学生時代までの「当たり前」が通用しないのが社会人だ。場合によっては黒も白になるし、不条理を飲みこまないといけないことも多い。学生時代を、まっすぐまっすぐきた人ほどそのギャップに戸惑うのではないだろうか?
・新卒1年目、さっそく精神的にキタ
私(沢井メグ)は環境柄、大学生と知り合う機会が多く、毎年4月、5月頃になると「卒業生うまくやってるかなー」とふと気になったりする。というのも、自分が新卒1年目、春にさっそく病みかけたからである。しかし、あることをキッカケに持ち直すことができた。その話を紹介したい。
はじめにお断りしておくが、宗教的なアレでも自己啓発的なアレでもない。そもそも職場がマジLOVE自己啓発で、本当にあれが苦手でした……。
・「好きだったこと」がわからなくなるくらいに
話し出すと長くなるのでザックリまとめると、同時に複数部署からボコボコ仕事が振ってきて、完全にタスクオーバー。パンク状態だったのだ。あっちを先にやると、こっちからは文句が出る。何なら「1年目のくせに、あの部署の仕事に携わって調子に乗っている」くらいの勢い。乗ってねーわ(涙)
そこそこ図太くなった今なら適当に流せるが、よく言えば素直、悪く言えばマジメ系バカだった新卒1年目、というか1~2カ月の自分にはそれがキツかった。直属の上司は下に無関心なお方だったようで、体制的に誰も私の仕事量や内容を把握しておらず、自分もいつどこから仕事が来るかもわからなかったのだ。
あっという間に、パンク状態になった私。何かの感情を持て余して、思春期よろしく家の風呂場のドアを破壊してしまったり、なぜか好きで頑張って勉強していた中国語が耳に入るだけで「ショボーン(´;ω;`)」となる始末。もう好きなことが好きかどうかもわからなくなっていた。
当時を知る人からは「あのときヤバかったよねー」と今でも言われるくらいだ。
・限界3秒前だった自分がやってみたこと
しかし、突然、9月頃に元気を取り戻した! 他にも問題が発生し、同僚の間で「これは上司に状況を把握してもらわないとマズイ」という話になったのだ。その流れに波乗りピカチュウ。私も、いまどういう流れで仕事が来て、何をしているか、どういうフローなのかなどなどをまとめてみることにした。
最初は「上司に、今こういう状態である」と説明するために作り始めた資料。だが、だんだん目的が変わってきた。ある日、ふとこう思ったのである。
「これ引き継ぎ資料にも使えそうだなぁ」
↓
「ってことは、これがあれば、明日からバックレても大丈夫なんじゃないか」
↓
「ヤバくなったら逃げだしても大丈夫なんじゃないか」
↓
「せや、ヤバくなったら逃げよう!」
はからずとも「いつでも辞められる体制」を構築され、「辞めてもいいんだ」と自覚するようになったのである。
・逃げ道ができたらみるみる元気に! 「好き」も思い出した
そうこうしているうちに、みるみる元気に! 突然「私、宝塚好きやったやん!」と思い出し、次の瞬間にはチケットを手配していた。手芸などの趣味もボチボチと再開。先輩と一緒に国内旅行や台湾旅行に行ったりもした。
悶々と病んでいた時期は「新卒で失敗したら人生終わり」「楽な仕事なんてない」「甘えているだけかも」という強迫観念みたいなものに、とらわれていたのだと思う。突然辞めたら迷惑もかかるかも……。そういう一面があることは否定しないが、だからと言って我慢して我慢して病気や死に追いやられてしまっては元も子もない。
・「ヤバくなったら逃げる」はごくごく自然なこと
上述はあくまで個人の経験であり、仕事の整理をしたからと言って、誰でもラクになるとは限らないが、ひとつ言えることがある。「害になるものがあるなら、そこから離れる」というのは、動物にでも言えるごくごく自然なことではないだろうか。逃げることは悪いことじゃないはず。
ただ学生時代を「いい子」で過ごしてきた人ほど「逃げる」という考えに至りづらいのではないだろうか。だから、毎年この時期になると卒業生がどうしているか気がかりなのだ。
ちなみにその職場では4~5年働いた。退職理由も前向きなもので、一緒に頑張った先輩方や同僚に感謝して辞めることができ、遠く離れて住む今でもときどき会う仲だ。あのとき持ち直して良かったと思う。また例のファイルも引き継ぎ資料として渡すことができた……役に立っているかどうかはわからないけれど。
執筆:沢井メグ
Photo:Rocketnews24.