2020年東京五輪・パラリンピックに向けて、政府が酷暑対策などでサマータイムを導入するかどうかが今世間を賑わせている。確かにここしばらくのヤバ過ぎる暑さ的に、何かしらの対策は必要だろう。

ただ、その対策としてサマータイムを導入するアイディアについては、どうもネットではあまり肯定的な意見を見かけない。そこにきて先日、スポーツ報知が「五輪を契機に恒久的に夏時間を運用する方針である」と報じたことでさらに議論が活発化している。

・サマータイムあるある

ここで、実際にサマータイムが恒久化されているアメリカに10年弱住んでいた記者(江川)目線での「サマータイムあるある」を簡単な解説付きで紹介しようと思う。

前もって断っておくが、今回の「あるある」は、あくまで記者がカリフォルニア州はロサンゼルスおよびサンフランシスコの両都市に住んでいた時に記者の目についた範囲内でのこと。当然違う意見もあるとした上で、科学的、統計的な根拠は全く無いものであることをご了承いただきたい。


その1: 開始後1週間くらいはマジで朝が辛い

記者のサマータイムに関する印象だけでなく、今も毎年経験している現地の知人たちからも一番最初に出てくるのはこの「朝が辛い」だ。

朝は可能な限りギリギリまで寝ていたい派の記者。類は友を呼ぶではないが、知人にも似たようなスタイルが多い。そんな者たちからすると、1時間も早く起きなければならないというのは、ぶっちゃけ夏の酷暑と同じくらい辛い

まだ10代後半だった頃は2日くらいで慣れた記憶があるが、20代半ば辺りから1週間は昼間に本調子を出せなくなり、その傾向は年々強くなっていったように感じる。30過ぎた今、体が慣れるまでにはきっともっとかかるのだろう。


その2:開始日を間違えると大変なことになる

単に会社や学校が独自に始業時間を早めるのであれば別だが、行政がサマータイムを導入したら公共交通機関のダイヤも一気に変わる。特にヤバいのが、通勤や通学に朝と夕方のラッシュの時間帯にしか運行されていない直通運転の通勤列車などを利用している場合だ。

日本では2時間も早める計画のようだし「朝8時だと思って駅に着いたら時計上は実はもう朝10時」みたいなことになれば、次の直通運転は夕方まで無いみたいな悲劇も起きかねないのではないだろうか。


その3:開始日を間違えて寝坊するヤツが大人も子供も結構いる

もはやこれは開始日の風物詩レベルで頻発する。誰かが来ていなくても、大体みんな笑って「察する」のだ。そのため、平時にうっかり遅刻したときほど叱責は受けないが、学校なり会社の制度上のペナルティは受けることになる。そしてこの時ほどサマータイムを恨む瞬間は他に無い


その4:そこまで不満を募らせているわけでもない

ここまでだとサマータイムによって多大なストレスを抱え込んでいる感がしなくもないが、実のところ そうでもない。記者の感覚だと、せいぜいが「今日ゴミの日だけど出すの面倒」や「公共料金の振込みで銀行に行くの面倒」とかと同じ程度。一度目覚めてしまえば後は普通の1日と大差なく、昼を過ぎる頃には意識すらしなかった。


その5:終わる時は気が楽

上述のとおり、開始日を間違えると一大事なため、開始数日前から皆そわそわし始める。話題はもっぱらサマータイム関連になり、知人たちと「サマータイムって来週からだよね?」と確認しあったりする。だが、終わるときについては逆に無頓着だった印象だ。

アメリカのサマータイムが終わるのは11月なのだが、ぶっちゃけその頃には今がサマータイム中であることすら意識しなくなっていた。また、終わったからといって習慣になってしまった「1時間早い起床時間」が急に戻るわけじゃないので、やはり数日間はそのままのサイクルで生活が続く。


その6:終了日を間違えて1時間前行動するヤツが大人も子供も結構いる

開始時同様に、終了日に知らずに1時間前行動をするヤツが発生するのもお約束だった。そして周囲も本人も大体笑って「察する」流れも同じ。記者も間違えたことがあったが、1時間前行動を無自覚にしているだけなので、特に問題は生じないのだ。


その7:1時間得した感

「特に問題は生じない」と上で書いたが、それどころか気づいた段階でなんだか1時間得した気分でうれしくなる。特にテンションがあがるのが朝で、目覚めた後で1時間布団の中でごろごろしたり起きてもテレビを見たりするのだ。しかしこの1時間のアドバンテージは、遠からず夜更かしのツケで一瞬で消え去る。


──以上。


記者目線での「サマータイムあるある」はこんな感じだが、日本で検討中と言われているものは開始日に2時間も早めるというもの。毎年サマータイムが実施されている国において1時間早めるだけでもそれなりにあたふたすることを考えると、サマータイム未経験者が大多数と思われる今の日本で、いきなり2時間は嫌な予感しかしない。

朝起きる時間だけでも例えば朝7時に起きるのが、翌日から急に朝5時起きになるのと一緒だからだ。時計の表記上は同じだったとしてもそんなの肉体には関係ない。記者としては絶対具合悪くする自信がある。

・個人レベルでメリットは感じなかった

また、よく言われる「日光の有効活用」については、学生時代も社会人になってからも個人レベルでの実感はなかった。国全体で見ると何かあるのかもしれないが、どうせ昼間でも教室内やオフィスで照明は必須。いつ始業しようが人がいる間はつけっぱなしだ。

多少あるとすればクーラーの使用頻度だが、ぶっちゃけ日が出ていなくてもロサンゼルスは暑いので空調は部屋に人がいる限り24時間フル稼働だった。ここしばらくの日本の気候は湿度のせいかもっと暑く感じるので、照明と同様に活動開始時間に関係なく家にいる間はつけっぱなしという方も多いのではないだろうか。

ということで、現在政府が検討中のサマータイム。実際にどうなるのか注目したいが、もし導入されたら初日の早起きは滅茶苦茶辛いだろうなぁ……。

参照元:スポーツ報知
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.