音楽で食べていきたい。そんな想いを胸に上京したあの日から早13年。私(中澤)がミュージシャンとして売れる兆しはゼロだ。ミュージシャンとして1発当てたい。そのためには、待ってるだけではダメだ

というわけで、ロンドンでイングヴェイすることにした。イギリスと言えばロックの本場。ロンドンは路上のメッカ! とりあえず行ってみたらなんとかなるはずだ。逆に首を洗って待っていろ! 俺のストラトが火を噴くぜ666!!

・イングヴェイとは

イングヴェイ・マルムスティーンは1980年代に速弾きギタリストの先駆けとなった人物だ。そのハイスピードかつエモーショナルな速弾きは、現在も多くのギタリストに影響を与え続けている。

・羽田からロンドンに向かうイングヴェイ

ロンドンを道行く者ならば、イングヴェイが目の前に現れたらビビらずにはいられない。さらに、イングヴェイが路上ライブでも始めようものなら、噂が噂を呼んでレーベル関係者が飛んできてスカウトされるに決まっている

我ながら完璧な作戦である。さっそく、イングヴェイになって羽田からロンドンへと飛び立った。行くぜ

・ロンドンのことを知らないイングヴェイ

さて、そんなわけでロンドンに着いたが、何ひとつロンドンを知らないことに気づいた。時計塔とバッキンガム宮殿しか知らない。そこでとりあえずロンドンっぽいスポットに行ってみることに。だがしかし……


路上ライブをやってる人がいない

匂い立つ圧倒的ガチ感。路上ライブとかそんな雰囲気じゃない。ここでやったら多分捕まる。イギリスで捕まったら、いくらイングヴェイでもヤヴァイ。

そこで、通りがかりのロンドンに5年住んでいるという女性に話を聞いたところ、「金さえとらなきゃ大体OKだと思う」とのこと。マジかよ……ロンドン凄ェな!!

・路上に震えるイングヴェイ

ミュージシャンに対する寛容さに震えながらさらに数日調査を行ったところ、ヴィクトリア駅前に良い感じの広場があった。よし、ここに決めた

ちなみに、路上ライブをするのはこれが初めての私。まさか初路上ライブがロンドンなんて思ってもみなかった。そう考えるとアンプを出す手が震える。いつも何から準備してたっけ

普段意識したことがないことを猛烈に思い出そうとしているとピックを落とした。空もようも怪しいし、怖い怖い怖い……俺はこんなところで何をしているんだ

さらに、激しさを増す雨。これはもう出直した方が良いんじゃないだろうか。神様が今はやめとけと言ってるんじゃないだろうか。

いや、このまま帰るわけにはいかない。なぜなら、イングヴェイはアンチクライストだからだ!! 神が「やめろ」と言っているなら、むしろ今やるのがイングヴェイ。イッケェェェエエエ!!

・緊急事態発生

雨で顔に張り付く髪、濡れて滑る指板。もはや正しいフレットを押さえられているのかすら分からない。だが、逃げるわけにはいかない。降れよ雨、吹けよ風! 嵐を呼ぶギタリストとはオレのことだ! 太陽をはるかに超えてェェェエエエ!!!


と、その時


\シーン……/

突然消えるアンプの音! どうしたんだジェフ(アンプの名前)!! なぜ歌わないんだ!? 俺を晒し者にするつもりか!? お前が歌わなきゃ俺は雨の中エレキギターを生音で弾くただのピエロになっちまう! クレイジーだ!!


しかし、うんともすんとも言わないジェフ。電源のランプは点灯しているのに完全に沈黙している。


分かった。お前がその気ならクビだ。ライブは常に伸るか反るか。Yngwie or Highway(イングヴェイが駄目なら他へ行っちまえ)!

──というわけで、急遽アンプをクビにしたため、これ以降のツアーはキャンセルさせてもらう。俺の音楽が分からない奴等はクズだ

ジェフの起用は間違いだった。電話ボックスででも歌ってろ! 正しいやり方(The Right Way)があり、間違ったやり方(The Wrong Way)があるとすれば、俺にはYngwieがあるんだ。

参照元:Instagram @yngwiemalmsteen_official
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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