……と思いきや、一軒だけ大繁盛のお店がある! 目的の『定義とうふ店』だ。定義如来への精進料理用の豆腐を製造するために、明治23年に創業したというから、創業130年!


店内は満席だ。もちろん豆腐も売っているのだが、ほとんどのお客さんの目的は、名物『三角定義あぶらあげ』。さっそく食べてみよう!


・三角定義あぶらあげ(130円)


カウンター横のガラス窓からは厨房が見え、次々と油揚げを揚げているのがわかる。低温の油と、高温の油の2度揚げによって、外はカリッと、中はふっくらとした油揚げになるらしい。


カウンターでは店員のお母さんたちが目にも止まらぬ早技でお客さんをさばいている。手際の良さで、行列ができてもそう時間がかからず商品を受け取ることができる。油揚げは1枚130円、そして日曜・祭日限定発売の「とうふ田楽」も1本130円。安い!


店内は混んでいるので、運よく席が空けば座ってもいいし、立ったまま食べている人も多い。もちろん相席だ。譲り合って座ろう。店舗脇にもテーブルが並んでいて、気候のよい時期なら外で食べることができる。


デ、デカい! 大人の手のひらほどの大きさだ。厚さも3cmはあるだろうか?

揚げたてでフクフク、そのまま食べても美味い! 厚くてしっかりとした歯応えがあり、それでいて油っぽさは全くなく、さっぱりと食べられる。


テーブルにある醤油をたらして七味唐辛子を振ったら、もう最高だ。大豆の旨味が染み出してくる。筆者は飲まないが、たぶん酒のつまみにもいいのでは? 一品の料理として完成しており、ここでは油揚げが主役だ。揚げたてが肝なので、きっと持ち帰りや配送では再現できないだろう。現地でしか食べられない、まさにご当地グルメ。


・とうふ田楽(130円)も美味しい


田楽の方は、いかにも東北らしい濃厚な味噌だれ。関西の人が食べたら味が濃すぎて驚くかもしれない。

まったくの余談だが、砂糖と醤油を煮詰めたこのような味を表現する際、「甘じょっぱい」という地方と「甘辛い」という地方とあるらしいが、あなたはどちらだろうか。筆者は前者なのでこれは「甘じょっぱい田楽」だ。


持ち帰り用の油揚げ(5枚入り600円)や、豆乳(1杯100円)もあるが、ぜ〜んぶ買っても1000円に満たない。庶民の食卓を彩ってきた大豆文化、ここに極まれり!

仙台といえば牛タンや笹かまがメジャーだが、隠れた名物としてこの『三角定義あぶらあげ』も食べてみて欲しい。特に、冬の山道を「ナビ合ってるのか?」と少々心細くなりながら走り、苦労の末に食べる油揚げは格別だ。スタッドレスタイヤは必須! 道路の凍結に注意して出かけよう。


・今回ご紹介した飲食店の詳細データ

店名 定義とうふ店
住所 仙台市青葉区大倉字下道1-2
時間 8:00~17:00(冬季は異なるため要問い合わせ)
休日 不定期


参考リンク:定義とうふ店定義如来西方寺
Report:冨樫さや
Photo:RocketNews24.

日本、〒989-3213 宮城県仙台市青葉区大倉下道1−2