特撰牛すきやき鍋 390円(税別) USアンガスビーフ・ショートプレート使用」と書かれた看板が目に入った瞬間、私の足は自然と止まった。牛すき焼きが390円!? いくら何でも安すぎるのではないか? 近頃は牛丼チェーンが格安のすき焼き鍋を販売しているが、300円台は聞いたことがない……。

一体どんなものが出てくるのだろう? もしかして、お通しレベルのショボいすき焼きなのだろうか? あるいは、肉がほぼ無い湯豆腐みたいなすき焼き? ……と気になったので、その看板を掲げているお店「テング酒場」に入ってみることにした。


そう、みなさんご存知、あのテング酒場である。有名な居酒屋チェーンだから食べたことがある人だって多いかと思うが、私は “390円すき焼き” の存在をその時はじめて知った。そして、もっと早く気づくべきだったと、今まさに激しめの後悔に襲われている。

というのも、そのすき焼きは期間限定メニューで、私がお店に確認したところ2020年3月4日まで。店舗によっては多少前後するかもしれないが、どちらにせよ期間は短い。「もっと早く教えろ!」とお叱りの声が聞こえてきそうだが、重ねて申し訳ないことに、この牛すき焼きがまた良かったのだ。


もしショボかったり、「390円だったらこんなものよね」となるレベルだったら、そこまで後悔もしない。そもそも記事にもしない。しかし皮肉なことに、終了間近のタイミングで発見するものに限ってコスパが最高だから複雑である。



悔しさを抑えながら振り返ると、牛肉は鍋の半分以上を占めるほどガッツリ。肉の量は、標準的な1人用すき焼きと同等かやや多いくらいだ。


また、鍋は固形コンロで加熱するタイプ。まるで旅館の夕食である。格安の1人鍋では鍋だけがドンと出てくるタイプが多いが、これは390円でありながら旅館の1人用すき焼きスタイル……と言って差し支えないだろう。

そりゃ確かに、霜降りの肉を使ったすき焼きとかと比べたら、味は劣るかもしれない。また、鍋の底が浅いこともあって、全体的なボリュームは例えば吉野家の牛すき鍋膳(白米、お新香、卵がついて税抜648円)よりやや少ない印象を受ける。


しかしそれでも、ボリューム・味ともに「値段相応だな」とは決して思わなかった。むしろ、「お肉ガッツリで豆腐に野菜もついて390円って、逆にお店大丈夫ですか?」というのが率直な印象。

だから、「3月4日以降も続けて!」と言っていいのかどうか分からない。色々な意味で、申し訳ない気落ちにさせられたテング酒場の「牛すき焼き鍋」であった。

参考リンク:炭火串焼テング酒場
Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.