風吹けば透ける前髪、汗かけばぺたんこになる頭頂部。私(中澤)はハゲていた。生え際のサイドがトルシエジャパンも真っ青なほどオーバーラップしていた。そう、M字ハゲ……だった。
以前の記事で、植毛手術を受けたことをお伝えした私。これまで、現状報告という形でハゲ部分の様子をレポートしてきたが、ここに手術から1年の経過をまとめたい。これは私とM字の仁義なき戦いの記録である。
・自毛植毛とは
植毛手術にも色々あるけれど、私があるクリニックに協力してもらい受けたのは自毛植毛だ。これは、ハゲ部分に自分の髪の毛で元気な部分の毛根を移植するもので、全体的な毛量は変わらない。
言うならば、毛根の民族大移動。頭をフィールドにして、ゲルマン民族ばりに毛根を大移動させる手術である。さて、突然だがここで世界史クイズだ。ゲルマン人は大移動した後何をしたでしょうか?
そう、国家を建てた。そこに根付いて繁栄したのである。自毛植毛においても同じことが起こる。つまり、移動した先で髪の毛は伸び続けるのだ。
・自毛植毛手術について
と、あえて遠回りかつ壮大に自毛植毛を説明してみたがいかがだろうか。なお、ゲルマン人の大移動は200年から300年続いたと言われているが毛根の大移動は1日で終わった。わお! 早いね!!
もちろん、術後3日くらいは傷跡も生々しく、1週間くらいは患部を直接洗えないなどの影響はあるが、それもゲルマン人の大移動に比べるとあっという間と言えるだろう。そんな手術前後の詳細は記事「【閲覧注意】植毛手術でハゲを治療したら「地獄」を見たでござる」でご確認いただければ幸いだ。
・あれから1年
クリニックいわく、植毛した毛は一度抜け1年をかけて生えそろっていくという。ところで、この手術記事が公開されたのは2018年9月3日……
つまり……
今がその1年後である。
M字は完全に埋まり、元のハゲの形を忘れるくらい自然な仕上がりに。記事を書くのに久しぶりに植毛前の自分を見て驚くレベル。ハゲに怯えていた私が、ハゲを忘れる日が来るなんて……。それにしても、この1年色々あったなあ。
振り返ると、術部の髪が伸びて目立たなくなってきたのは半年を越えた辺り。ちなみに、毛根を採取するために刈り上げた部分は1カ月半くらいで何事もなかったようになった。
現状、生えてきた髪はクセッ毛だが、手術を担当した医師に聞いたところ「たまにあることだが、生え変わりで2年くらいかけてウェーブがゆるくなっていく」とのこと。
・自毛植毛を終えて感じたこと
ゲルマン民族に比べれば早かったが、やっぱり長かったこの1年。手術に臨む前、ぶっちゃけ怖かった。医師を信頼してはいるが、万が一の可能性を自分の中で消せなかったのである。そして、それは術後も形を変えて続いた。
──術部は問題なく綺麗に生えるのか? 一部だけ根付かなくて変になったらどうしよう?
こういった拭えない不安は、おそらく外見を大きく変える手術全てに共通するものだろう。
そんな経過を包み隠さず記事にしていて感じたのは、手術自体に否定的な意見を持つ人が多いということ。
外見を変えることへの偏見や「恥ずかしい」という価値観はいまだに根強い。
確かに、本物のダイヤモンドだけを愛する気持ちも分かる。ひょっとしたら、人工的な輝きを偽物で価値が低いと感じる人もいるかもしれない。ただ、これだけ外見で判断される世界で、恐怖と偏見の壁を越えて踏み出す一歩を私は応援する。
繰り返す。恐怖と偏見の壁を越えて踏み出す一歩を私は応援する。
これにて「植毛レポートシリーズ」を終了します。最後までお読みいただきありがとうございました!
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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