2019年も7月に入り夏目前だが、まだまだ全国的に広い範囲で梅雨空が続きそうである。梅雨── 外へ出かけるのが億劫(おっくう)になる時期だが、逆に考えるんだ。思う存分引きこもれるではないか! 引きこもって何をするか……そりゃモチのロン、映画でしょ!
どうせなら映画の中で思い切り雨に浸ろう。ということで、今回は筆者の独断と偏見で「雨が印象的な映画10本」を選出したゾ!
1.『七人の侍』(1954年 / 日本)
時は戦国時代。野盗と化した野武士たちから村を守るため、農民たちは用心棒を雇うことを決意する。かくして集められたのは、個性豊かな七人の侍!
「アメリカの西部劇を超える娯楽映画を作るぞオラァ!」と巨匠・黒澤明監督が意気込んで作った日本映画の金字塔。3時間以上もある長編だが、ダイナミックなアクションに計算しつくされた脚本、そして伝説級の名優たちによる熱演に時間なんか忘れてしまうほどの面白さだ。
終盤の大合戦のシーンは土砂降りの雨の中で繰り広げられるが、迫力を増すために雨に墨汁を混ぜたという逸話はあまりにも有名。
2.『IT / イット “それ” が見えたら、終わり。』(2017年 / アメリカ)
早速、一部地域で梅雨入りしたと聞いて飛んできました🎈🤡#イット見えたら終わり pic.twitter.com/YEAtfQyEwn
— ワーナー ブラザース ジャパン (@warnerjp) May 14, 2019
人間の弱さにつけ込む不気味なピエロ「ペニーワイズ」に翻弄される少年少女たちを描いた、スティーブン・キング原作のコメディ映画。
繰り返します、コメディ映画です。そりゃあ1990年代に公開されたオリジナル版と同様、ホラー要素は多分にあるし、雨の中で始まる冒頭のシーンは身の毛もよだつほどの恐ろしさだ。だが映画全体のジャンルを数値化すると、6:4でコメディ:ホラー映画 だと思っている。
実際、筆者がとある映画祭で鑑賞した際は会場がひっくり返るほど爆笑に包まれた。つまるところ “オモシロ怖い映画” だ。さらにボーイ・ミーツ・ガール的な青春要素もあり、本作の少年少女たちが大人になった続編も2019年11月に公開予定。未見の方は今から復習してみては?
3.『ショーシャンクの空に』(1994年 / アメリカ)
妻とその愛人を射殺したという “えん罪” で終身刑の判決を受ける銀行マンのアンディ(ティム・ロビンス)は、ショーシャンク刑務所に服役することになる。そこで出会ったレッド(モーガン・フリーマン)との友情を軸に、刑務所内の人間模様が描かれるヒューマンドラマ。
映画における雨は「悲しみの涙」を演出するために使われることの多い “小道具” だが、本作では「歓喜」「解放」そして「感動の涙」として降り注ぐ。服役中の囚人は、自由に雨に打たれることもできないのだ。雨が持つ憂鬱なイメージを吹っ飛ばす感動作、何度でも観たい!
4.『マグノリア』(1999年 / アメリカ)
ロサンゼルスに住む人々の1日と、その人間模様を描く群像劇。一見、無関係な登場人物たちだが、物語が進行するにつれ互いの運命が徐々に絡みあい始め── 。
ネタバレになるのであまり多くは語らないことにするが、例の土砂降りシーンを初めて見た時はビックラこきました。しかも全くもってその意味がわからず “2度と観ないクソ映画” に認定したほどでした。本当にコレがベルリン映画祭グランプリ作品?
ところが! 年月が経つと不思議ともう1度見たくなり、再鑑賞してみたらアラ不思議、感動で号泣。今では大のお気に入りの映画だ。ちなみに監督のポール・トーマス・アンダーソンが影響を受けたと公言している映画『ショート・カッツ』(これまた大傑作)も合わせて見るとなおヨシ。
5.『殺人の追憶』(2003年 / 韓国)
韓国・ソウル近郊の農村で起こった女性の猟奇的殺人事件を解決するために3人の刑事が犯人を追うものの、捜査は進展せず……。やがて第2、第3の事件が起きてしまうが、警察は「雨の日」に犯行が行われていることに気付き、少しずつ事件の真相に近づいていく──。
タイトルからあらすじまで物騒な映画でしょう? 実際ゾクッとする描写も多いのだが完全なるギャグシーンも多く、緩急つけて鑑賞者の感情を揺さぶってくる。何とも言えない余韻を残す大雨のラストシーンも秀逸な傑作サスペンスだ。
この作品で ”韓国映画の面白さは異常” と認識させられたと同時に、ポン・ジュノ監督と名優ソン・ガンホのファンとなったのは筆者だけではないだろう。ちなみに本作は韓国で実際に起きた未解決連続殺人事件を元にしている。ヒャッ!
6.『言の葉の庭』(2013年 / 日本)
舞台は、梅雨を迎えた東京。靴職人を目指す高校生・タカオは、雨の朝は学校をさぼり、日本庭園で靴のスケッチを描いている。そんなある日、27歳のユキノと出会う。雨の日だけ再会を繰り返す2人は徐々に心を通わせていくが——。
「え……雨がリアル(現実)よりキレイなんですけど……!」と絶対に感じてしまうほど美しい雨のシーンが全編にわたって描かれる新海誠監督のアニメーション作品。もはや「雨が主役」と言ってもいいほど雨を堪能できる、梅雨にはピッタリの映画だ。
コレを超える雨のアニメーション映画はもうないな……と思っていたら、新海誠監督の新作で7月19日公開『天気の子』の予告編を見ると、こちらの雨もエグイほど美しい! はやく観たい~!
7.『きみに読む物語』(2005年 / アメリカ)
認知症の老女アリーに “ある本” を読み聞かせする高齢の男性デューク。それは、恋に落ちた2人の若い男女に関する物語だった。波乱万丈な人生を送る男女の “物語” に夢中になるアリーだが……おっと、ネタバレ寸前! って、超有名な映画だから知ってるかな?
本作は今、ノリに乗っているライアン・ゴズリングとレイチェル・マクアダムスが若かりし頃に共演していた感動ラブストーリー。「もう雨とかどうでもいいから!」と、土砂降りの中で唇を求めあうシーンは、なぜかくもロマンチックなのだろうか。
インディペンデント映画のカリスマ、ジョン・カザヴェテスの息子であるニック・カザヴェテスが監督を務め、その母親で大女優のジーナ・ローランズが脇を固めているのが映画ファンにはたまらんです。
8.『恐怖の報酬』(1977年 / アメリカ)
爆薬「ニトログリセリン」を積んだトラックをおっさん達が運転して目的地まで運ぶだけ──という非常にシンプルなストーリー。え、それだけ? と思ってしまうかもしれないが、ニトログリセリンとは少しでも衝撃を与えると大爆発を起こす、ウルトラデリケートな爆薬だ。
そんな危険物をトラックに積み、命懸けでデコボコ道や倒木を越えたり、はては豪雨に襲われながら崩落寸前のつり橋を通ったり……。1歩間違えればすぐにあの世生き! シンプルなストーリーながらハラハラ、ドキドキさせられる名作ロードムービーだ。
ちなみに本作は1953年に公開されたフランス映画のリメイク版で、オリジナル版には『スーパーマリオ』のマリオにそっくりな小太りでちょびヒゲのおっさんが登場するが、役名は「ルイージ」。そして、そのルイージの相方の名前が「マリオ」である。ややこしくてマンマミーヤ!
・あなたの選ぶ「雨映画」は?
以上、私が独断と偏見で選んだ「雨が印象的な映画8選」だ。今回は割とメジャーな作品を選びつつも、タイトルに「雨」を含む定番の映画は除外させていただいた。(『雨に唄えば』『シェルブールの雨傘』『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』とかね)
それにしても、ナゼあの名作映画が入っていないのだ!? という声もあるだろうが、そういった異論は大いに認める。 あなたが選ぶ「雨が印象的な映画」は何だろうか? 憂鬱な梅雨の季節は、映画で乗り切ろう。
執筆:ショーン
Photo:RocketNews24.
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