花火のように一瞬だけ激しく燃え上がるのが夏の恋である。「ひと夏のアバンチュール」に憧れて危険な恋に惹かれてしまうのは、決して好奇心旺盛な男女だけではないだろう。ふとした瞬間に、誰もが「恋の自由研究」にハマってしまう可能性がある。
さて今回は、夏が終わってしまう前に私(筆者)が20歳の頃に経験した「ひと夏の思い出」を紹介したい。内容をズバリ言ってしまうと、暗闇で出会ったハスキーボイスのお姉さんに「〇〇したらキスしてやるよ」と言われた話である!
・男だけで夜景スポットへ
忘れもしない、ハスキーボイスのお姉さんに出会ったのは2000年の夏。大学生だった私は、地元の友人たちとドライブに出かけていた。メンバーは私も含めて5人、全員男である。目的地は埼玉県を代表する夜景スポット。花火セットを購入して舞い上がっていた夜であった。
山道をグングン進んで頂上の駐車スペースに到着。ここからさらに階段で展望台の頂上を目指す。明かりがゼロで階段から先は真っ暗だが、その分、展望台に上がった時の感動が大きいのだ。ドキドキしながら1段ずつ慎重に階段を上がっていくと……おおおおお!
・暗闇の奥から現れたお姉さん
想像以上の景色だった。満点の星空も街全体を見渡せるパノラマビューも完璧。さらには夜風も最高に気持ちよく、それぞれが「マジでヤベーーー」とか言いながら夜景を満喫していた。その時である……!
「ねぇ。こんなに星空がキレイなのに、何で “ヤバイ” の?」
──暗闇の奥から女性の声が。真っ暗なので顔はよく見えないが、どうやら女性が2人いるようだ。かすれたセクシーボイスを瞬時に分析した結果、声の主は『夢見る少女じゃいられない』の相川七瀬さんのような年上女性だろう。予想外の展開に緊張が走る……!
ドキドキしながら控え目に「すみません。ヤバイっていうのは“スゴイ”って意味なんです」と答えるのが精一杯。暗闇とハスキーボイスのコラボレーションは、男子学生のイマジネーションを強烈に刺激するのだ。その後、自然な流れでお姉さんたちと花火をすることになったのだが……。
・キスしてやるよ
いきなりハスキーボイスで「ロケット花火を口にくわえて発射したら……キスしてやるよ」である。マジかよ……正直ロケット花火を口にくわえるのは怖くないが、知らないお姉さんとキスをするのが怖いと思ってしまった。きっと友人たちも同じ気持ちでいるだろう……しかし!
シュシュシュシュパァァァアアアーーーンッ!!
すぐ隣から爆発音ッ! どうやら友人がロケット花火を口にくわえたまま火をつけたが、口を開けるタイミングが分からず、顔面まるごと爆発させたようだ。圧倒的なスピード感に周囲は騒然としたが、お姉さんから頂いたのは「そんな自爆は誰も期待していない」の一言であった。
・ひと夏の思い出
結果、お姉さんからキスを許された男はいなかったが、インスタントカメラで仲良く記念撮影をして解散。後日、出来上がった写真を確認してみると、相川七瀬さんというよりはジャガー横田さんのような鋭い眼光の女性が2人並んでいた……。
誰もが開放的な気分になる夏。ひと夏の恋に憧れて暴走してしまう気持ちも分かるが、くれぐれも切ない思い出にならないよう気をつけていただきたい。なんだか、あのハスキーボイスのお姉さんは、今でも夜景スポットで誰かを待っているような気がする。
Report:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.