よく晴れた七夕の日。私は新宿近辺の某皮膚科に足を運んだ。とても綺麗な受付嬢が、「初診の方はこちらに記入を」と、問診票のようなものを手渡してきた。
そこには人間の全身イラストが描かれており、「症状が現れているのはどの箇所ですか?」との質問が。私は思い切り股間に「○」を付け、「数日前からヒリヒリしている。もしかしたらメラノーマかも……」と書き込んでおいた。そんなマヌケな問診票を受付嬢に手渡すのも恥ずかしいが、命がかかっているのだから仕方ない。
・診察室のベッドの上で
しばらくして、名前が呼ばれた。診察室に入るや否や、私を診察台という名のベッドに案内してくれたのは、とてもとても美しい看護師さんだった。年はおそらくアラフィフか。しかしながらスタイル抜群、まさに美熟女な全身ナース姿の看護師さん。あえて女優に例えるならば、翔田千里(しょうだちさと)さんをスリムにした感じだ。
ベッドに寝転ぶと、千里(ちさと)はうつむき加減で
千里「ここに寝転んで……局部を出して……タオルをかけて……おまちください。準備ができたら……お声掛けください……」
と私に伝え、白いカーテンの奥に消えていった。
千里の言うとおりチ●ポを出し、大きな声で「準備できましたァっ!」と宣言した。すると再びカーテンがシャッと開き、千里と……これまた思わず「ムムッ!」と唸ってしまう、超絶美人な先生が登場したのである。
年はおそらくアラフォーか。あえて女優に例えるならば、少し痩せた「風間ゆみ」さんといった感じで、迫力がある。以下、風間先生とす。
まず、風間先生は、「どのへんがヒリヒリします?」と言いながら、ペロンとタオルをまくし上げた。私はゴロンと横になっているが、私のチ●ポもダランと横にうなだれていた。本当は起立させたほうが説明しやすいのだが、いろいろ問題になりそうなので、不起立状態のまま「ウラの東南方向のホクロです」と暗号めいたことを伝えた。
両手にビニールの手袋をはめた風間先生は、私のチ●ポを優しくつまみ、「ふぅん……」と頷いた。そして、千里に「カメラを」と指示。
カ、カ、カメラ……!? 撮影!? えっ! ええっ!? どういう展開!? ああいう展開!? いいけど……ええっ!?
うろたえる私をよそに、すぐに千里はカメラを持ってきた。
見たところ、普通のデジカメに、「超接写用レンズ」を装着したようなカメラだった。そして、おもむろに風間先生は……チューブ式の、何かドロドロとした液体をカメラのレンズの先端に塗り始めた。それはまるで、ローションのような……もしかしたら本当にローションなのかもしれない。そして!!
ぎゅぅ……
と、カメラの先端を、私のチ●ポのホクロに押し当てた。すぐさま「カチ」っといった、“いかにもコンデジのシャッター音” が聞こえたかと思うと、千里は再びタオルを股間に。そして風間先生は、デジカメの画面を私に見せながら説明し始めた。
風間「羽鳥さん……これは………………シミです」
?
シミ!? そんなわけない。私のパンツには間違いなくシミは付いていなかったはず。仮に起立していたらシミていたかもしれないが、絶対に病院での診察時に「恥ずかしいシミ」を見せてはならぬと、固く自分の心を律し、シミないように気をつけていた。
それなのにシミとは……これぞまさしく濡れ衣(ぬれぎぬ)〜ッ!!
──と思ったら、そのシミ(パンツのシミ)ではなく、私のチ●ポの●(←ほくろ)がシミなのだという。わかりやすく改めて書くと、私がほくろだと思い込んでいたのは、単なるシミ。日焼けしまくったらシミだらけになるよ、の、あのシミらしいのだ。
風間先生の説明によると、こういうことらしい。
・羽鳥のチ●ポにできているのはメラノーマではない。
・その正体は単なるシミ。
・人間、顔はもちろん、腕や全身にシミはできるが、時としてチ●ポにもシミができる。
・特に私くらいの年齢(37)になると増えてくる。
・そして、ヒリヒリしているのは、シミではない。ヒリヒリとシミは別問題。
・何らかの原因(おそらく激しくコスりすぎたから)によりヒリヒリしているだけのヒリヒリ。
・シミの箇所とヒリヒリの箇所が偶然同じだから「ホクロがヒリヒリしている!」と錯覚しているだけ。
・なので、心配しなくて大丈夫。
・しかしながら、もしもこのシミ、あるいは他のシミやほくろが、どんどん大きくなっていったり、異変を感じたら、早めに診せに来て下さい。
──とのことで、なんと嬉しいことにメラノーマではなかったのだ!! 皮膚がんじゃなかったのだ! 死ななくて済んだのだ!! 私は恐怖のメラノーマ疑惑シンドロームから無事に性感……ではなく、無事に生還したのである\(^O^)/
また、「しばらくしたらヒリヒリも治まるでしょう」とのことで、治療薬もナシ。事実、診察から20日経過した今の時点ではヒリヒリしていないので、風間先生の言うとおりになった。ちなみに診察代は1060円ポッキリだ。
・命だいじに
結果的に、私は良かった。なにせ、事実だけを並べれば、「1060円を支払い、チ●ポにできたシミを美しい女医と看護婦さんに見てもらった」だけで済んだのだから。
しかしながら、マジメな話、「ほくろのがん」ことメラノーマ(悪性黒色腫)は、本当に早期発見が重要で、発見が早ければ早いほど助かる確率も高いらしい。疑惑の箇所がチ●ポだからといって、恥ずかしがっていたら文字通り「命取り」なのである。
もしも私が今後、何か少しでもチ●ポの皮膚に異変を感じたら、恥を忍んで、再びこの皮膚科の門をくぐり、1060円を握りしめ、千里と風間先生に診てもらおうと思っている。決して変態的な決意ではなく『チ●ポがん』なんて珍病で死ぬのを防ぐためだ。
最後に、この記事を読んで、ひとりでも自分のチ●ポのシミはもちろん、全身のシミ(ほくろ)、あるいは他人のシミ(ほくろ)に興味を持ってもらえる人が増えたら幸いに思う。一見すると変態的に思える観察が、尊い命を救うことだってあるのだから。
<完>