“ミレニアル世代”とは子どもの頃から高速ネット環境で育ち、使うのはパソコンよりスマホ、情報収集はもっぱらSNSといった、平成初期生まれのデジタル世代のことだという。そんな“ミレニアル”の名を冠したカプセルホテルが『ザ ミレニアルズ』グループ。渋谷、京都、福岡にある同ホテルのうち、今回『ザ ミレニアルズ渋谷』に泊まってみた。

意識高げなオシャレ空間と、SFっぽい近未来的システムに、まったくミレニアル世代ではない筆者はたじろぎそうになったが、実はコンセプトは超アナログな「人と人がつながること」だった! 滞在の様子をレポートしてみたい。

・チェックインで挙動不審になる

入館すると、まずはオシャレすぎる素敵空間と、飛び交う英語にビビる。記帳などという野暮なものはない。動画で説明を受け、端末に電子サインをして終了。この画面に指でサインという行為、筆者はなかなか上手く書けないが、列に並んでいた若い外国人女性がいかにも手慣れた様子だったのが印象的。これがミレニアル世代か!

チェックインで渡されるのはICカードが挟まったiPod。これが客室のコントローラーであり、入館証であり、エレベーターを動かすキーでもある。

・スマートポッド

“スマートポッド” と呼ばれる客室は、カプセルホテルとは思えないくらい広い。宿泊費は時期や部屋によって変動するが、筆者が泊まった日には1泊5200円。

天井高は2.3mだといい、大人がしっかり立てるだけある。ここで先ほどのiPodを使うと……照明のオン / オフ、換気扇のオン / オフ、ベッドのリクライニングが可能!

ベッドはソファモードとベッドモードを切り替えられるようになっており、ソファにしておくと起きたまま読書したりスマホを見たり楽々過ごせるのだ。

カプセルホテルは個室ではないから、周囲の音が丸聞こえ。音の出るアラームは迷惑だし、自分の安眠のためにもイヤホンや耳栓をして過ごしたい。そんなときのために「照明とリクライニングベッドが起動する新型アラーム機能」を搭載。

指定時刻になるとフワッと照明がつき、ベッドが少しずつ起き上がってくる。最終的には直角に近いソファモードまで立ち上がるので、寝続けることは不可能! 合理的な起こし方だ。


・ハイセンスなアートルーム

今回は特別に「アートルーム」と呼ばれる客室も見せてもらった。こちら、すべて違うアーティストが内装を担当したそうで、1部屋1部屋がまったく異なるデザインになっている。

白を基調としたシンプルな部屋から、楽しくなるようなカラフルな部屋まで様々。

かつ、レギュラールームにはない80インチプロジェクタースクリーン搭載で、自分のPCやスマホ画面を投影できるのだという。テレビよりも自分好みの動画というのがミレニアルっぽい。

ただ、このフロアは男女共用。筆者は女性専用フロアがよかったので、今回は選べなかった。


・充実のパブリックスペース

……と、客室がかなり快適なのでみんな自室で過ごすのかと思いきや、実は全体の20%をパブリックスペースが占める特徴的なフロア構成なのだという。

まずはロビー脇に明るいラウンジがあり、あちこちに電源がある。日がな一日ここで過ごしている人もいた。

共用のキッチンには24時間利用可能なコーヒーサーバーがある。食器や調理器具は自由に使ってよく、セルフサービスで洗って片付ける。客室では飲食はできないので、食事時には自然とここで過ごすことになる。

3階には広いコワーキングスペースがあり、自由に使ってよいのだそう。欧米ではホテルのロビーがよくクリエイターたちのワークスペースとして利用されているんだとか。ここ渋谷でも宿泊客同士はもちろん、外部からドロップイン(時間制料金)での利用もできるそうで、いろんな使い方が想定できる。


・コンセプトは人とのつながり!

17:30になると、なんとフリービールの時間が始まった。タダでビールとなれば、続々とゲストが集まってくる。生まれるのはもちろん笑顔だ。国際色豊かな多言語が聞こえてきて、渋谷の場合は日本人よりも外国籍のゲストが多いそう。

かと思うと、そんな談笑にはまったく加わらず、マイペースに1人で過ごしている人も多い。

翌朝には無料のパンサービス。各自がコーヒーとともに好きなだけパンを食べ、自分で食器を洗う。一緒に居るんだけど、無理に会話するわけでもない。いいなぁ、この距離感! 自室にこもりっきりにならず、旅人同士がゆるやかに時間を共有するような仕組みが随所にある。

これまで紹介したような最先端テクノロジーは、確かに同ホテルの個性ではあるけれど、最大の特徴ではないようだ。『ザ ミレニアルズ』の真髄といえるのは、おそらく人と人とのつながりを一番大事にしていること。すごくアナログな部分なのだ。


・リピート確定

無駄を省いた合理的なシステム、ガジェットを駆使して利用する館内設備、どこを撮ってもインスタ映えしそうなアーティスティックなインテリア……。最先端すぎて「場違いなところに来てしまった感」ありありだったのだが、最初の印象に反してものすごく居心地がよく、次は長期滞在しながら仕事をしたいと思った。

欧米からの個人旅行らしき人が多く、静かな雰囲気なのも好印象。お互いのパーソナルスペースを尊重し、排除はしないけれど必要以上に他人に干渉もしない、そんな大人の時間が流れている。

常に誰かとつながっていることを求めるSNS世代って疲れそうだなぁと思っていたけど、実はこういう距離感を求めているのかもしれない。ハイテクIoTカプセルホテルは、1人だけど1人じゃない、旅人がゆるやかにつながる素敵ホテルだった!


・今回ご紹介した宿泊先の詳細データ

名称 ザ ミレニアルズ渋谷
住所 東京都渋谷区神南1-20-13
時間 チェックイン15:00~ / チェックアウト~10:00


参考リンク:ザ ミレニアルズ渋谷[1][2]
Report :冨樫さや
Photo:RocketNews24.
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▼外観 / 言われなければホテルがあるなんて気づかず “隠れ家” のよう

▼客室廊下

▼客室の電源 / ガジェットがたくさんあっても大丈夫

▼客室の洋服掛け

▼スライド式の大きな荷物台にスーツケースを入れられる

▼廊下との仕切りはロールスクリーンで、施錠はできない

▼清潔な共用シャワールーム

▼長期滞在できるようランドリーもある

▼電源完備、会議もできるコワーキングスペース

▼コワーキングスペースのソファ席

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