好きな食べ物を選べるとしたら、何が食べたい? 死に瀕したときにそう聞かれたら、あなたはなんと答えるだろうか? ある男性も、救急隊員からこの質問を投げかけられた。
男性がマクドナルドの製品の名をあげると、救急隊員はすぐさま店へ直行した……。
2018年9月、豪クイーンズランドの救急サービスが、ガン患者であるロン・マッカートニーさんを病院へ搬送した。終末期の緩和ケアを受けるために病院へ向かうロンさんは、二度と家に帰ることがない状態だったという。
彼とともに救急車に乗っていたのが、救急隊員のケイト・ハナフィさんとハンナ・ホズウェルさんだ。ロンさんが2日間何も食べていないことを知った2人は、彼に「好きな食べ物を選べるとしたら、何が食べたいですか?」と問いかけた。ロンさんと妻シャロンさんはニッコリ微笑むと、口を揃えてこう答えたそうだ。
「マクドナルドのキャラメルサンデー」
そこで救急車は、街のマクドナルドへ向かった。車高が高すぎてドライブスルーに入れなかったため、ハナフィさんが店へ出向いてキャラメルサンデーを購入。救急車内で待つロンさんに手渡した。
ロンさんがキャラメルサンデーを食べる写真は、同救急サービスのSNSに投稿されているが、その表情はとても穏やかだ。
ハナフィさんは、豪メディア『Brisbane Times』に対して、当時の様子を次のように話している。
「ロンさんは大変喜んでいました。顔やシャツにアイスクリームを盛大につけ、とびっきりの笑顔を浮かべながら食べていました。ロンさんの様子を見たシャロンさんは、嬉しさのあまり涙ぐんでいました」
このような優しさに触れれば、誰だって笑顔になったり、涙ぐんだりしてしまうだろう。だが、当救急サービスにとっては「珍しい行為」ではないようだ。ハナフィさんは「救急隊員はいつだって同様のことを行っています。初めて会った人に対しても、要求されている以上の献身的な対応を取るようにしています」と述べている。
・ロンさんの娘「父が自力で食べられた最後のもの」
2001年に前立腺ガンだと診断されたロンさんは、最近はマクドナルドのキャラメルサンデーばかりを食べていたそうだ。娘のダニエラさんは「父がキャラメルサンデーを拒んだことはありません」と振り返る。
写真が撮られた数日後にロンさんは亡くなったと伝えられている。ダニエラさんは「父はキャラメルサンデーが食べられたことをとても喜んでいました。父が自分の力で食べられた最後のものでした」と語っている。
ロンさんの写真は、SNS上でも注目を集めている。彼の穏やかな姿に涙したというコメントや、救急隊員の対応への賞賛が寄せられているのだった。
参照元:Instagram @qldambulance、Facebook、Brisbane Times(英語)
執筆:小千谷サチ
▼救急隊員のケイト・ハナフィさんとハンナ・ホズウェルさん。そしてロンさんのご家族。