ロケットニュース24

禁煙外来で「呼気検査の数値」を見て言葉を失った / 受動喫煙の害が想像以上にヤバくて軽く引く

2018年12月11日

その数値が出た瞬間、診察室に変な空気が流れた。1分前に「タバコは吸ってないです」と医師に告げたにもかかわらず、検査機器は発言を裏切る数値を弾き出してきたのだから。うん? なんで?

──それは私にとって2回目の禁煙外来でのこと。前回の記事で初回の様子をお伝えした際、約3カ月で5回通院することや、禁煙外来に行くたびに「呼気の一酸化炭素濃度検査」を受けることをお伝えしたのだが……覚えておられるだろうか? その呼気一酸化炭素濃度検査の数値が、明らかにおかしかったのだ。

禁煙外来での呼気一酸化炭素濃度検査を超噛み砕いて説明すると、「タバコを吸っているかどうかが一発でバレる検査」ということになるかと思う。タバコには200種類以上の有害物質が含まれており、有名なニコチンやタールの他に一酸化炭素もある。

つまり、喫煙後の呼気には一酸化炭素が含まれており、機器にフーーーっと息を吹きかけると、数値でバレてしまうのだ。タバコを吸っていない人は大体0〜7PPMらしいが、私がそのときに弾き出した数値は……



9PPM


ちなみに、タバコを吸っていない人でも検査の前に焼き肉屋等へ行ったりしていると、高い数値が出る場合があるそうだ。しかし私は、焼き肉屋にも焼き鳥屋にも寄った覚えはない。じゃあ、一体なぜ……?

念のために言っておくと、私は病院(お茶の水循環器内科)へ行く数日前から1本たりとも吸っていない。私のボケが始まっていて「吸ったことを忘れている」という可能性がゼロとは言えないが、吸った記憶は本当に無い。「記憶は無い」と言うと途端に嘘くさくなるな。しかし本当だ。本当に本当に吸っていないのだ


ここで!


医師の五十嵐健祐先生が教えてくれたのが「受動喫煙の可能性」。受動喫煙というと、「タバコを吸っている人の側にいることで副流煙を吸っちゃうヤツ」くらいに認識している人が多いかと思う。私もそうだった。

しかしながら、受動喫煙はそれだけではないらしい。当編集部の喫煙者・原田たかしを例にとって説明するならば、こんな感じだ。

原田は仕事中に何度か職場の喫煙所へ行き、タバコを吸う。その際、原田がどれだけタバコを吸おうとも、オフィスで仕事をしている人が煙を感じることはない。喫煙所と仕事をするスペースは、ドアで仕切られているからだ。

やがてタバコを吸い終えた原田は、仕事スペースに戻ってくる。

そして当たり前だが、原田は仕事中に呼吸をする。つまり……

息を吐く。


そして、同じ空間にいる私が……

息を吸う。


先生によれば、これも受動喫煙の1つだという。つまり、タバコを吸った後の喫煙者の呼気にも有害物質が含まれているため、たとえ喫煙所がドアで仕切られていても非喫煙者へのタバコの影響がゼロなわけじゃないのだとか。

もう少しだけ言うと、受動喫煙には副流煙による受動喫煙と、喫煙者が吐き出した煙(呼出煙)による受動喫煙の2種類があるらしい。副流煙だけが受動喫煙ではなかったのだ。しかも! その呼出煙から最低8時間も一酸化炭素が出ているという研究結果があるというからゾッとするではないか……。

このような弊害は最近メディアでもよく取り上げられており、たとえば西日本新聞が掲載している「【産業医が診る働き方改革】<14>呼気からの三次喫煙」もその1つなので、興味がある人は確認してみてくれ。


──そんなワケで、私にとって2回目となった禁煙外来は「受動喫煙の弊害」が何よりも印象に残ったのだが、かといって「数値がおかしかった原因は受動喫煙」と断定できた訳ではない。証拠はない。あくまで可能性の1つというだけである。しかしよく考えれば、私の職場は……


喫煙率がめちゃくちゃ高い!


そして、禁煙外来で呼気の検査を受ける20分ほど前まで私は職場にいたということだけ伝えておこう。それから最後にもう1度言っておきたいが、私は本当にその日もその前日も1本たりともタバコを吸っていない。証拠というわけではないが、日記を残しているから次のページで確認してほしい。

協力:医療法人社団 お茶会お茶の水循環器内科
参考リンク:ファイザー「禁煙外来」、西日本新聞NCBI(英語)
Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.


〜ありのままの禁煙日記〜


・11月12日(月)

今日からいよいよチャンピックス(禁煙補助薬)の量が増える。山場となるチャンピックス内服8日目だ。ここからが勝負という気合で臨んだので、1度も吸いたいと思うことはなかった。眠気やイライラ、吐き気等も無し。【吸った本数:0本】


・11月13日(火)

前日からの良い流れのまま、チャンピックス内服9日目。明日は禁煙外来に行くからというのもあり、「吸わない」という気持ちがより高まる。ここで吸ったら恐らく明日も吸いたくなって、明日吸ったら呼気検査の数値でバレるから。【吸った本数:0本】


・11月14日(水)

チャンピックス内服10日目。夕方、禁煙外来へ向かうために会社の最寄り駅から電車に乗る。そのとき、隣の座席に座った人のタバコ臭さが気になって仕方がない。席を立ちたいほど臭い。自分がタバコを吸っていたときは、こんな匂いを撒き散らしていたのかと思うと愕然(がくぜん)とした。そして、呼気一酸化炭素濃度検査の結果を見てさらに愕然とした。

9PPMって……意味が分からない。吸ってないのに……。受動喫煙の影響だろうか? どちらにせよ、受動喫煙は思ったよりもヤバいっぽい。【吸った本数:0本】


・11月15日(木)

チャンピックス内服11日目。昨日の電車の中で味わった「タバコの臭さ」を思い出すと、とてもじゃないが吸う気持ちにはなれない。今の私は、たとえチャンピックスがなくてもタバコを吸わないだろう。【吸った本数:0本】


・11月16日(金)

チャンピックス内服12日目。気がつくと、近所のローソンにある缶のフリスクを全制覇していた。フリスクがあれば何とかなる。

ただ相変わらず、席に座りっぱなしなのが辛い。前はタバコ休憩のために席を立っていたけど、今はそれが出来なくなったから。【吸った本数:0本】


・11月17日(土)

チャンピックス内服13日目。今日、自分史上最高にウマい牡蠣フライに巡りあう。牡蠣は前から好きなのだが、今日の牡蠣フライは特にウマい。私の禁煙が続いているから、カキの味がより分かるってのもあるんだろうか? よく分からんが、めちゃくちゃウマい。【吸った本数:0本】


・11月18日(日)

チャンピックス内服14日目。昨日は誕生日だったので、今日は鉄板焼きへ。禁煙して食べる肉はまた格別。ほんとタバコをやめて良かった。タバコを吸っているときは喫煙席が空くまで待っていたけど、なんでそんなアホなことをしていたんだろうか? 料理の味を堪能するなら、禁煙席の方が絶対に良いのに……。【吸った本数:0本】


・11月19日(月)

チャンピックス内服15日目。今日で禁煙して1週間。もはや余裕。「もうチャンピックスは不要なのではないか?」って気さえする。一方で、「もし今回失敗した時のことを考えて、チャンピックスを飲まずに取っておいた方がいいんじゃないの?」って気持ちが芽生える。

しかし、それは甘えだ。退路を断つ意味も込めて、今日もチャンピックスを飲む。【吸った本数:0本】


・11月20日(火)

チャンピックス内服16日目。仕事で煮詰まるとタバコを吸いたくなるのはなぜだろう。吸ったところで何も解決しないのに吸いたくなる。おそらく、今の状況から逃げたいという気持ちがタバコを吸わせているのだろう。

──と分かっているのに、今日の夜はどうしても吸いたくなった。しかし耐える。夜に吸っても、家に帰って妻にバレる可能性が高いから。【吸った本数:0本】


・11月21日(水)

チャンピックス内服17日目。朝起きたと同時に、「昨日の夜にタバコ吸っとけば良かったのに」って気持ちが芽生える。その気持ちを踏み潰すように、朝はチャンピックスを飲んで職場へ。

会社に着いて仕事をしていると、昨日の “吸いたい欲” がまだ残っていることに気づく。これを抹殺するために、どうすればいいのだろうか? ……と考えた結果、タバコを吸う。タバコを吸いたいとかじゃなくて、そういう欲から自由になりたいのだ。

最初のひと口は、罪悪感よりも解放感の方がはるかに強い。しかしながら、チャンピックスを飲んでいるため、1本吸い終わって少し経ったら気持ち悪くなった……にもかかわらず、“吸いたい欲” がまだ残っており、間をあけて2本ほど吸う。

そんなことをしていた結果、夜になったら吐き気に襲われた。初回の禁煙外来で処方してもらった「吐き気止め」を飲もうか悩むが、結局飲まずに耐える。【吸った本数:3本】


・11月22日(木)

今日は朝からお腹の調子が悪い。なぜだろうか? よく分からない。とにかく、昨日の吐き気を味わいたくないから、今日の朝はチャンピックスを飲まずに家を出る。職場に着く前にカフェに寄り、コーヒーとともに一服。実に清々しい朝だ。馴染み深い毎日が戻ってきた。【吸った本数:22本】


・11月23日(金)

今日は勤労感謝の日。自分で自分の勤労に感謝するため、チャンピックスを抜く。朝から喫茶店に行ってタバコを吸っているだけで、祝日の “お祝い感” をより一層感じられる。結局のところ、タバコを吸うと精神面での健康度は増しているのではないか?

タバコを吸っていようが止めていようが人間はいずれ死ぬのだから、精神的に健康な状態で私は生きたい。【吸った本数:18本】


・11月24日(土)

伸び切った糸を巻き取らないといけないと思いながらも、どうにも出来ない。喫煙欲を縛るはずだった糸が、どんどん伸びていく。

自分の心の中に流れる “タバコを吸いたい気持ち” なんて小川のせせらぎみたいなものかと思っていたが、いつの間にかダムの放流みたいなっているようだ。逆らって泳げない。【吸った本数:6本】


・11月25日(日)

このままじゃダメだと思い、秋葉原までVapeを買いに行く。何かが必要だ。ダムの流れを止める何かが。タバコを止めるための秘策が。Vapeならば……Vapeならば……! 何とかしてくれるのではないか。私は今、陵南のメンバーが仙道を見るような目で、Vapeを見ている。

明日から、こいつを投入して一気に挽回しよう。【吸った本数:8本】


・11月26日(月)

1週間でもっとも気合が必要な月曜日の朝。じゃあ気合を入れるために何が必要なのか? 必然的に、出勤前にカフェへ寄ってタバコを吸うという結論にたどり着く。Vapeじゃなくて紙巻きの方。Vapeは初めてだから、説明書を読んだり等が面倒くさい。【吸った本数:12本】


・11月27日(火)

Vapeがどうとかじゃなく、原点に戻る必要がある。今は禁煙外来の治療期間だ。したがって、チャンピックス服用を再開することから始めよう。そんな気持ちで、朝にチャンピックスを飲んで出勤。しばらく間が空いてしまったが、今日でチャンピックス内服18日目だ。

そのおかげで、今日は紙巻きタバコを吸おうという気持ちに全くならない。チャンピックスを飲んだ後にタバコを吸う気持ち悪さを覚えているから。Vapeも、説明書を読むのが面倒くさくて吸う気にならない。

数日の間に大きく失点してしまったものの、今日から切り替えて行こう。やり直しはいくらでも出来る。【吸った本数:0本】


・11月28日(水)

チャンピックス内服19日目。今日は3回目の禁煙外来。先生に「禁煙は順調ですか?」と聞かれて、罪悪感を覚えながら「はい」と答える。次回は自信を持って「はい」と答えられるようにしたい。

そして今回の一酸化炭素呼気検査は3PPM。問題なし。余裕だ。

先生の話を聞いて禁煙へのモチベーションがますます高まったので、この勢いのまま突っ走る。【吸った本数:0本】


・11月29日(木)

チャンピックス内服20日目。昨日、禁煙外来に行ってきたばかりということもあり、今日は気合が違う。絶対にタバコを吸うもんかという気持ちで職場に向かったら、1本も吸う気にならなかった。禁煙は気合があれば何とかなる。ただ、気合は長続きしない。それが問題だ。【吸った本数:0本】


・11月30日(金)

チャンピックス内服21日目。タバコを吸いたいとかじゃなくて、頭を切り替える何かが必要だ。1カ月前は、タバコがそれだった。でも今は使えない。チャンピックスを飲んでいるから。じゃあ、頭を切り替えるにはどうしたらいいんだろうか? YAPPARI TABAKO GA HITSUYOUDA【吸った本数:0本】


──以上。

なお、11月12より前の日記は、過去の記事「禁煙外来に行ってみたらこうだった / タバコを絶対にやめると決意してから1週間の全記録」に記載しているから、1カ月間すべての記録が気になる人は、そちらを確認してほしい。

・1カ月を振り返って

というわけで、11月30日の時点で私が禁煙外来に通いちょうど1カ月になった。振り返ってみると、どう考えても順風満帆とは言い難い。しかしながら、「失敗も含めてすべて記載した方が『タバコをやめたい』と思っている人にとっては参考になるのでは?」という考えから、当時の状況等をありのままに記録した次第だ。

そしてもちろん、今現在も禁煙チャレンジは継続中。今後どうなるかは私も分からないのだが、どのような結果になっても必ず報告しよう。

協力:医療法人社団 お茶会お茶の水循環器内科
参考リンク:ファイザー「禁煙外来」、西日本新聞NCBI(英語)
Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.

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