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2017年3月1日、ミュージシャンのムッシュかまやつさんががんで亡くなっていたことが判明した。実は、私(中澤)は、かまやつさんに会ったことがある。あれは2年ほど前の夏、自分のバンドのライブの合間に下北沢を歩いていると、ライブハウス下北沢ガーデンからかまやつさんがフラっと出てきたのだ。

その時も「よぼよぼやな!」と思ったが……そうか、ついに逝ってしまったか。最後までライブをし続けたその姿勢やオリジナリティーあふれる音楽性など、かまやつさんはミュージシャンにこそ尊敬されるミュージシャンだった。そこで、ムッシュかまやつの名曲を5曲、独断と偏見で選んでみたぞ。

・1曲目『バン・バン・バン』ザ・スパイダース

かまやつさんのキャリアを決定づけたバンド「ザ・スパイダース」。60年代にグループサウンズをけん引した数々のヒット曲の中でもスパイダースと言えば『バン・バン・バン』は外せない。

私が昔アシスタントをしていたプロギタリストが、かまやつさんの誕生日イベントに参加した際、酔っぱらったかまやつさんは『バン・バン・バン』を3回連続で演奏したという。ヒット曲の中には、作った本人が気に入っていないのに売れたという曲もあったりするが、この曲はかまやつさん自身にとってもお気に入りだったのかもしれない。

・2曲目『我が良き友よ』

かまやつさんのキャリアで最高峰のヒットとなったのが、吉田拓郎から提供された『我が良き友よ』。下駄、学生寮などのバンカラな世界観がブリティッシュなかまやつさんのイメージとかけ離れているため、当時、本人はあまりこの曲を好きではなかったという。

確かに、曲も歌詞もコードも、吉田拓郎感がスゴイのだが、その男くさくて少しホロリとくる世界観は名曲であることは間違いない。

・3曲目『ゴロワーズを吸ったことがあるかい』

前述の『我が良き友よ』をリリースするにあたり、自分の世界観を少しでも出すために作ったのがこの曲『ゴロワーズを吸ったことがあるかい』だという。変態的でお洒落なコード進行に乗る、半分語りのような歌詞はまさに「ムッシュ」! きっとあなたの中の痺れるようなナニかの扉をノックするだろう

ちなみにバックの演奏は、アメリカのファンクの大御所バンド「タワー・オブ・パワー」。演奏も激シブで、かまやつさん好きを公言するミュージシャンは、全員この曲が好きと言っても過言ではない。

・4曲目『どうにかなるさ』

カントリーな雰囲気で旅から旅の旅情を歌う『どうにかなるさ』。ヘロヘロする歌やゆるい雰囲気が、至極かまやつさんっぽい名曲。だが、個人的にこの曲が好きな理由は、2番の歌裏のバッキング

歌とは別にギターのコードが歌いだすようなコードワークは、ジャジーかつ変態的で、とてもかまやつさんっぽい。この曲を聞く時は、ぜひ1番と2番のギターを聞き比べてもらいたい。

・5曲目『やつらの足音のバラード』

原始人たちのギャグアニメ「はじめ人間ギャートルズ」のエンディングテーマ『やつらの足音のバラード』もかまやつさんが作曲。哀愁漂うメロディーが逸品である。

また、「はじめ人間ギャートルズ」の原作者・園山俊二さんの悠久の時を感じさせる詞もメロとマッチしていて素晴らしい。アニソンとは思えない哲学的な1番の歌詞は以下の通り。

「なんにもない なんにもない まったくなんにもない
生まれた生まれた なにが生まれた
星がひとつ 暗い宇宙に 生まれた
星には夜があり そして朝が訪れた
なんにもない大地に ただ風が吹いていた」

──以上である。長いキャリアの中で、色んなアプローチを取り入れていた人のため、人それぞれの5曲があると思うが私はこの5曲を推したい。日本の音楽を切り開き続けたその歩みは、死しても永遠にミュージシャンの心に輝き続けることだろう。まさにミュージシャンオブミュージシャンだったかまやつさんのご冥福をお祈りします。

参考リンク:NHK
執筆:中澤星児
イラスト:マミヤ狂四郎

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