2019年7月24日、ホテルの客室に設置されたテレビの受信料を支払っていないとして、NHKが「東横イン」に支払いを求めた訴訟で、最高裁第2小法廷は東横イン側の上告を退ける決定をした。朝日新聞によると、支払額は19億円以上にも上るという。

「宿泊客がいない客室にまで受信料が発生するのか?」など、様々な議論を呼んでいるが、果たしてラブホテル業界はどうなっているのだろう? 現役のラブホテル関係者に実際のところを聞いてみることにした。

・ラブホテル経営者が語る

話を聞かせてくれたのは、ラブホテル経営者のAさんだ。所在地については明かせないが、日本有数の繁華街で4店舗のラブホテルを経営するAさんならば、ラブホテルとNHKの関係性を良く知っているハズ。さっそく、東横インに下された19億円の支払い判決について聞いてみると……。


──東横インに19億円の支払い判決が下されましたが率直にどう思われますか?

「うーん、やっぱりかという感じですかね……」

──東横インはビジネスホテルです。NHKとラブホテルの関係はどうなっているのでしょうか?

「あれはもう6~7年前ですかね? NHKがラブホテルの客室からも受信料を徴収するという話が出て以来、ホテルに直接NHKの徴収員が押しかけてくるようになりました

──ラブホテルも例外ではないんですね。

「はい。ただ、そのときはレジャーホテル協会が窓口になりNHKと協議するということで、私どものホテルはNHK徴収員が来ても、その旨を告げて個別契約には応じませんでした。協会とNHKの話が通じていたのか、しばらくしたら徴収員は来なくなりましたね」

──なるほど。

「正直なところ、それまで我々もまさか客室のテレビにまで受信料が発生すると思っていませんでしたから、レジャーホテル協会が窓口になってくれることはありがたかったです」

──ふむふむ。それで交渉はどうなったのでしょうか?

「レジャーホテル協会は各地方ごとに分かれていて、いわゆる本部がNHKと交渉したのか、それとも地方ごとにNHKと交渉したのかはわかりません。ただ、東横インさんくらいの規模ならばともかく、我々に裁判を起こすような体力はありません

──うーん、そうなんでしょうね。

「ハッキリ言えば、それまでかかっていなかった経費がかかってくるワケですから、我々としては利益をそのまま削られることになります。私が経営するホテルは4店舗ですが、客室は全部で120室です。その120部屋に毎月3000円かかったとしたら1月に36万円。1年で432万円ですからね。大きいですよ」

──確かに年間432万円と聞くとスゴイですね。

「いっそのこと、テレビが映らないようにしてDVDやVODだけにしてしまおうかとも考えました。ただ、NHKの規定では部屋にテレビが設置されているだけで受信料の支払いが発生するんですよね。多くの人が言うように下手なヤクザよりタチが悪いですよ」

──で、いまは受信料を払っているんですか?

「我々は裁判を起こしていませんが、ラブホテルのオーナーさんの中には裁判を起こした方もいらっしゃいました。ただ、今回と同じようは判決が出たのでレジャーホテル協会と協議の上、全室分の契約をしました。もちろん現在は受信料を支払っています」

──なかなかの金額ですね。

「人口の減少もあり、ラブホテル業界自体が衰退しているんですね。東京などの大都市はわかりませんが、地方のラブホテルなんてどこも経営が苦しいハズです。極端な話、売れるものなら売りたいと思っているオーナーさんがほとんどではないでしょうか?」

──そうなんですね。

「この苦しい状況の中でNHKの受信料ですからね。参議院議員選挙でNHKから国民を守る党が議席を獲得しましたが、1票投じたくなる気持ちがわかりますよ。仮にNHKがスクランブル放送になったら、うちは絶対に契約しません。だって、ラブホテルで “NHKが映らない” なんてクレームが来るとは思えませんから」

というわけで、Aさんが経営しているラブホテルは現在、NHK受信料を毎月支払っているという。ただ、レジャーホテル協会とのつながりはあるにせよ、最終的にはオーナーの判断なので、日本にある全ラブホテルがNHK受信料を支払っているかは定かではない。

Aさんの言う通り「NHKから国民を守る党」が議席を獲得するなど、うねりが起こりつつあるNHK受信料の問題。NHKに対する国民の不満は決して小さくないと思われるが、果たして現在のシステムは未来永劫続いていくべきなのだろうか?

参照元:朝日新聞
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.