『プレーパーク』をご存知だろうか? 公園内へ一歩入ると子供たちが木に登り、屋根ほどもある高さの遊具にぶら下がっている。それは仮に落下した場合、怪我する可能性がある高さだ。さらに奥ではたき火をし、ノコギリで木材を切る子の姿も見られる。

偶然ここを訪れた私はとっさに「いいのかコレ?」と思った。しかし次の瞬間、自分も幼いころ同じようにして遊んでいたことを思い出す。何かあるとすぐに管理者や保護者の責任が問われる現代。当然のことなのかもしれないが、それを恐れるあまり「とにかく禁止しておく」風潮に慣れ過ぎていたのではないか。

裸足で駆け回る子供なんて今や田舎でも少なくなった。自然からかけ離れたイメージの「東京子育て」……ましてここは世田谷区である。この場所は一体どのようにして成り立っているのだろう? うちに子供はいないけど、気になりすぎたので後日再び訪れた。

・羽根木公園へ!

世田谷区にある羽根木公園は敷地面積が広大すぎるため、公園のどの地点を目指すかによって最寄駅が違ってくる。ひとまず敷地内にたどり着くには、小田急線の梅ヶ丘駅から行くのが最短だ。

羽根木公園内の一角が『羽根木プレーパーク』である。公園の一部だが「たぶん管轄が違う」ことは、プレーパークのゾーンへ足を踏み入れるとすぐにわかるはずだ。

雰囲気でいうと「個人が自宅の山を改造したかのような」異質な感じである。傾斜のある地面は舗装されておらず、すべり台をはじめとした遊具はひと目で手作りと分かるたたずまいだ。見た目で行政が運営しているとは考えづらい。

みればスタッフとおぼしき方の姿がある。ボランティア? 「ベーゴマ200円」という張り紙もあるが、果たしてどれほどの収益力がベーゴマにあるものだろうか? 一体いかにして世田谷の一等地にプレーパークは成り立っているのか? スタッフの方にハッキリきいてみた。


・世田谷区のポテンシャル

話をきかせてくれたのは「世話人」の首藤さんと齊藤さん。ここではボランティアからなる世話人と、お給料をもらって働く「プレーワーカー」がスタッフとして駐在しているのだという。

元々はここを利用するママだったのが、子供が成人した後も手伝っているのだというお2人。世田谷の地で異彩を放つこの公園を存続していく過程では、やはり紆余曲折あったのだそうだ。

実はプレーパークをはじめとした『冒険遊び場』は全国に点在している。都内にも数十カ所、世田谷だけで4カ所。ただしボランティアに依存する部分が大きいため「週末だけ」や「月に数回」解放されている公園も多い。週6日利用できるここは「かなり頑張っている遊び場」といえるだろう。

ではなぜそんなに頑張れているのか? お2人に尋ねると「この取り組みに協力してくれる世田谷区の意識の高さと、近隣の皆さんの温かいまなざしがスゴイ」からだと声を揃える。


・ここで遊ばせるのがOKな親

そもそもプレーパークはヨーロッパで誕生した。それを「大村虔一さん、璋子さん」という子育て中の夫妻が日本に伝え、1979年に誕生した日本最古の常設のプレーパークがなんと、ここ羽根木なのだという。たまたま通りかかった所が元祖だったなんて、自分の引きの強さが少し怖い……!

「子供が遊ぶ権利」を守ろうという趣旨のもと地域住民の会が発足し、現在は世田谷区がNPO団体に委託するかたちで公園を運営している。行政というのは「責任が生じる問題」についてひときわ神経質なイメージだが、そのへんはどうなっているのだろうか?


──最近はどこも火を使うことが禁止されていて、花火をするのもひと苦労ですよね。ここではどうしてたき火が可能なんですか?

「ここができた40年前はダメだったんです。でも子供の遊びにたき火は欠かせないものなので……しばらくは消防署へ毎日通いました。時間をかけて活動と状況を見てもらい、今は世田谷区と消防署からも許可していただいている感じです」

──木のぼりとか、ノコギリについてはどうですか? 

「基本的に親がついていますし、小さい子は大きい子の背中を見て遊びますから。自然と「大きくなってから登ろう」というふうになりますね。3000平米の広さがあるのでうっかり小さい子が親から離れることもありますが、他の子が「あそこで泣いてるよ」と教えに来てくれたりします」

──苦情や批判などはないですか?

「たき火の煙とか子供の騒ぐ声などは、たまに言われることがあります。その時は「言いに来てくれてありがとうございます」と、丁寧に話を聞いて、折り合えるところを探します。そりゃあ小さい怪我などはありますけれど、そうした経験から子どもが自分で学ぶことも多いんです。ここで遊ばせることの意味を理解してくださる方に遊びに来てほしいです」


・全くその通り

1億総批評家といわれる現代である。ネットニュースなど眺めていると、世の中は理不尽なクレームと揚げ足取りに溢れているように感じる。私が最初に「いいのかコレ?」と思った理由は、この公園がそういった輩の攻撃の対象になってしまいそうに見えたからだ。

ハッキリいうと、例えば「ここで木のぼりをしたら子供が怪我をした。責任者を出せ。賠償金を払え」と言い出す親がいるのではないかと思ったのである。そんな奴にここを潰されるようでは我が国に未来はないぞ……と勝手に憤っていたワケだ。

しかしお2人の話を聞いて、世の中そんなに捨てたもんではないようだと知った。「1人でも多くの子どもたちに自由な遊びを経験してほしいが、大人にはまずここの在り方を理解してほしい。その上で賛同した人が利用すればいい」とのこと、全くもってその通りである。

綺麗に整備された公園がいい人はそっちへ行けばいいのだし、どちらが正しいということでは決してない。大事なのは自分が世間のスタンダードなどと思わないこと。そして異なる考えを否定しないことなのではないだろうか。


・親も子も日常的に来れるところ


──赤ちゃん連れのお母さんが多いですね。

「昼間はここで自主保育をされる方がいますのでね。そのために世田谷へ引っ越してくるご家族もありますよ。こんなデコボコ地面って東京にはなかなかないので、ただ歩くだけで子供の発育にいいんです。ここで育った子はみんな運動神経がいいような気がします」

──子供たちは何歳くらいまでここを利用するんですか?

「夕方には中高生がやってきます。ここで育った子たちが多いです。思春期なので色々抱えている子もいますけど、みんなここを愛している子ばかりなので結果的には助けてくれます。小さい子の面倒をよく見ますしね」

──親同士の付き合いも深まりそうですね。

「私たちはもうアラ還ですが……今でもここへ通っていますからね(笑)。小さい子を持つ親がよその子を見て「そのうちこうなるんだな」と思ったり。「子供が学校へ行かないんだよね」と悩みを言えば、「そういう時期あるよね〜」と周りが答える。親も子も、ここへ来て色々なことを発散できるんですよ。こういうところがあると、お互い心安らかになれると思います」

──地域で子育てをしている感じですね。

「そうですね。「子育て中ここでお世話になったから」という思いで手伝っているスタッフや、地域の方の協力でプレーパークは成り立っています。子供にとって遊ぶことは、寝る・食べると同じくらい大事なことですから。多くの大人がそこに気付いてくれればいいなと思います」

・でも……来ないで

「ここへ通うために産もうかしら」と本気で考えるほどの素敵空間だった羽根木プレーパーク。しかし世話人のお2人は少し困った顔をして「記事に“来てくれ”と書かないでほしい」と言うのだ。

ここは地域の子が日常的に集える大切な場所である。ボランティアが主体となって運営しているため慢性的な人手不足だ。遊園地感覚で休日に区外からドッと人が来ると対応し切れないというのが理由。言われてみれば確かにそれだと本来の趣旨から外れてしまう……!


しかしご安心いただきたい。先に述べたように、都内には100カ所近くの『冒険遊び場』が存在している。自宅近くの遊び場へ行けば地元のつながりもできるし一石二鳥である。子育て中の皆さんは今すぐ最寄りの遊び場をチェックだ!


最後に、「冒険遊び場は、創る楽しみもある」と語るお2人。


「もしも近くにこうした遊び場がなかったら、つくることも夢ではありません。この場もそうやってできたのだから」


・今回ご紹介した施設の詳細データ

施設名 羽根木プレーパーク
住所 東京都世田谷区代田4-38-52 羽根木公園内
休園日 火曜日、夏季・年末年始の約1週間(詳細はHPを)
※お手伝い希望者は大歓迎

Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

▼小屋に見える建造物は「遊具」である

▼見事な手作りのすべり台

▼子供って隅っこが好きだよね

▼この日は包丁研ぎ体験が行われていた